第4話
晶はある一点を見つめていた。そのある一点にいるのは晶が殺し変わり果てた姿となった母親だ。彼は動かない。彼は喋らない。彼は泣かない。まるで置物となった彼はただただ母親だったモノ見つめていた。
今の彼に思考能力は残されていない。
どれくらいの時間がたっただろうか。
憎たらしくどこか人を食ったような声が聞こえてきた。
『あ~あw殺しちゃったぁw。』
神の声だった。それも多分に嘲りを含んだ。
『あんなに君のことを愛し慈しみ育ててくれていた君のお母さんを君は殺しちゃったんだぁw』
神は嗤いながら言う。
「違うっ!それh」
『何が違うのかなぁ?だって君が殺しちゃったじゃないかw。ほかでもない君の手で。あ〜あかわいそ〜w』
「それはでもお前が殺せって頭の中に言ってただろ!」
『うん言ったねぇ。でもでもぉ君の体はその時勝手に動いたのかなぁw?うんうん動いてないよねぇw。つ〜ま〜り〜君が自分の意思で君のお母さんを殺しちゃったと思うんだよねぇwフフッwアハハッwクフッwアハハハッwごめんねついフフッwアハハッw』
「なっ何がおかしいんだ!こっちはお前のせいでっ!お前のっ!」
神は嘲り言った。
『そこだよそこ。その認識がおかしくって仕方ないよwだって最終的には君がお母さんを殺しちゃったわけでしょ。そこには他社の思惑は入っていない。勿論殺せっていう言葉はあった。けどそれは君にお母さんの殺害を強要させる特殊な力。いわゆるファンタジー的な力を持ってないものだった。だからっ!君は!選んだんだよ!君のお母さんを殺すことを!しかも!その本当の理由とは!頭の中に響く声から脱っすること。つまり!自分が楽になりたいという浅ましい願望だよ』
「...ぅ...ぁ...ぁ」
晶は反論しなかった。否、できなかったのだ。神から言われた言葉がどうしようもない事実だと気づいてしまったのだ。反論の変わりと言ってはなんだが晶の口から悲鳴にもならない音がもれる。しかし神は容赦しない。そんな中でも晶の心を折るような言葉を平然と言い放つ。
『あ〜あ。か〜わいそっ!今まで女手ひとつで8年間!すごいねぇ〜。手塩にかけて!目に入れても痛くないほど可愛がり!それでいて善悪の区別やモラル・マナーをきちんと守れるようにと時に厳しく接することもあった!でもそれも
「...」
『えぇ〜無視しないでほしいんですけどぉ〜。寝てるんですかぁ君は?...もういいや意識はあるみたいだし続けるね。ということでっ!答え合わせと行きましょう!正解はぁぁぁ!』
ドゥルルルルルルルルルルルルデンッ
『痛みによる悶絶と死にゆく絶望・我が子に刺された疑問と自分の教えたことが伝わってなかった後悔と我が子に愛されていない感じた絶望と悲哀でした~。君が楽になりたいと思って殺しちゃったお母さんはこんなにも苦しんでたんだね〜。ほ〜んと最低だね君』
神のそんな言葉が晶に強く刺さって心を侵食していった。
(俺自分の為にお母さん殺して最低なヤツだ。俺は結局自分が大事なんだ。ただの最近野郎じやないか。気持ち悪い...ウプッ)
オ゛エ゛エ゛ェ゛ェ゛ェ゛
晶は強烈な吐き気を催して戻した。しかしその胃の中には一ヶ月間何も入っていなかった
為何も出てこなかった。でたのは胃液だけだった。それでも強烈な吐き気は治らなかった。
「ハハッ...俺最低だ...ウプッ」
オ゛エ゛エ゛ェ゛ェ゛ェ゛
もう何度吐いたかわからない。本格的に何も体から出るものがなくなった時だった再び神の声が聞こえたのは。
『ねぇ君はさもう人殺しなわけよ。しかも唯一の肉親の母親を殺した。だったらさもう何人殺しても同じだと思わない?だって君の犯した罪は消えないわけよ。君は一生背負う業を持つ身体になってるのよ。それって人数でなんか変わるものなのかな?』
神はゆっくりとしかし確実に晶の箍を外していく。
『君はさぁ見知らぬ一般人100人と友達1人どっちに生きて欲しい?個人的には友達かなぁ〜。だってなんの関係もない人が生きようと死のうとまじでどうでもいいもん。君はどう?あ!もちろん嘘はわかるから正直に答えてね!』
晶は答える気はなかった。いやそもそも答えるだけの気力が残っておらず回答が不可能な状態だった。しかし反射的に口が開いた。
「友達に少しでも長く生きてほしい」
そこから出た答えはシンプルで自分の関わりの深い人に生きてほしいというものだった。神はそこに付け込んだ。
『じゃあ次はなんの関係もない人を100人殺してみよっか。大丈夫!絶対に君がしたってバレないよ。今の世の中じゃ100人は割と簡単に死ぬし気に病む必要は無いよ!君は自分の母親を殺したんだよ。大丈夫できるさ心配無用だよ。まっできなかったら君の母親はどう思うかな自分だけ愛する息子に殺されてしまった。なにかあの子に恨みを買ってたのではないかと深く深く悩むだろうねぇ可哀想に』
神は思ってもないことを堂々と語り晶の思考を誘導する。しかし今の晶にそれを判断する力が存在しない。
(確かにお母さんは悩んで傷つくかもしれない。だったら殺さないと!ひとりでも多く!)
「俺殺しに行くよ連れて行ってくれ。あとあんたの名前を教えてくれ」
晶の心はとっくに折れていたため非常に簡単に心を支配することができた。遂に晶は最高討伐対象としての道を歩き始めた。
『ん?あぁ私の名前はルキア。神ゆえ性別はないよ。よろしく』
Transforming the world~神々のゲームに巻き込まれた世界~ 46クマ @rururururururu
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