第27話
波瀾万丈。
林間学校の感想を一言で言うとそれに尽きる。
改めて女性が怖いと思った。
いや、あれは女性と呼べるものじゃないだろう。力はめっちゃ強くなっていたし、自我はないし。
獣だな。
とりあえず、俺は今まで通りバレないように立ち回るだけだ。今まで何かした記憶はないんだけど。
皆気づかないんだよな。
とりあえず、これから一時は安心な日常に戻る。
「皆、林間学校お疲れ。雨が降ったり満足できなかったって人もいると思うけど、来週からは普通に授業が始まるから切り替えてね」
学校に着いてから、そのまま解散ではなく一度自分の教室に集められた。
皆が座って、林先生が教壇で立って話す。でも、皆虚ろ虚ろとして眠そうにしていた。
俺も眠かった。空はもう朱色に染まっている。
「最後に、月曜日から水泳が始まるから、水泳パンツの準備をわすれないように。以上、解散!」
林先生の合図に皆がゾンビのような足取りで教室から出ていく。
教室に残っているのは、机に頭をくっつけて寝ている天音と、慌てている彼方と、思考停止した俺だけだった。
今、何つった?
水泳?あー水泳。俺、泳げるよ?だから、水泳する必要ないよね。
え、無理じゃん。
林先生、“水泳パンツ”って言ったよな。スクール水着じゃないのか?分かってる、ここは男子校だから、それが当然なんだよ。
でも、俺以外女しかいないじゃん。もう、スク水でいいじゃん。
いや、その場合、俺も着る羽目に。それは嫌だな。
でも、水泳パンツ上裸なんだろ?
反応してしまうだろ。
反応したら即バレるだろ。んで、全員が獣になる。
え、詰んでね?
ど、どどど、どうしよう!?
「あ、彰人さん、大丈夫ですか?」
見かねてか彼方が俺の傍まで来て心配してくれる。
「大丈夫に見える?」
「い、いえ」
自嘲気味に聞いてみると、困ったような表情が帰ってきた。
「……あきと?なにしてるの?」
目が覚めたらしい天音が自分の席から聞いてくる。
「いや、それがな……」
俺は天音に事情を一通り説明した。
「ん、解決方法分かった」
「「え!?」」
俺と彼方の思わず出た声が重なる。
どう頭を捻っても何もでなかったのに、事情を聞くなり瞬時に見つけたと言ったから。
「教えてくれ、天音!」
「ん。簡単。あきとが見慣れればいい、女の身体を」
「はい?」
あまりにも淡々と言うから、俺の耳がおかしくなったのかと思った。
「土日で見慣れる。それしかない」
天音の表情は真面目だった。
「……で、でも見慣れるってどうやって?」
「私の見せる」
「っ!?」
それはちょっと……い、いや、でも本当にそれぐらいしか手がないよな。
ここは、恥を忍んでお願いすべきだろう。
「じゃ、じゃあ、お願いしてもいいか?」
「ん」
天音が首を縦に振った。
「わ、私も手伝います!」
「ええ!?」
何故か、彼方が勢いよく挙手をする。
そんな彼方を天音がじろじろと見つめる。
「あなたは貧……無乳だから練習にならない」
「わ、わわ、わざわざ酷く言い直さないでください!」
天音のあまりの言いように彼方が顔を真っ赤にして叫んだ。
そういえば、彼方のことを男だと判断したとき胸見たなぁ。ごめん。
直接言ったらトドメ刺すことになりそうだから、これは墓場まで持っていこう。
「それに、万が、億が、兆が一、あきとがあなたに反応したらどうするの?また自我を保てず襲うの?」
一転して、真剣な声音で話す天音。
「そ、それは鶴原さんもでは……?」
「彼方、天音はどうしてか大丈夫みたいなんだよな。昨日助けてもらった時も俺の見たはずなんだけど、いつも通りだったから」
「あ、あれを見て、いつも通りでいられるのですか……?」
彼方が信じられないものを見るかのような視線を天音に向ける。
「そういうことだから。私だけでいい」
「ごめんな、彼方」
「……いえ、納得できましたので」
よかった。素直に彼方が下がってくれた。
「じゃあ、帰るか」
「ん」
「はい」
まあ、なんとかなるでしょう。
男女比1:100の世界で男子校に入学したんだが、周りに男装女子しかいない。 猫丸 @nekomaru2
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