エピローグ

あれから、あっという間に1年が経った。


私がナオちゃんと最後に会えたのは、あの卒業式の日だった。


''中学校でもよろしくね''って約束は、叶わなかった。


「中学生になったら、あんたを児童養護施設に預けることになったから」


小学校の卒業式を終えたその日の夜、お母さんは突然私にそう言ったんだ。


私の卒業式を見に行くことが、お母さんにとって、最後の親としての役目だったらしい。


「施設から車ですぐの中学校に、施設の友達と一緒に行くんや。学校から帰って宿題するのも、ご飯食べるのも、お風呂入るのも、寝るのも、全部施設の友達と一緒。寂しがり屋のあんたにとって、最高の環境やろ」


お母さんは自信満々に、そう言ったの。


ナオちゃんやセイラ、6年3組の子たちが行く中学校には進学できない。


お母さんとも、もう一緒に住めない。


突然の悲しすぎる現実に、私は心にポッカリと穴が空いた感じがした。


でも、始まってみれば、意外となんとかなったんだ。


児童養護施設って、なんかすごく暗くて怖い場所ってイメージだったけど、勉強教えてくれたりご飯作ってくれたり、一緒に遊んでくれる先生はすごく優しいし、施設の友達は、小学生も中学生も高校生も、色んな友達がいるけど、みんな優しくて気が合う友達ばっかりなの。


施設からすぐ近くの中学校での生活にも、すぐ慣れちゃった。


優鈴小学校で一緒に過ごした仲間や、お母さんに会えないことへの悲しさも次第にマシになった。


でも。


ナオちゃんと会えなくなったことだけは、なかなか悲しさが消えなかった。


でもでも。


最近は、その悲しさもマシになった。


ていうか、考え方が変わったのかも。


ナオちゃんとの楽しかった日々を思い出して、あの頃に戻りたいって、最初はしょっちゅう思って、悲しくなってたけど。


でも、それほど戻りたいって思えるくらい、楽しかった思い出が私の中にあるってことは、すごく嬉しいし、幸せなことだなって思うことにしたの。


だって、約束したんだもん、ナオちゃんと。


生きるのしんどくなったときは、嬉しいことを探そう、って。


きっとナオちゃんも、中学生になってしんどいことがあったときは、嬉しいことを一生懸命探してるよね。


いつか、また会いたいな。


きっと、会えるよね。


もしまた会えたら、それがきっと、いや絶対、中学生の私にとって、一番嬉しいことになる。


いつかその日が来るまで、私は私らしく、私の毎日をがんばるよ。


ずっと、元気でね。


ありがとう。

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ア(ライ)ヴ でぃさみ @disami

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