Chapter_8 眩む喧騒の渦中

 宇宙の無縁仏を弔うという黒太陽墓場を抜け、同行者となったカロンの黒舟プルトーラ号に乗せてもらった一行。

 まず目指しているのは地球のある天の川銀河に近いアンドロメダ銀河。 

 カロンの……黒太陽の民が使っている船は宇宙海賊が運用する戦艦タイプではなく、大宇宙用の特殊なコーティング改造された帆船はんせん型となっている。 上を見上げればさながら変幻するプラネタリウムを楽しめるようになっており一行は景観を楽しみつつ旅路を続けていた。


「すごいな……」

「ええ……」

 イルトとエアは四方八方上下左右、全方向から色めき立つ星の光に見惚れている。

 現在、プルトーラ号はイルトとエアのアイガイオン、エンドのギュグエース、キオンのタランドゥスはアンカーで結び付けてアンドロメダ銀河へ向かうワープ銀河路を係留運行している。 ワープの光、それを貫通する光。 その景色は正に絶景である。

 これはDスターを出たからこそ、今ここで見れている光。だ。

 あの光のどこかに宇宙海賊キャプテン・アルファルドや腹立たしかったごろつきども、宇宙政府のやつらがいる。 幾多の命が紡ぐ星の世界。

 イルトはその凄まじさを頭で理解し、胸が熱くなった。 エアはその素晴らしさに震え、果てしなさを畏れた。

 それを彼/彼女と見られる、幸せを噛み締めていた。 言葉には出さずに、目も合わせずに。 もし思う以上に伝えたら、恥ずかしくてどうにかなってしまうような気がしたから。


 二人はそれぞれの気持ちを、心のうちで温めていった。


「─オルバースのパラドックス、だったかな……ギュグエースに内蔵された地球人のデータアーカイブスで読んだものだが、宇宙に星があるのならば照明だらけの眩しき世界になるはず、というものだが、実際は光の減衰や視野の問題、さらには次元時空間諸々の事情も踏まえて、完全な暗黒空間もあれば満天の光の世界もある、パラドックスすらも全て内包した世界が宇宙であるという説が現在においては主流となっているが……今僕達の見ているこれを見ているとそのパラドックスに対してこれが全てだと突きつけたくなる気分だね。しかしそんな理屈を抜きにしてもこの景色は美しい。プルトーラ号が光の反射を調整し飽きをさせない景観を具合調整し出力しているのかな?全く、詩の一つでも詠いたくなる情感になるな─」

 エンドは独白を垂れている。 景観を楽しむと共に思案に耽っているのが言葉として漏れていた。


「あーあー、エンドの旦那も子供組に入っちまって……」

 キオンは三人をプルトーラ号の操舵室の窓から流し見する。 

「大人ぶっちゃって〜! この景色最初に見た時一番目ちゃん輝かせての知ってるよお?」

「!?」

「素直じゃないんだあ……今もタランドゥスの自動記録つけっぱなしにしてるくせに?」

「なっ!?」

「アンカー繋いだ時に機体状況は大まかにわかるんだよねえ、盗み見になっちゃってごめんね〜」

「……ったく、食えんなおじょ……」

(そういやカロンって幾つなんだ? 見た目エアと同じっぽいけどなんか歳食ってそうな雰囲気もたまに出すんだよな……)

「なんで言い淀むのかなぁ〜?」

 操舵と運転用モニターや器具を操作しながらイナバウアーの体勢でキオンへ目を配り睨む。

「ひぃ!?」

 怖がるキオンであった。



 そうこうしている内に、プルトーラ号の計器が鳴りアナウンスがされる。

「宇宙航行ナビゲートシステムヨリオ知ラセデス。 宇宙標準時刻デアト15分後、ワープヲ終了シマス。

 次ノワープドライブデ目的地、アンドロメダ銀河ヘ到着予定デス。」

「ヘイ、いちばん近い停留可能な惑星は?」

「検索…… 惑星キーラ ガ最寄リトナリマス。」

「惑星キーラか……」

「あたし知らない星だあ、知ってる?」

「ああ、惑星自体が繁華街みたいになってる小型惑星でな、宇宙総商組合ソーショーが新たに宇宙サービスエリアとは別に新開発した星なんだよ。」

「宇宙総商組合?」

「そうか、棺や葬式が無縁な墓場にいるんだから知らねェよな……棺すらまで売ってやがる宇宙の銭狂いどもだよ」

 キオンは悪態を突いて言う。 カロンはほへ〜と聞いているのかいないのかわからない返事で返した。 キオンがふと目をやると、アナウンスを聞いた三人が操舵室に入ってくるのが見えた。



