家を建てる
第43話
宴会が終わり僕と香織、柚子は冒険者ギルドの一室を借り、家の構造を練っていた。報酬ももらい金貨千枚ほどになっていた。これだけあればある程度は自由に建てることができるだろう。
「ここに温泉を作るのはどう?」
「温泉かぁ……。いいなぁ……。実は温泉がある家に住みたかったんだよ」
香織の提案に僕は嬉しさを抑えきれない。
「柚子もね。温泉に入りたい!」
「私もよ!優どう?」
「決まりだな。ここに建てよう」
実は湧水と少し離れた場所に温泉が湧いている場所もあったので、香織が温泉を建てたいっと言っていた場所ならば、天然温泉を楽しむことができる。
「ダイニングとキッチン、リビングは一緒がいいよね?」
「それはもちろん!」
香織は僕の提案に即答だった。料理をしている最中でも話すことができるので、絶対に一緒が良かったのだろう。家の構造の話は盛り上がり、着々と決まっていく。なかなかに広い敷地になりそうだ。
「決まったな!大工さんたちに報告しに行こう」
香織と柚子はワクワクしながら返事をしてくれた。希望通りの家が建つのだ。楽しそうに決まっている。
「ギルドマスターさん、アイゼさん!貸していただきありがとうございました」
香織が頭を下げたので、僕と柚子も頭を下げる。
「いいのじゃぞ。楽しみじゃのう!」
「はい!」
ギルドマスターの言葉に元気よく答える香織。僕たちの中で一番楽しみにしているのは香織なのかもしれない。
「よっ。優、香織、柚子」
「おはようございます。海斗さん」
僕たちは海斗さんに挨拶を返す。今日は久々の休みらしく、聖獣と契約した四人ともギルドにいた。全員に挨拶をする。
「すいません……。お願いしたいことがあるのですが……」
「僕たちに?」
「そうだよ」
反応してくれたのは光希だった。
「なになに?大変なこと?」
「そうなんだ……。人手が足りなくて……」
「いいよ。手伝うよ」
四人とも協力してくれそうだったので仕事内容を説明した。
「昼頃、ここに集合でお願いします」
「は~い」
四人と約束をした後大工たちの詰め所まで馬車で行く。アウル伯爵様の指示で僕たちの依頼を優先することになっていたので、すぐに動いてくれることになった。普通の馬ではなくアルタイルとベガの協力を得ることで実現した空を飛ぶ馬車。それに大工さんたちを乗せて家の建てる場所まで送ってもらった。
「あぁぁぁっ!ごめん……。僕たちの移動用のアルタイルとベガを使ってしまった」
「優?気づいていなかったの?」
「うん……」
「にいに。何やってるの」
柚子に軽くたたかれる僕。怒っているときの香織に似ているかもしれない。
「不覚でした……」
「我に乗っていけばいいだろ!」
右肩にいたウグルが僕に声をかけてくる。
「飛べないでしょ?」
「飛ばなくても我は馬の何十倍の早いぞ」
自信満々なウグル。
「ウグルさんに乗ってみたい!にいに。いいでしょ?」
「分かったよ」
「柚子よ。ありがとう」
嬉しそうに尻尾を振るウグル。犬にしか見えない。地上で移動することになった僕たちはウグルに乗って家の建てる場所に向かう。時速六十キロ以上出ているのだろう。景色の動きも早く風が心地よい。たまには陸上移動もいいかもしれない。ウグルが召喚した狼たちによって周りの魔物は倒されており、戦闘になることなく目的の場所についた。
「遅いですね。優さん」
先に到着していた隼人さんにあきれ顔で言われてしまった。
「ごめんなさい。お待たせしました」
「では優さん。よろしくお願いします」
大工さんたちに言われて、七人で木を切り倒し、整地の作業が行われる。切り倒す方法は簡単で風のブレードを作って、広範囲を一気に切っている。そして炎で木の根を燃やし、土魔法で整えている。
「ところで優さん。なんでこんな作業をやっているのですか?」
「それはですね。お金の節約です。人件費がかかってしまいますので……」
「私たちはただで手伝っているのに……」
不満そうな顔をする茜さん。
「あの約束は守りますから、お願いします」
「そうですか。絶対に守ってくださいね」
「分かっています」
約束のことを表に出して、茜さんの機嫌を直す。作業は進み、ウルガさんの屋敷の敷地と同じ広さまで広げることができた。
「優?ちょっと広すぎないか?」
海斗さんは頭を傾ける。
「これで十分ですよ」
僕は納得した顔で整地した場所を見る。
「終わりました。あとはよろしくお願いします」
「任せてください」
整地が終わったらあとは大工さんたちの仕事だ。家が完成するまで一か月はかかると言われているので、仕事をしながら待つことになる。
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