第3話 堕天


「出来損ないの弟に万が一でも権威が渡って見ろ…我々の立場が危うい…あぁ?大丈夫だ、そこは手を打ってある。条約も何も糞食らえだ。我々の支配下にあってこその下草どもだからな」


 張る必要が無いほど、元々のサイズ感がある胸を張りながら彼女は電話相手と話をしていた。顔立ちから伝わる才色兼備、部屋の内装から分かる富貴栄華な生活。


「失礼致します!」


 金細工で彩られた扉を激しくノックし、少し荒い息の混ざった声が響いた。

 変形するほど勢いよく扉が開き、中から険しい形相の彼女が切れた電話を片手に現れる。


「火急の要件なんだろうなぁ?私に電話を切らたんだ」


「えぇ…その大変申し訳にくいのですが」


「なんだ、ハッキリと素早く要点だけ言って消えろ」


「弟様が辺獄リンボより脱獄しました」


「そうか、わかった用済みだ失せろ」


「また…」


 さらに話を続けようとする兵士の冷や汗が額から顎に伝わりぽたりと大理石の廊下へ滴り落ちた。唾を飲み込む音と共に続け様に来るであろう悪いにユースで頭に血が昇りつつある彼女の眼光が青く光る。


「続けろ…ほら言ってみろ」


「また…宝物庫より遺物をっ!!!!」


 空気が帯電した刹那、彼女に頭を握りつぶされた兵士は即死。だが足や腕の筋肉がその電撃でビクビクと跳ねるように動く。

 廊下の奥で待機している他の兵士が姿勢を正し、彼女を凝視する。


「無能しかいないようで残念だ…雷神に腰を上げさせた事後悔するぞ」


 雷鳴と水色の電撃が空気を砕き、次の瞬間には大きな焦げ跡が残り彼女は姿を消した。雷光での移動となれば宝物庫まで1分とかからないだろう。


「今日の警備管理担当誰だっけか」


 静けさが戻った廊下で死んだ兵士の足を持ち上げながら細身の兵士が口を開いた。

 もう一人の太めの兵士はひき肉状態の頭部を見ないように目を逸らしながら答える。


「あー角岡だっけ。たしか」


「あいつか、来週誕生日とか言ってたのに」


「やめろよ、悲しくなるだろ」


「わりぃ。あ…もうちょい右に傾けてくんね?脳みそ溢れてる」


 足を持ち上げている兵士は全く平気な様子で腕を掴んで死体を持ち上げている兵士に指示を出す。処理用のシートの上に運びおえて一息ついた所で思い出したように細身の兵士がポツリとつぶやいた。


「あ、でも角岡これで永遠の20代だな」


「お前さぁ…」


 太めの兵士は頭を抱えて大きなため息をついた。



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ピカソチックアイデアスワンプマンオーディナリーカオス ノイア異音(金紫イルカ) @Kinshi-Iruka

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