第3話

 またしても、最悪だと思う状況に出くわした。

 十二階は中鬼だけだったので、夜光ちゃんが倒すといって苦戦する事もなく、簡単に倒す事が出来たけど、十三階に来たとたん、中ぐらいの鈴が大きく鳴り、さらに大きな鈴が鳴った。

 鈴の反応はこれまで出くわした餓鬼、小鬼、中鬼とは違う。しかし、私に火の玉を飛ばしてきたモノとも違うけれど、状況は最悪だった。

 鬼の格が変わった。ここにはもう、中鬼までとは比べ物にならないぐらい強い鬼がいる。

 上鬼。それがこの階にいる鬼だけど、上鬼がたった二対いるだけでm

 中鬼は上鬼を恐れ、ここにはいなかった。

 「上等じゃねーか・・・やってやろうじゃねーの・・・・なぁ夜光、行くぞ!」

 ちなみに黒曜は相手が強ければ強いほど燃える太刀。

 だけど、黒曜もバカだけどこんな相手を一人でかかるようなバカではない。流石にここは二人で倒しに行ったけれど、ここでも私は出させてもらえなかった。

 「っく・・・・くそ!おい蘭華!あれを使わせろ!」

 二体いる鬼はそれぞれ一体ずつ相手をしているけれど、苦戦しているように思えた。

 「あ・・・あれって・・・・でも・・・」

「いいから使わせろ!俺たちはお前の許可をもらわねーと、あれを使う事できねーじゃねーかよ!」

まさか、こんなところで言われるなどと思っていなかった。

上鬼相手に苦戦しているのは見ていて分かるけれど、決して倒せない相手ではないはずなのに、黒曜はあれの使用を求めていた。

「蘭華・・・・・・」

 突然後ろから誰かに名前を呼ばれびっくりしながら、後ろを振り向いた。

 「し・・・・しろちゃん・・・・え?あ・・どうして、ここに?」

「話は後です。ここは俺が加戦いたしますが、黒曜の言う通りです。ここにいる上鬼二体を倒し終ってからでいいので、俺の話を聞いてから我々にあれの使用許可を考えてください」

そう言ってしろちゃんは戦う黒曜や夜光ちゃんのもとに加わった。

 しろちゃんが加わったことで、戦術が変わり、二人は攻撃だけに専念する事が出来、守りはしろちゃんに任せていた。

 それにしても、シロちゃんが来たのは以外だった。私はてっきり上で合流するのだと思っていた。

 そういえば、他の二人の姿が見えない。ここに来たのはしろちゃんだけみたいで、多分二人は上で待っているのだろうと思うけど、どうしてしろちゃんはあんな事を言ったのだろう。

 誰も滅多な事であれの使用許可を求めない。私が覚えている限り一・二度しかなかった。

理由は鬼を倒したら話しくれるみたいだけど、しろちゃんまであれの使用許可を求めてきたのだかからそれほどまでの状況に追い求められているという事だろう。

 特に危ないものでもないし、あれはもともと私の者ではなくあの子達のもの。あの子達が使用を求めるなら使用許可をしてもいいけど、最終的に判断を下すのはしろちゃんの話を聞いてからだと思った。

 「よっしゃー・・・終わったぜ蘭華!」

 ようやく終わったと言う顔をして、三人は戻ってきた。

 「ご苦労様・・・・皆、大丈夫?」

 三人は平気な顔をして大丈夫だと頷いてくれるけど、上鬼が二体とはいえ、かなり辛かったみたいで、小さくだけど息が上がっているのが分かった。

 「やっぱり、何かがおかしい・・・普通だったらいくら相手が上鬼とはいえ、二人とも簡単に倒せていたはずでしょ?でも、どうしてあんなに苦戦したの?」

 「んなもん俺様が分かるわけねーだろ?」

 「別に私はあんたになんか聞いていないわよ?」

 私はともかく、二人の実力なら簡単に上鬼を倒す事が出来たはずなのに、それが出来なかった。しろちゃんが加戦してくれた事でようやく二体の上鬼を倒す事が出来た。

 「それよりも、何でこいつがここにいんだ?こいつ上にいたんじゃねーのかよ」

 「そうそう、そのことなんだけど、しろちゃん私に何か話さないといけないことがあって、ここにきたんでしょ?」

 しろちゃんが私の元に来た時からずっと気になっていた。

 よっぽどのことがない限り、しろちゃんが頼んだ事を中断して、ここに来るはずがない

 「そうでした・・・・俺がここにきた理由はですね・・・・単刀直入に言いますけど、このビルの十五階には、あれがなければ入ることは出来ません」

 「ど・・・・どういうこと?」

 「強すぎるんです・・・・・強すぎて、十五階に入ることが・・・・・今の我々ではとうていあの中に入ることはできません・・・・ですから・・・蘭華・・・・どうか我々にあれの使用許可をお願いします・・・」

 何を言いたいのか、しろちゃんの顔を見れば分かる。

 一言で言いくるめるなら命に関わるほどかなり危険だと言う事だけど、どれほどなのかは実際自分に目で見てみないと分からない。

 だけど、しろちゃんがこんな事を言うと言う事はこっちも覚悟をしなければならない。

 「わかった、許可するわ。だから、頭を上げて頂戴」

 ずっと頭を下げられたままでいられるのは嫌だ。見ていたくない。

 「おい、それよりも、あの二人はどうしたんだよ白耀」

 それは私も思っていたことだった。どうしてしろちゃんだけがここに来たのだろう。二人はどうしたのだろうと思った。

 「・・・・・・琥珀が傷を負いました。今は月光が一緒にいますが・・・・」

 「それでこうちゃんは大丈夫なの?」

 「傷はたいしたことはないのですが、かなりの瘴気を浴びたみたいで・・・・」

 「しょ・・・・しょうき?ど・・・・どうして・・・・え?」

状況が把握できない。

 確かにこのビルのいたるところに瘴気は発生しているけれど、人体に影響を及ぼすほどの量じゃなかったから、心配はしていなかった。それに、皆も瘴気に耐性はなくても、対処は出来るので、問題ないと思っていた。なのに、どうしてだろう。絶対におかしい。

 「しろちゃん・・・・・・私を・・・・上に連れてって!」

 瘴気は毒。それも太刀の悪い猛毒。薬でどうにかなるものでもない。瘴気を浄化するしか方法はない。

 「分かりました。このまま上に行くよりも、すでに倒し終えている場所のほうが、安全でしょう・・・・・・そうとなれば、さぁ行きましょう蘭華」

 差し伸べられた手を取り、そのまま抱きかかえてもらい、光ちゃんとこうちゃんがいる十六階へと向かった。

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龍人島 しぎょく @sigi1173

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