 斯くして一行は惑星キーラにて次回のワープドライブまで時間を潰す事となった。 アンドロメダ銀河への距離はそこまで遠くなく、半日分のチャージで行けるようだとカロンは言う。

 カロンは船番としてプルトーラ号に残り、4人は惑星キーラで買い物をする事とした。

 今思えば。彼らは星の美しさに舞い上がっていた。 物見遊山であった。 彼らに、運命の出会いが待ち受けているとは、この時誰も想像していなかった。 アイガイオンとギュグエースがそれぞれのマシンアイを光らせているのにも、気付くものはいなかった。





 4人がプルトーラ号を降りて、しばらくしてから。

「う〜ん……?

 死の匂いがする、ねえ」

 カロンは細かく身震いをした。







 惑星キーラに上陸した一行。

 この惑星キーラとは、宇宙サービスエリアの明確に権利化したものが作りたいという宇宙総商組合の思惑が結晶となった、惑星自体を巨大な市場とした開拓惑星である。 宇宙総商組合はこういった星を全宇宙各地で増やしているのである。 

 宇宙総商組合はキオンの毛嫌う、Dスター時代のイルトにとっては得意先である宇宙の商人連合である。 かつてのイルトのような貧民が生きる為に行うジャンク屋とは規模が違い、今では宇宙政府ほどの公式性はなく、しかし宇宙海賊のような無法具合でもない第三勢力となっている。

 そんな言ってしまえば民間の勢力が運営する市場惑星である。

 はっきり言って治安は悪い。

 モノを買ってくれるなら何でも誰でも良い商人達、その必要なモノが買えるなら何でも誰でも良い者達。 買う金を持たずに荒らし奪おうとする宇宙海賊。 それを取り締まる宇宙政府・軍警察の取り締まり。 星全体が放つギラギラと狂ったような華やかさ。

 一行はそれを着陸して、暫く歩く内にひしひしと体感していた。




「凄い人だかりだ……」

「目が回ってクラクラしてきますね……」

 イルトとエアはその喧騒に圧倒される。 


 現在一行は惑星キーラの中心、時計塔広場にいる。 時計塔は古今東西の銀河、星で作られた時計を埋め込んだ、宇宙総商組合の運営曰く多様性の象徴らしき塔であるが、その意図は悪趣味な煌びやかさと言う形で惑星キーラを表している。


「買う物を船内で決めておいてよかったね、この様子じゃ個人行動をすれば直ぐに迷ってしまう……」

 エンドは周囲を見渡して言う。

「相変わらずうるせえ星だ……」

 キオンは悪態が増している。

「その口振り、何回か来た事が?」

 エンドが聞く。

「ああ、軍警察時代に何回か査察でな。 そこかしこが危なっかしぬて気ィ抜けねェんだよなここ……」

(そういや、一々査察団出すのが経費の無駄ってんで交番置く話あったよな……もうなってんのか?)

「さて、と! 皆メモはちゃんと持ってるかな? 逸れないようにここからも気をつけて行こう!」

 エンドが引率して言う。 一行はエンドを先頭に惑星キーラの繁華街へ足を踏み入れていった。







 宇宙標準時刻にして1時間半が過ぎた頃。

 一行は。

「やっぱりこうなったか……」

「イルトたち、大丈夫でしょうか……?」



「やっぱりこうなっちまったなァ! おい!」

「わぁってるよちくしょう!」




 二組に分かれ、見事に迷子になった。

 キオンとイルトは、イルトが人混みに押し流されていくのをキオンが追いかけていく形で。

 エンドとエアは、人混みに紛れてしまわないように注意と人混みに惑わされないよう注意した追跡が4人分と足りなかった事により。

 それぞれ惑星キーラの僻地へ迷い込んでしまったのだった。





 まずはエンドとエアの側面から。

「よぅし、カロンに連絡を入れた。 さあて2人を探すか……」

 エンドは手元の電子端末を裾に仕舞い言う。

 エアは2人を心配しつつも周囲の喧騒に圧され行動できないでいる様子である。

 なお、買い物した物品はエンドの持つギャグエースと共有された電子デバイスにより転送されている。手持ち大変と言う事はないのだ。


 2人は今、時計塔広場から少し離れた繁華街エリアの中心、雑踏する闇市のエリアに迷い込んでしまっていた。 ヒューマノイド型宇宙人から異形すぎる宇宙人も、あらゆる種族でごった返している。

