第一章 人の住んでいる街を目指して

双子の聖獣

第4話

~現在~

 自然の香りが僕の鼻を刺激する。


「いい空気だな」


 僕は伸びをした後に立ち上がろうとしたのだが、足に重さを感じる。下を向くと膝の上に頭をのせて柚子が「スヤスヤ」と眠っていた。


「そういえば昨日、柚子が膝を枕にしてたっけ」


 僕は頭を掻きながら苦笑いを浮かべる。


「まぁ、起きるまで待つとするか……」


 数分は経っただろうか。


「ん~ん~」


 柚子は気持ちのよさそうな声で呟きながら、ゆっくりと目を開ける。


「おはよう」

「おはようございましゅぅ。にいに」


 眠すぎるのか、はっきりと発声できていない。(可愛い、可愛すぎる)僕は緩みそうな表情を抑えながら笑顔を向ける。


「さぁ!朝ご飯を取りに行くか」

「はいです!」


 僕と柚子はすぐに狩猟に向かった。鳥の鳴き声。鳥と言っても魔獣なのだが……。


「よ~し!今日の獲物はあいつだ!やってみるか?」

「はいです!」


 元気の良い返事。柚子は草むらに身をひそめた。僕も同じ行動をとる。鳥は大きな木の幹の上で休んでいるようだ。柚子は狩猟用ライフルを構えて、鳥をじっくりと狙う。柚子の銃口は鳥のヘッドラインをとらえているみたいだ。柚子は引き金を引く。鳥は一撃で息を引き取った。


「やったー!」

「ナイス!」


 僕は柚子を持ち上げる。


「えへへへへ」


 柚子は満面の笑みで僕を見る。僕は柚子を下した後、鳥を背負う。しばらく歩くとウサギを見つける。


「こいつは僕がやるよ」


 僕は音をたてないように地面に下ろし、狩猟用ライフルを構える。僕も一撃でウサギを仕留める。


「にいに。すごい!」

「おう!」


 僕は返事をした後、ウサギも背負う。


「今日の朝はこれくらいでいいかな」

「ご飯!ご飯!」

「はいはい。すぐに作ろう」


 僕は柚子の頭をなでた。僕はすぐに火を起こして、料理をする。早く住む場所を見つけて、手の込んだ料理を作りたいものだ。


「水がなくなってきたな。汲みに行くか」

「水!水!」


 元気な柚子の声。僕はほっこりとしながら水を汲むために進むが、こっちの方向に水源があるかどうかは感だ。川の流れる音が聞こえてきた。この方向に進んだのは間違っていなかったようだ。


「川の下流に行ってみるか。大きい湖とかにつながっているかもしれない」

「うん!」


 柚子は僕の手を引っ張りながら、走り出した。僕の柚子に流されるままに走る。湖の畔、目の前には大きな湖が広がっていた。湖の真ん中には小さな小島が浮かんでいた。真ん中には大きな大樹が生えており、存在感を放っている。そこで水を汲み、携帯しているナイフ入れの付いた小型バックの中に入れる。腹を壊さない為に本当は火を通して、ろ過をしてから飲みたいのだが、アイテムを作り出すと持ち運びができなくなるので祈るしかない。


「ねぇねぇ、にいに。木の下に動物がいるよ」

「本当に?」

「うん」


 柚子は大きな木の真ん中を指さす。僕らは柚子の指さす方向を凝視してみると本当に動物が倒れていた。


「あれはやばいな。すぐに助けに行こう」

「助けに行く〜」


 僕と柚子は足早に近づく。大きな木の根元には人の肩に乗るくらいの大きさで馬のような容姿に羽が二つ生えている動物が二匹、倒れていた。体は白く太陽に反射して眩しいほどだ。


「この動物は、もしかしてペガサスなのか?」

「ペガサスって何?」

「神様から使わされた動物で、この子たちのことを指しているんだよ」

「そうなの?すごい!すごい!」


 興奮気味の柚子。僕は苦笑いしてしまう。


「それよりも、早く助けないとな」

「そうだったね。えへへ」


 柚子は頭を触りながら言う。僕は狩猟用ライフルをハンドガンに変形させる。この世界に来てから分かった能力なのだが、僕は全属性の魔法が使えるらしい。そしてこの銃は自分が思った通りの形に変形できるみたいなのだ。さらにはこの銃が媒体になるらしく、直接魔法を打ち出すよりもコスパがいいのだ。そして変形した銃にも弾数制限はあるらしく、リロードの代わりに魔力をチャージしないといけないみたいだ。他にも僕にはもう一つの能力がある。それは手に収まるくらいのものなら創造魔法で作り出すことが可能だ。しかし一度作り直してしまうと消すことができない。柚子も同様で全属性魔法が使える。そして複製魔法も使えるらしいので銃を渡して複製したのだ。


「すぐに助けるぞ」

「はいです」


 僕と柚子は銃口をペガサスに向けて銃弾を同時に発射する。銃口から出た銃弾は光を纏いペガサスに当たった。僕と柚子が使った銃弾は回復弾。銃を媒体にして光属性の回復魔法を流しこんで撃ったのだ。二匹のペガサスの傷はたちまち治っていく。傷が完全に治癒した後、苦しそうにしていた様子の二匹が大人しくなった。


「もう大丈夫そうだね」

「大丈夫そう」


 僕と柚子が安堵の表情を浮かべているとペガサスがゆっくりと目を開けた。


「ねぇねぇ、にいに。起きたよ」

「本当だ」

「ペガサスさん。大丈夫?」

「本当によかった」


 ペガサスはゆっくりと体を起こす。そのままペガサスは僕と柚子に手を差し出す。


「手を伸ばせばいいの?」

「たぶんそうだと思う」

「信じていいの?」

「信じるしかない!」


 僕と柚子は恐る恐る手を差し出す。聖獣なので命を奪われることはないと思うが、いざという時のために準備だけはしっかりとしておかないといけない。僕と柚子、ペガサスたちはゆっくりと手を近づける。手と手が接触した瞬間にフラッシュ爆弾のような眩しい光が発生し、僕と柚子を包み込む。

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