第11話
場所を近くにあった魔物の巣穴に移して、食事をとりながら落ち着いて話し合いの場を設けることになった僕たちは焚火を囲むように座る。アルタイル、ベガそしてウグルは僕たちと少しだけ離れた場所でくつろいでいる。
「改めまして、こんばんは。このパーティーのリーダーをやっています。ウルガと申します」
「同じパーティーメンバーのギルです」
「さっきはごめんね。私はルルで~す」
三人の自己紹介が終わり、次はこちらの番だ。
「僕は一ノ瀬優です」
「柚子は猫塚柚子だよ。五歳です」
一人称が私とかではなく、柚子なところは本当にかわいらしい。ルルさんも自重しているが今にでも抱き着きたそうな顔をしている。
「さっきほど向こうの世界と言っていましたが、優さんと柚子さんは異世界人なのですか?」
「実はそうなんですよ。信じられないと思いますが……」
「ここ最近、異世界人の召喚が定期的に行われているので、信じますよ」
「それはありがたいですね」
沈黙を破って、僕に話題を振ってくれたのはウルガさんだった。僕はその気遣いがとてもありがたく、しっかりと対応する。
「異世界人ということは特殊な能力を使えたりしますか?」
「そうですね。神話級の武器を持っています」
「神話級⁉是非見せてほしい!」
冷静なウルガさんはどこに行ってしまったのと思えるくらいの興奮ぶり、僕は少しだけびっくりしてしまう。ギルさんとルルさんも(噓でしょ?)みたいな顔をしているので、普通に過ごしていたらお目にかかることすらできないものなんだと思った。
「これなんですが」
僕はハンドガンを見せる。大きいとかさばってしまうので普段はハンドガンの形にして腰に装備しているのだ。
「柚子も持ってるよ」
僕に便乗して柚子もウルガさんたちに見せる。
「なんて奇妙な形をしているのだ!欲しい!これは欲しい!」
好奇心旺盛な子供のような表情でハンドガンを見るウルガさん。ギャップがすさまじすぎて笑顔になってしまう。
「優さん、ごめんなさいね。真新しいものを見るとこうなるんです」
さっきとは立場が逆で今度はルルさんがあきれた表情になった。ギルさんも頷きながら僕を見る。(裏表がはっきりしているパーティーだな)と思いながら三人を見る。そうなるとギルさんはどんなものが好きなのだろうと考えてしまうのは僕だけだろうか……。
「ウルガさん。大変いいにくいのですが、神話級の武器は武器に認められていない使用者以外が使うと暴発してしまうみたいなんです」
「なんと!それは残念だな……」
分かりやすく落ち込むウルガさん。僕はどうしようもできなかった。
「ウルガさん、そんなに気を落とすことないですよ。真新しいものはすぐに見つかります」
ウルガさんの肩をたたきながら慰めるギルさん。親子みたいに見えてしまう。
「そうだな!すぐに見つかるはずだ!」
「切り替え早!」
ギルさんに慰められて数秒で立ち直るウルガさん。心の声が漏れだしてしまった。
「優さん、優さん。他にもできることはあるのか?」
期待のこもった視線。僕は創作魔法が使えることを披露するべきか悩んでしまう。
「他にはですね」
「うん!うん!」
「こんなこともできますよ!」
僕は創作魔法を使って、ライターを出現させた。
「なんだ⁈それは⁈」
再び目をキラキラさせるウルガさん。僕はこの状況をすっかりと楽しんでしまっているようだ。
「用途を説明するので、火を消してもらえますか?」
「分かった!ルル頼んだ!」
「はいはい」
あきれ顔半分。興味のある顔が半分。両方入り混じっているルルさんは水を手から出現させ、火を消した。
「ありがとうございます。では見せますね」
僕はライターを焚火に近づけて、火をつけた。この世界では魔力を込めるだけでこう言ったアイテムを使うことができるのですごく便利だ。
「おぉお!これはまた便利な魔道具だな!私にくれないか!」
懇願されたので僕はウルガさんにライターをあげることにした。創作魔法で創作はできても消すことはできないので、今までは使ってこなかったのだ。ウルガさんの幸せな表情に僕も穏やかな気持ちになる。そんな話をしながら辺りはすっかり夜になっていた。柚子は活動限界が来たみたいで、僕の膝を枕にして「スヤスヤ」と眠ってしまっている。
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