 この星には厄介な客引きが多数いるもので、それを断り避けるうちにこの通りへ入ってしまっていたのである。 衆人環視の目があり大事は起きそうにないが、喧騒に紛れて何かされそうな不安はあった。

 エンドは身近のエアをふと見て、しっかりしなければという意を固める。 やや強引に手を引く形で歩みを進める。


 この所仲間が増えて旅も楽しく弛んでいたという自負があった。 いけない、デスモ帝国と戦っていた時のような厳しい強さを思い出さなければ。

 そんな気を張り直したその時である。


「久しぶりね、エンド!」


 エンドにとって懐かしく、エアには知らない声が聞こえた。

 声の方に振り向くと、赤髪の猫耳宇宙人が立っていた。

「?」

「君は……レルビア!」

「知り合いの方ですか?」

 エアがやや警戒しながら訊ねる。

「ああ、彼女の名前はレルビア。 とある宇宙政府高官貴族のおてんば令嬢でね。 僕と一緒にデスモ帝国と戦っていた仲間だ。」

「おてんばは余計よ!」

 レルビアは頬を膨らませエンドに言う。

「そ・れ・よ・り・も! エンド、こんな所で何してんの?」

「実は……」

 経緯を話すエンド。 自身はルトとエアの旅についていく身である事、立ち寄ったこの惑星キーラで分断迷子になっている事。

 それを聞いたレルビアは「そりゃちょっとまずいかもね」と顔をしかめる。

「どういうことだ?」

「タイミングがかなーり悪いのよ。

 この惑星キーラ、もともと宇宙政府の管轄の行き届かない宇宙の悪人の無法地帯だったのを宇宙総商組合が幅きかせてるわけだけど……実は今日、宇宙政府軍警察による大規模な摘発があるのよ。

 それに巻き込まれてちゃったりしたら……

 さっきの話聞いたけど、アナタ達宇宙政府にも宇宙海賊にも因縁つけられそうな喧嘩売っちゃってんでしょー? マズイわよねー……」

 レルビアが腕を組みうんうん唸りながら言う。


 エアは顔がどんどん青くなっていく。

 一行はアルファルドに加担した事で宇宙政府にすでに目をつけられている。 だが今イルトとは共にキオンがいるから……いや駄目だキオンも宇宙政府軍警察から飛んだ身の上だ! 

 イルトが危ない!

