十二輪
いつかどこかは知らないが、そこには必ずキミがいた。
恋に恋する喜劇を演じる王子さまにお姫さま。
いつの間にか勝手に善悪、押しつけられたあわれで偉大な魔女、魔法使い。
名前も知らない、美しかったり、そうでなかったりする村の若者や娘たち。
誰も彼もの間で語り継がれる、彼らが主役の物語は勧善懲悪、大団円のハッピーエンドがお約束と決まっているのに。
キミはいつもその裏側を知りたがる。
お話の中ではけっして語られることのない胸中までもを覗きたがる。
そうしてキミは、そんな彼らを時に嘲り、時に慈しみながら、最初から終わりまで読み解いた。
物語はどうだった?
キミは目にしたはずだ。
美しく正しいだけではないお伽話を。
その中で語られる彼、彼女らの
喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、優しさ、厳しさ、不安や畏れ、夢に幻、それから皮肉。
そんな人間らしい色とりどりの感情を。
すべてきれいに読み終えたキミの中には、どんな色かは知らないが、十一輪分のキミだけの感情が束ねられているだろうさ。
それじゃあ、僕もこの辺で。
どこかの誰かをどこかで誰かに、語りにいくとしようじゃないか。
徒然花 はるむら さき @haru61a39
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