君がいない生活

朝はうるさい音で起きたよ。目覚ましなんて設定したのは久しぶりだったな。


朝食は作る気力がなかったから何も食べなかったよ。昔は卵を焼いてハムを添えて、ご飯と一緒に食べてたんだけど。今は君みたいに食パンを焼いてジャムを塗ることすらできなくなったみたい。


シャツはアイロンをかけてなかったからシワを付けたまま着たよ。君はいつも僕がシャツを着る前にシワを伸ばしてくれてたっけ。今更気づいたけど。


家を出る時に癖で「行ってきます」って言っちゃった。今は見送ってくれる君はいないのにね。


家に帰った時に部屋の電気がついてなかったから、君がいないんだって実感したよ。帰っても君がいない部屋はなんだか冷たく感じたよ。


シャツを脱いでそのままお風呂に入ろうとして、お湯が張られていないことに気づいたよ。そういえば君は僕が帰る前には必ずお風呂を沸かしてくれてたね。今思い出しても遅いけど。


晩御飯はコンビニで買ってきたよ。本当は君の手料理が食べたかったけど。普段は当たり前だと思ってたのに、今はどうしても君の料理が恋しい。なのに僕は「おいしいね」とか「いつもありがとう」とか言ってなかったな。君は嫌な顔せずに毎日ご飯を作ってくれてたのに。


布団に入って色々考えてみたよ。2人でいる時は窮屈に感じたこの布団も、僕1人だと少し広いみたいだ。君がいて当たり前だったから、君がいなくなるとどうしたらいいか分からなくなる。後悔しても遅いのだけど、心に空いた穴が埋まらない。


「ごめんね」「いつもありがとう」


君に届くはずもないのに、言わずにはいられなかった。君がまだ隣にいて、この言葉を伝えれたならどれほど良かったか。


涙を流しながら君との思い出を巡ったよ。君の前では流したことないのに。もし、君が今隣にいたなら、今の僕を見てなんで言ったのかな。もう確かめることはできないけどね。

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短編集 @tasumania

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