 そう考えついたエアの事を察するようにエンドが動く。

「エア。 落ち着いてくれ。」

 肩に手を置き冷静を促す。 エンドの顔は平常時の爽やか青年モードから戦う戦士のものとなっていた。

 レルビアは馴染みあるその表情に懐かしさを覚え、エアは度々見る顔に頼もしさを感じる。

「レルビア、教えてくれてありがとう。 そうなると、長居は危険だ。 この惑星から脱出したいが……また、力を貸してくれるか?」

 エンドは少し笑みを零しながら言う。

 レルビアは猫耳をピコピコと動かして

「しょーがない! 手伝ってあげるわよー!」

 と鼻息をフンと鳴らした。

「ならば、ここからの当面の目標は」

「そのイルトちゃんとキオン君を探して拾って早いとこ惑星キーラを出る、ね! その為には……」


 会話を一区切りすると、エンドとレルビアは戦闘態勢を取る。

 ふと目を回すと、周囲の人だかりはやや3人と距離をとっている。その人だかりの向こうから、一人の岩石型宇宙人たちがやってきた。

「テメエらだよな? ギルドの速報でやってた外銀河怪獣のタマゴ奪ったつうんわ ブツは手持ちしゃあねえようだが」

「最近オレらのシノギ邪魔する猫女もいるぜ!」

「テメエらをノメしてタマゴ共々ギルドに引き渡すのをこの惑星での最後の仕事にすっかあ」

 彼らも、宇宙海賊なのだろう。 しかしその姿からはアルファルドのような義侠心は感じられない。 

 とことん悪のに匂いがする。


 エアはエンドのシャツの裾を掴む。

 エンドとレルビアは戦闘態勢を構える。

 周囲は宇宙海賊の仲間や見物人で賑わい始めた。


「行くぞ! 押し通る!!」


 言うが早いか、エンドとレルビアは思いっ切りジャンプをする。 先手必勝の飛びかかりか!?と悪人達はガードするが、攻撃は来ない。

 エンド、エンドにくっつくエアとレルビアは戦闘にいた大柄な岩石型宇宙人の肩を踏み、踏み台にする形で飛び越えていく。

「さらば!」

「ご忠告! 私達に構ってる暇あるならこの星逃げた方がいいわよ〜っ!」

 エンドとレルビアが逃げ文句をかけ、エアはひゃああと慌ててエンドを掴んでいる。


 悪人達は相手が逃げを選んだ事を理解し、声を荒げた!

「逃すな! 追え!」


 こうして旅人と悪人達の、大騒動が始まった。







 一方その頃、イルト&キオン'sサイド。 彼らはというと。

「畜生! 出せぇ!」

「だぁ〜……クソがよ……」

「五月蝿いぞ! 静かにしろ!!!」

 牢屋の中にいた。



 時は少し遡る。 時系列としてはエンドとエアがレルビアに会う前から出会い話が纏まり惑星キーラ大脱出が始まるまでのこと。

 イルトとキオンは買い物に夢中になっていた。 イルトもキオンもそれぞれに電子デバイスを持っていたもあり、個人の買い物にお熱だったのだ。 買い物がひと段落したあと、周りを見渡した時に見つかったのは2人同士のみであった。

「イルトォ! テメエはいつもそそっかしいんだよ!」

「そそっか…… 慌てん坊ならお前に言われたくねえよ!」

 兄弟喧嘩のような見てられない喧嘩をしながらどんどん裏路地へ迷い込んでいく二人。 共通認識として止まっているよりは進んだ方がいいだろうと言う事で慣れぬ道をガンガン進んでいく。

 そしてその先には……

「「「「あァ?」」」」

 ヤクザやゴロツキ、チンピラよりも強面な宇宙人たちが陣取る場所に来てしまった。



 宇宙政府軍警察、惑星キーラ駐屯警察署。

 一番来てしまってはいけないところに来てしまった。

 もっとも、こんないや組んだ裏路地の中にひっそりと立っているのもどうかと思われるが……



「あっ!?」

 キオンにはその制服に見覚えがあった。 白と黒を基調として、階級により差し色が変わる……宇宙政府軍警察の、キオンの古巣の制服である。

「ン? テメエ……」

 ガラの悪い警官の1人がイルトとキオンに迫る。 イルトも状況を理解したようで目を泳がせている。


(頼む! 大事になってないでくれ! こいつら把握してないでく!!)

 キオンとイルトが祈る。

「テメエキオンだら?ルウ少将ン所から飛んだ」

「あー ウワサの軍部派にも警察機構にも属してねえ風見鶏野郎の新人か?」

「それそれ。 ……まぁ、なんだ。 一応不当職務放棄邪魔だからよォ……」

 ガチャリ。

「うい身柄拘束。 しばらく牢で大人しくしてろや」

「ついでにそこのアンドロイドもな」

 こうして2人は、あっけなくお縄にかかってしまったのである。




 そうこうして今に至る。 牢獄でもがき叫ぶ2人に至る。

「どうするんだよぉキオン〜!」

「どうもこうもねえや……! だが、オレの考え通りなら……」

「? 考えあるのか!?」

「さてな……」

 そんな話をしていると、看守をしていた警官が牢の前にコツコツと靴を鳴らしやってきて声をかけてくる。


「宇宙政府軍警察 巡査級 一等兵位 キオン・プラウドハウンド。 が呼びだ。」

 言われると、キオンはのそのそと立ち、鍵のかかった牢獄の扉の方へ行き出る。

「キオン!?」

「オレは大丈夫だ、テメエもそのうち多分なんとかなる。

 ……覚悟でもしとくんだな」

「さっさと歩け!」

 ふさ毛の髪を無理やり引かれ連れて行かれるキオン。 髪を引っ張られているのでその顔は頭に歪む。 そんなキオンを牢獄の中で見送るイルトの胸には大きな不安があったが、今はぶっきらぼうで口の悪い旅の仲間の彼を信じるしかなかった。





