原初の始まり

 気が付くと、俺は遥か高い空の上から世界を見下ろしていた。


 時間の流れが数百万倍に加速されているのか、朝と夜とが一瞬の内に入れ替わる中、突如として変化が訪れる。空の果てからやって来たもの。隕石となって飛来したそれは、巨大な蛸のような見た目をした怪物。クトゥルフだ。クトゥルフはたちまち地上を支配し、下部たちに幾つもの岩造りの建物を建てさせて、その中央に君臨していた。


 しかしあるとき、旧き神との戦いに敗れたクトゥルフは、渦を巻く歪な建物に深くに閉じ込められ、より強固な封印を施す為に、海という膨大な水の蓋をされて、地上へ上がって来れなう厳重に幽閉されてしまう。


 が、クトゥルフはいつか自らを解き放つべく、幽閉される瞬間にいくつもの子供を産み出した。それはクトゥルフと同様に蛸のような姿をしたもの。円錐状の爬虫類のようなもの。まるで大陸のような巨大な鮫。玉虫色に輝く霧。数えるとキリが無いほどに。


 それはほんの一瞬の、夢のような出来事。きっと目が覚めたなら、記憶の片隅にも残ってはいないだろう。けれどこの瞬間、このとき、俺は確かに理解した。世界にはまだ、これだけたくさんの恐ろしい怪物が潜んでいるのだということを。いつの日か目覚めんとする、クトゥルフ復活を夢見て――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る