無様! ハイシャイ・ラボ壊滅!(5)
『いますぐ手動操作に切り替えて!』
野外無線機を通じて、永井の指示が入った。
『……倒れている間は攻撃されません! 自動のままだと立ち上がってしまいます! 急いで!』
これまで三週間、練習で飽きるほど使ってきたタッチパネルだ。
どこにどのコマンドがあるのか、どの順番で押せばたどり着けるかは、隅々まで体が覚えている。
そのはずなのに、
(…………!)
指の震えが止まらない。
永井が冗談で登録した機能だが、倒れているかぎり狙われないのならこの状況を切り抜けられるかもしれない。
ギギイィィ……
ゴワアァァ……
ズ……ズ、ズズッ……
【ゴダイヴァ】はみじめに地べたを
だが、あまりにも遅い。
祈る気持ちでコンソールパネルに目を向けた。
「………………!」
3Dで表示された、彼我の位置。
その意味するところは――――絶望。
這って逃げる【ゴダイヴァ】の後を、【ジェイソン子】がつかず離れずじりじりと追ってくるのだ。
ここはリングではない。
ロープエスケープは許さない。
まるで、そう宣告するように。
通信ランプが点灯し、横山の声が流れた。
『
いつになく緊張した声だった。
『いったん立ち上がって、【敵】を視界に入れた状態で、距離を保ちながら、海側へ後退してください。
合図があったら、バッテリーが切れるまで全力疾走してください』
『【敵】は関節が硬いし、体も重いはずです。走れば逃げ切れます。
質問がなければ、操作を始めてください』
「お父さまは? お父さまはどうなるの?!」
『……
ごめんなさい。司令部の決定なんです……』
コクピットを、沈黙が支配した。
――――後退する【ゴダイヴァ】、追跡する【ジェイソン子】。両者が造船所跡地から約五百メートルの距離に達したとき、合図があった。
ゲージはもうほとんど消えかかっている。
【ゴダイヴァ】が逃走に移った。
短距離走選手のように
一方、【ジェイソン子】は水の抵抗をパワーで押し切っているのか、思ったほど引き離せない。
とうとう残存電力が尽き、【ゴダイヴァ】はつんのめるように倒れた。
これまで戦いを見守っていた、十三門の四四口径一二〇ミリ
その
直後、けたたましい警告音を上書きするほどの轟音でさえ消すことのできない、魂を切り裂かれるような悲鳴が、
「――――お父さま!!!」
恥じらえ! 美闘機ゴダイヴァ! 桑昌実 @kwamasame
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