 1人になった牢獄で溜め息を吐くイルト。 する事がなくなったので、身を乗り出して見える範囲で他の牢獄を見たり聞き耳を立てたりする。 あくまで見聞きできる範囲の情報だが、どいつこいつもガラは悪い。 痛めつけられて唸っているもいれば喚き散らしているものもいる。 掃き溜めという言葉が良く似合うところであった。 

 げんなりする気持ちの中、正面に対する牢獄に目をやる。 暗闇に慣れてきた目にうっすら見えてきたのは、ボロ布を被ったら人型の存在あった。 イルトは黄色の瞳を爛々と光らせ、その白髪とこんな作業着を揺らし、黒鉄の全身を傾けてその姿を見る。 何故だかその存在にイルトに興味を惹かれていた。 意識を離せなかった。

 その存在は、ガン見しているイルトに気付いたのか、と音を立てて牢獄の柵を掴みイルトが見やすいように身をやる。


 その存在は、イルトと同じ黒鉄のヒューマノイド型アンドロイドであった。しかし、瞳のパーツはひび割れ腕足は片方ずつ無く這うように動いている事から死に体のアンドロイドである。 いつ機能停止しても全くおかしくない。

 そんな死にかけのアンドロイドに何故か心がざわつかされるイルト。 声は遠くておそらく届かないだろう、イルトはDスター生活で編み出した音声コミュニケーションをしない宇宙人への対応方法、スーパーオーバー身振り手振りで対話を試みる。 

 しばらくやっていると、対面の死にかけアンドロイドが呆れたように笑うがしゃっという音が聞こえた。 そして死にかけアンドロイドはボロ布で隠していた顔の全貌を見せてくれた。 やはり先程チラリと見えたとおり瞳はひび割れているし頬が砕けて欠損している。 最低限の口と目玉しかない。 そんな姿に同じアンドロイドとして悲しみを覚えていると、死にかけアンドロイドが口をパクパクとしているのが見える。 読唇術で会話をしようと言う事だろうか。 イルトは慣れないながらもなんとか対話としていこうとするが……


(あなたは何者ですか?)

(なぜここに捕まっているのですか?)

 イルトが唇の動きのみ会話というものに精通している訳ではないというのもあるが、死にかけアンドロイドは対話をしようとしていないのが大きい。パキパキと表情のパーツを軋ませ、一方的にイルトに問いかけ話しかけてくるのだ。

 更に、その内容は意味不明なものが多い。


(久しぶりだな……)

(久しぶり?)

(お前に言ってはいない

 に言っている)

(?)

(互いに無様な姿になったものだ)

(??)

(それが、の手に入れたものか?)

(???)

(まあ、もう我には関係できない意味の無い事だ。

 全て終わった。 何もかもは既に始まり、続き、終わった。

 何も残されていないし、何も生み出す事はない。

 そう、終わったのだ……)

 死にかけのアンドロイドはイルトを見ながらイルトを見ていない。 虚空に向けて話しかけているようだった。


(何言ってるのかわからないけど……)

(?)

(勝手に何もかも終わらせてるんじゃねえよ!

 俺は、まだ何もしてない……俺はまだ、これからだ! 今、なんだよ! 全部諦めたような事言うな!)

(!)

 イルトはDスターにいた頃から、自身の脳と心臓についての謎を諦める事はなかった。

 意識が始まり、意識が続き、エアと出会い、様々な人と出会い、今に至り。

 自分の道は、世界は、人生は今まさに動いている最中なのだ。  それを不躾に値踏みされたようで、心の底から怒りが沸々と燃え上がった。


 その感情を、心を感じ取ったは。


 がしゃしゃ!がしゃしゃ!と音を立てる。 

 ……笑っている、のか?

(そうか! はそういうやつなのか! だからは助けたのか!? 我らとはまるで違うから!!!

 ……気持ちが、悪い。 だが……そうか、そうだな。 がどう終わるのか、少し興味が出た……)

 そう死にかけの唇が動き終わると、死にかけの体内からリーン……リーン……ということがする。 話しているというより、コアの底から慣らしているようだ。

 せいぜい逃げ延びてみせろ、悪あがきのものどもよ)

(??? ……違う!

