第31話

 多くの冒険者が観戦している中で僕と柚子は決闘会場で男たちと対峙する。名前はわからないが中心には両手剣を持ったリーダーがモヒカンの男。そして隣左には杖を持った魔法使いの男、最後に右隣には槍使いの男がいた。偉そうな態度だったが、Cランクまでなったパーティーだ。油断はしてはいけない。

 モヒカンの男と槍を持った男が突撃してくる。裏では魔法使いの男が呪文を唱えているのが見える。


「いい戦術だ!だがこの武器は遠距離攻撃が可能なんだよ!」


 柚子が障壁を貼ってくれているので、僕は光栄の魔法使いを無力化するために動くことにする。僕はハンドガンを取り出して、柚子が障壁を解いた一瞬の間に杖を弾き飛ばす。弾き飛ばされた杖には穴が空き、使い物にならなくなってしまった。魔法使いの男は何が起きたかわからない様子で立っている。柚子の障壁に両手剣と槍がぶつかる。


「何!」

「何だよ?あの障壁は」


 風の障壁に弾かれて後ろに飛ぶモヒカンの男と槍使いの男。柚子の障壁を見て、驚いている様子。風の障壁は珍しいものなのか……。


「魔法をぶつけるんだ!早く!」


 モヒカンの男が指示を出すが、魔法使いの男は杖なしでは魔法が使えない様子だ。槍を持った男は魔法使いの男の方を見て、杖がないことに気がついた。


「杖はどうした?」

「一瞬で壊された……」

「どういうことだよ!あれはちょうどやそっとのことでは壊すことのできない硬い素材でできているんだぞ!そんな訳……」


 そう言いつつ、杖を見る槍使いの男。ポカンと口を開けてしまった。


「何をやっている!お前ら!」

「リーダー。相手が悪すぎる……」


 魔法使いの男の言葉で、杖が破壊されていることにやっと気がついたモヒカンの男は驚いている。


「お前が持っているその武器は何だよ!」

「これですか?これは神話級の武器の銃ですよ」

「神話級⁉︎もしかして異世界人?」

「そうですよ!この子もですけどね!」 

「そんなの……。勝てる訳……」


 柚子も僕と同じ銃を見せる。異世界人という言葉と神話級という言葉にお心が折れてしまった男たち。圧倒的な勝利で幕を閉じた。


「神話級って言うのと異世界人だと言うことをバラしただけであんな状態になってしまうんですか?」

「知らないのですか?異世界人とは神に選ばれた存在、そしてその証拠として神話級の武器の所持者。突然の結果ですよ」


 アイゼさんは分かっていたような口で僕に言う。そう言えば、ベガにあった時にもそんなことを言っていたような……。


「もしかして、やっちゃいましたか?」

「ドンマイじゃ。多くの冒険者がこれから勧誘にくるだろう。はっはは」


 僕をからかうように大笑いするギルドマスター。これから大変そうになりそうだ……。


「にいに。ご褒美は何?」

「そうだな。何がいい?」

「美味しいご飯が食べたい」

「分かったよ」


 そうは言ったもののこの世界で美味しい飲食店はどこにあるのか分からない。


「ギルドマスターぁ〜。おすすめのお店とかありますか?」

「あるぞ。名前は確か……。何じゃっけ?」

「僕に言われても分からないですよ」

「ちょっと待っておれ……。今ここまで来ておるのじゃ……」

「分かりました……。待ちますね……」


 それから数分経ったが、お店の名前が出てくることはなかった。


「アイゼさん。助けて下さい」


 手続きがあると言って一旦外に出て行ったアイゼさんが戻って来たので、懇願する。


「何のお話をしてましたか?」


 ギルドマスターを見てすぐに状況を察してくれたのか、質問してくれた。


「ここら辺で一番美味しい飲食店ってありますか?」

「ありますよ」


 ルミナスの地図を取り出して、お店の場所をマークして地図をくれた。


「ありがとうございます。助かります」


 僕は柚子を連れて、他の冒険者から勧誘される前に足早に馬車乗り場へと走った。

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