怪物討伐作戦後編

第39話

「こっちから行くよ!」


 僕と柚子はマークスマンライフルで射撃する。僕と柚子は左手と右手を同時に破壊する。


「無駄だよ。無駄無駄!」


 たちまちヒュドラの腕は再生する。尋常ではない再生力は神話通りみたいだ。


「優。あの再生力は何?」


 香織は少しだけ引いているように見える。


「あれはヒュドラのもう一つの能力。おそらく顔を破壊したら再生できなくなるはずだよ」

「俺のもう一つの能力も知っているわけね~。めんどくせぇ奴ら目!」


 不機嫌そうなヒュドラ。


「だが、近づかせなければ問題はない!」


 ヒュドラは弓を上空に撃った。降りそそぐ毒の矢。全て弾き返すのは不可能だ。僕は風の障壁を張り、毒の矢をできるだけ遠くに弾く。


「ダメか……」


 全てを弾き返すことはもちろんできない。近くに刺さった矢からは毒気が溢れ出している。


「にいに。どうするの?」


 柚子は僕を見つめる。


「くっ……。打つ手がない」


 障壁を解除した瞬間に毒気を吸い込んでしまう可能性が高い。布をしているとはいえ、完全に防ぐことは難しいはずだ。


「主人!任せてくれ!」


 アルタイルはそう言うと浄化サークルを作り出す。範囲は大きいとはいえないが、遠距離武器を持っている僕と柚子には攻撃はできる。


「ありがとう」


 僕は障壁を解除する。浄化サークルの中には毒気は一切入ってこず、安全地帯と言ってもいい。


「お前。聖獣と契約してるのか?面倒くさいなぁ〜」


 怒りを表に出すヒュドラ。


「でもでも、それだと俺を倒せないよね!ははは。ははは」


 神話では首を直接焼いて再生を防いでいた。どうしても近づく必要があるのだ。


「柚子、香織!炎魔法を使う。ウグルも頼んでいいか?」

「うん」

「はいです」

「当たり前だ!我に任せておけ!」


 ウグルは炎のブレスを僕と柚子はヒュドラの足元に弾を着弾させて、炎の渦を作り出す。香織は手から炎を発生させて、発射させた。ヒュドラはたちまち炎に飲み込まれる。


「優。倒したの?」

「にいに。倒せた?」

「いや……」

「お前たちバカなの?弱点属性の対策をしていないわけないよね〜」


 水を全身に行き渡らせ、守っているヒュドラ。


「使えるよね〜。こいつの能力はさぁ〜!ははは。ははは」


 ヒュドラが指しているのは媒体にした異世界人のことだろう。


「ヒュドラ!人間をゴミ扱いするのはよせ!」


 怒りをあらわにするウグル。ヤマタノオロチといい、そしてヒュドラも人間をゴミ扱いしている。許せない。


「何言ってるの?フェンリル。お前も昔はそう思っていたではないか」

「言うな!優にあって変わったのだ!」

「笑わせるね〜。お前の主人を殺してこっちに引き戻してあげようか」


 ヒュドラは毒ブレスを手から発射させ、僕たちの動ける範囲を狭めて行く。怒れるが頭の切れるやつだ。自分が有利なように戦いを進めている。


「くっ……」

「にいに。まずいの……」

「優!追い込まれてるよ」

「分かっている……」


 遠距離攻撃は対策をされているので無理だ。やはり直接焼くしかないみたいだ。直接攻撃できるのはウグルと香織のみ。どうやってチャンスをつくればいいのだろうか……。


「優。アルタイルさんとベガさんに乗って戦ったらいいと思わない?」

「ねえねの、言う通りだよ。この丸は乗りながらでも使えるよ。ねっ?ベガさん」

「もちろんですとも主人様!」

「主人!もちろん使えるぞ」

「ありがとう。その作戦で行こう」


 香織と柚子の助言もあって、やっと作戦がまとまった。本当に感謝している。僕と香織はアルタイルに騎乗し、柚子はベガに騎乗する。柚子の補佐役として、ウグルを柚子の肩の上に乗せている。


「空から来るんだ。面白いね〜。でも簡単には近付けされないよ〜」


 僕と柚子は空中からマークスマンライフルを打ち、こっちに飛んでくる矢を破壊する。隙があれば、ヒュドラの胴体に打ち込んでいる。隙を作らねば、香織とウグルを突撃させることはできない。


「我の引力で矢を全て引きつけようか?」

「それはいい案かもしれないな」

「任せるがいいぞ!」


 ウグルは引力を作り出し、矢を全て引き付ける。その間に僕と柚子がヒュドラを攻撃して、顔を破壊する。


「今だ!香織、ウグル!」

「任せて!」

「任せろ!」


 香織とウグルはアルタイルとベガから飛び降りる。ヒュドラの周りには毒は蔓延していないようで、飛び降りても毒気を吸い込む心配はないと思った。


「ヒュドラでも自分の毒は避けるんだな。あれ……。避ける?効かないんではなかったか?」


 僕は必死に神話の話を思い出す。


「あっ!まずい!香織、ウグル!避けて!」

「バカだね〜。俺には毒は効かないよ!自由落下中は完全に俺の矢を避けることはできないでしょ!」


 気付くのが遅かった。あえて自分の周りを毒気でいっぱいにしていなかったのはヒュドラの脅威の近接攻撃できるものを先に殺すこと。


「どちらから殺そうかな〜。きーめた!女から殺そ!フェンリルはタフだからね〜」


 ヒュドラは弓を香織向けて構える。そして矢が放たれた。


「香織ぃぃぃぃ!」

「きゃぁぁぁ!」


 直撃はしていないが矢が腕にかすってしまった香織。直撃しなくても毒は身体中を回る。香りは苦しそうにしている。

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