第12話

「柚子ちゃん、寝てしまったわね。なんて可愛いのかしら。うふふ」

「柚子の貴重な睡眠の邪魔はしないでください」


 今にも柚子を襲いそうな勢いのルルに僕はハンドガンを構えて撃つ。銃口から出た弾は拘束弾だ。風魔法を混ぜつつ、光属性の天使リングを合体させた銃弾だ。むやみに解こうとすると体が切れてしまう仕掛けが施されており、光の天使リンクは超頑丈なのである。


「優さん!なんてことをするの!」

「今にでも襲い掛かりそうだったので、動きを封じました」

「ルル……自業自得だな」

「ウルガまで何よ!」

「うんうん。自業自得ですよ」

「もう!ギルまで!」


 ルルは解けないと悟ったのか、そのまま大人しくなった。


「すまない。優くん」

「いえいえ、大丈夫です」


 ウルガさんの呼び方が【さん】から【くん】になっているということは、仲良くなれたのだろうか。異世界で初めてできた友達だったので、嬉しく思っている。


「すっかりと話し込んでしまったが、本題に入ってもいいか?」

「どうぞ」

「まずはこの魔物の森に来た理由を話しておこう」


 先ほどとは違い、真剣な表情になったウルガさん。僕も気を引き締めて聴くことにする。


「ここ最近、魔物の森ではÅランク級の魔物が本来の生息地ではないところに現れて、低ランク冒険者を襲うという事件が多発している」

「なるほど、なるほど」

「そこでギルドからÅランク冒険者パーティーの私たちに魔物の森調査の依頼が来たのだ」

「ふむふむ」

「原因はすでに判明していて、魔物の森の最北端にある遺跡に何らかの異常が起きているみたいなのだ」

「へぇ~。最北端に遺跡があるんですね」

「知らなかったのか?」

「はい。転生した場所が魔物の森だったので、人に会ったのもウルガさんたちが初めてです」

「そうなのか。どうやって今まで生きてきたのだ?」

「魔物を狩猟して、食事を確保していました。寝るところも外ですよ」

「私の見込んだ通り、優くんたちはすごいなぁ」

「ありがとうございます」


 僕と柚子の異世界に来てからの生活ぶりに三人とも驚きを隠せていない。


「私の見込んだ聖獣と契約している優くんたちにお願いしたいことがあるのだ」

「何ですか?」

「私たちと一緒に遺跡調査に同行してもらえないだろうか?正直なところ三人では遺跡調査どころかたどり着くことができないと思っているのだ」

「それはまたどうしてですか?」

「最北端に行くにつれて魔物の強さはうなぎのぼりに上がっていく。巣に近かったとはいえ、ジャイアントキラービーにあそこまでも苦戦を強いられている状況ではこれ以上先に進めない。だから、お願いだ。私たちに力を貸してほしい」


 深々と頭を下げるウルガさんとギルさん。今は動くことはできないルルさんの懇願しているような視線。ジャイアントキラービーは巨大バチの事を言っていると思う。


「喜んで、協力しますよ」

「ありがとう、本当にありがとう」


 僕はウルガさんたちのお願いを聞き入れることにする。柚子もパーティーを組みたいと言っていたし、ここで会ったのも何かの縁だ。「人とのつながりは大切にするように」と言っていた会うことのできないお父さんの言葉を思い出す。さらには人の住む街に案内してもらえそうだ。

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