 俺はイルト! エアと、エンドさんと、一応キオンと……この宇宙を旅していつか地球へ行く者だ!」

 イルトはすっくと立ち上がり死にかけに啖呵を切る。 後半の方は声に出していた。 


 それを言い切ったが直後、ドズン!!!!!!という大きな衝撃で地面が揺れる。

「なんだ!?」

 困惑するイルト。

 看守警官や獄中のごろつきどもの慌てる声。

「外銀河怪獣の群れが来たぞ!!!」

 誰かの声が走り、緊急サイレンが鳴り響き出した。

「こんな時に……!?」

 イルトは焦り呟く。 そんなイルトを傍目に見ながら

(せいぜい、生きてみろ……)

 死にかけは、羨望と嫉妬と憎悪の目を向けていた。

 そして。


 バギィィィィィィン!!!!!!


 天井が大きか破壊され、衝撃とそれによる瓦礫嵐が牢獄エリアを襲った。





「!? なんだ!?」

 連行されたキオンは職務室と書かれた扉の内、部屋の中にいた。

「誰が余所見を許可した? キオン

 そう命令する厳格そうなタレ目垂れ耳の犬型宇宙人。

 宇宙政府軍警察の警察機構の派閥に所属する警視級の傑物。

 ギルス・ギウテグド。

 その男が今、キオン巡査を詰めていた。

 キオンの行動……イルトエアエンド一行の元へ行く職務放棄やタランドゥスの横領などは当然だが公職者として問題である。

 そしてこの駐屯警察署。 ここは惑星キーラ大摘発を行う為の臨時署であるが、そこにキオンが迷い込んでその特別取り調べを署長であるギルスが行なっていた。

 キオンは反抗心からつっけんどんな対応をしていたが、外銀河怪獣が来た事で状況が変わりつつあった。



「軍部のルウ少将の厚意によって除籍されていないとはいえ、職務放棄と要警戒対象との協力といいお前は十分詰問される立場にある。 わかっているのだろうな?」

「ンな事言ってる場合じゃあねェでしょう!このサイレンが聞こえるでしょう!」

「外銀河怪獣の一匹程度ここの隊員で対処できる。

 既に隊員達は大摘発を開始している、その流れで撃滅できるだろう。 私が直々に訓練した精鋭達が現在この臨時署には集められているのだからな。

 ……貴様も、そうだったというのに……」

「アンタにしごいてもらった事は感謝ァしてる!

 連絡よこさなかったのも悪かったよ! 反省する!

 だからもう良いだろ、行かせてくれ! 

 イルトが危ねえし、みんなと合流しねェと!」

「……解らん、何故そう生き急ぐ? お前はルウや俺に眼をかけられていた。 世渡りの素養があった。 俺はお前に宇宙政府を背負って立てるような男になると多大な期待をしていた。 

 それがの願いでもあったろうに」

「……オレは……」

 ルウの分かれ目の記憶がチラつく。

「オレは……強くならなきゃいけない……」

「その為の膳立ては……」

「誰かに作られた道なんてゴメンだ!」

「!」

「オレは、オレの思うように生きていたい……誰かの為じゃなくて自分のために、自分が愛して自分を愛してくれるもののために生きていたい! それが出来るようになる為の力が、自分を貫ける意志の強さが欲しい!

 だから、あいつらと行く!

 他人のために、命を張れる奴らと一緒にいて、オレも!」

 言うとキオンは踵を返す。

「待てキオン!!!」

 バウゥッ!と吠えるような一際大きな声でキオンを引き止めるギルス。

 その手には、引き金に手を掛けた実弾銃が構えられていた。

「貴様の命は貴様のものでは無いのだ! 貴様にはやってもらわねばならぬことがある! 好きに生きたいだと……そんな事はさせられん!」

「勝手に……」

 キオンはの怒髪が天を突く、髪の毛が逆立った!

 キオンは銃を向けられていることなどお構いなしにギルスの方へ向かっていく。

「!?」

 ギルスは驚愕し、引き金を引いてしまう。 弾丸がキオンの頬を掠める。 それでも退かずに向かっていく。 激情に駆られたキオンは"当たっても良いから言わねばならぬ"気持ちで突き進んでいく。 その愚直な気迫に気圧されて、当てられない。

 やがて机一つを隔てた距離まで詰めたキオンは、銃を突きつけられているにも関わらずギルスの胸ぐらを掴み、その瞳を睨みつけた。

「勝手にヒトの人生決めてんじゃねえ……!

