第20話 これからの予定
ジャックの日記を見て、ジャックという男についてある程度分かった。
この男、表と裏の顔がはっきりしている。
表の顔はかなりの好青年なのだろう。だから、使用人たちに慕われている。
しかし、裏の顔は性格が良いとは言えない。
それでも日記という形で自分の闇を隠し続けただけマシか。
それに俺としても、日記で彼自身の情報を残してくれたのはありがたい。
この情報があれば、ある程度、ジャックとして振舞いやすくなる。
改めて日記を見返し、ルナとの関係についても確認する。
風の渓谷へ行ったときは特別な関係にあるような感じもあったが、恋人のような関係ではなさそう。
ジャックの都合の良い女になりそうな雰囲気はあったが、スキル発現がジャックの予定を狂わせてしまったようだ。
となると、ルナがあそこまでしてくれた理由は、ジャックに対する恋心か?
ルナも年頃の女の子だし、それが一番納得できる理由かな。知らんけど。
ただ、気になる部分はある。
母親は、ルナがジャックのために闇魔法を習得していたと言っていたが、この日記を読んだ感じ、もっと前から習得していた気がする。
ジャックに人形を渡し、サプライズを用意している時には、すでに闇魔法が使えていたと思う。
ルナの言うサプライズは、あの喋る人形のことだったんじゃないかな。
ただ、そこでジャックの裏の顔を知ってしまい、躊躇してしまった。
それで次の日の「ごめんなさい」に繋がる。
俺の予想でしかないが、もしもこの予想通りなら、ルナは裏の顔を知っていながらも、ジャックへ恋心を抱いていることになる。
……普通、こんな奴を好きになるか?
ただ、前世でも優男よりDQNの方が好きだという女性が多かったし、この世界でもDQNの方が好きになってもらいやすいのかも。
いや、でも、暴力を振るっているわけでもないだろうし、DQNというより、ホストと客の関係の方がしっくりくる。
いずれにせよ、悪い男がモテるのであれば、ありがたい話ではある。
俺はそれと真逆の存在であるから、ルナがこれ以上俺に夢中になることはない。
つまり、『主人公の脳みそを破壊する』フラグは立ちようがないのだ!
それがわかっただけでも良しとしよう。
俺は日記を戻して、ベッドに入った。
枕のところに、ルナの人形が置いてあった。
渓谷にいたときにいろいろと助けになった木製の人形。
あまり意識してなかったけど、ルナがその気になれば、常に俺を監視することができるのか。
……まぁ、上級風魔法を使えるようになった今なら、いくつか対策方法があるので、そこまで不気味に思うことはないだろう。
今日だけは、俺の寝顔を見せてあげようか。
「お休み、ルナ」
人形に語り掛けると、微かに頷いた気がした。
☆☆☆
「ジャック様、起きてください!」
ルナに体をゆすられて、目が覚める。
今日は普通に起こしてくれた。
「朝食はできていますので、一緒に行きましょう」
「ん。ありがとう」
着替えてから、ともに移動する。
今日も多くの使用人から挨拶された。
慕われているからくりがわかったので、違和感なくその挨拶を受け入れることができる。
普段通りの自分でいれば、彼ら彼女らが違和感を抱くことも無いだろう。
「ジャック様。本日は朝食後、どうしますか?」
「そうだなぁ……」
何をしよう? 死亡フラグの観点から考えてみるか。でも、お腹がすいてうまく頭が回らない。朝食後のことは、朝食中に考えることにするか。
なぁに、焦る必要はない。時間ならまだあるし、何個かフラグは折れている。
だから、焦らずに、着実にフラグを折っていけば、下水道エンドは回避できるだろう。
―――――――――――――――
ここまでお読みいただきありがとうございます!
これにて第一章完結です。
続きについては、ストックが溜まり次第、投稿したいと思います。
それまで、キリが良いのでこちらの作品は完結の状態にしておきます。
鬱ゲーの嫌われているボスキャラに悪役転生した俺、死亡フラグを折り続けていたら、世界を救う側になっていた 三口三大 @mi_gu_chi
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