 オレは、オレだ……」

 突き放し、吐き捨てる。 キオンは部屋を駆け出た。 ギルスは最早止める術はなかった。 その表情が呆気か驚愕か、わかるものはもういない。







 外銀河怪獣の襲来、宇宙海賊達の騒乱、暴動を抑えようと暴力を行使する宇宙政府軍警察。 惑星キーラは、今最大の爆心地と化していた。

 瓦礫の下からイルトがようやく出てこれた時、そこには阿鼻叫喚の世界であった。 我先にと逃げる商人、逃げ惑う客人や観光者。 体中に棘針のある山嵐のような外銀河怪獣が街を荒らし、それに宇宙政府軍警察の機体が攻撃を仕掛け、その漁夫を宇宙海賊が狙う。

「ひでえ……」

 思わず漏れ出た声。 その光景を一言で表すものであった。 しかしいつまでも見ていられない、いつ誰の攻撃を受けるかわからないこの状況。 早くエアエンドキオンと合流しなければ! 

 頭は理性で最適を弾き出す。 のに。

「たすけて……」

 瓦礫の下から、声が聞こえた。

 動悸が早まる。 アンドロイドには無い筈のイルトの心臓が動く。 本能が感情を促す。


「ちくしょおおおおお! 死ぬなよ!」

 イルトは背中に鳥人系の宇宙人を抱え、喧騒の星を走る。

 道中で下敷きになっている宇宙人を助けながらなので、寄り道曲がり道をしまくってもう事故の所在を把握する前に爆走している状態だ。 とりあえずアイガイオンやギャグエースやタランドゥスを留めた駐留所を目指してはいるのだが、建物がどんどん壊れていくので目印も効かない。

 幸い今背負ってる鳥人系の宇宙人をはじめ、先々で助けた宇宙人に宇宙総商組合の者が多く、随行してもらい道を教えてもらっているで迷いはせずに走れている。

 しばらくイルトの救助された者達が必死で走っているとようやく大通りに出た。 周囲を見渡し状況を確認していると。

「イルトォ! 無事だったか!」

「キオン!」

 イルトが目を向けていた逆の方の通りからキオンが駆けてくる。 背景を見ると火柱が上がっており、顔や服が煤煙で汚れているのがわかる。

「そっちも、呼ばれてから今まで、大変だったみたいだな……!」

「なんとかな! それよりテメエそいつら……!」

「放っておけなかったんだよ!」

「……まあ、いい! どうせ逃げるって行動目的自体に変わりゃしねえんだからな! てめえら! しっかりしろよな!」

 キオンは不器用すぎる忠告をしているが、言ったそばからイルトはまた瓦礫をどかして人助けをしている。

「大丈夫ですか!? 足は!? 立てますか!?」

「ぐうう……」

 助けられた宇宙人は瓦礫による擦り傷、下敷きの骨折もあったが火傷が特に酷かった。 動乱の爆炎に飲まれたのだろう。

「しっかり! 誰か抱えられる人は抱えてあげてください!」

 叫ぶと横から大柄な宇宙人が肩を貸す。 火傷している体に身を寄せたので熱くぐぅと肩を貸した宇宙人も唸るが、なんとか体勢を整えて支えた。

「イルトォ! こっからどうすんだよ! もう道は爆破壊で無くなってンぞ!」

「なんとかアイガイオンやタランドゥスに乗って、エアやエンドさんとしてえがこの人達の面倒も見なきゃ……」

「そ、それなら!」

 比較的傷が浅いフクロウのような宇宙人が挙手して言う。

「私達、宇宙総商組合の避難船の反応がもうすぐ近くにあるとデバイスに連絡が入りました! お二人も宜しければ!」

「で、でも」

「イルト、ここはその船に乗せてもらおうぜ!」

「キオン!?」

「見ろ!」

 キオンが電子デバイスを見せる。 そこには『こっち合流した、脱出完了、待つ』と淡々と文字が連ねてあった。 エンドとエアからの、ギュグエースを使った簡易メッセージである!

 ふと上空を見ると、プルトーラ号の白い光、ギュグエースらしきスカーレットとネイビーブルーの発光が上空でチカチカ光っているのがわかった。 しかしそんな目立つ事をしているので周囲の光から寄られてしまっている、早く合流しなければ!

「でもアイガイオンとタランドゥスは!?」

「一旦旦那達と合流して、この星のほとぼりが冷めたら取りに来るしか……」

「そんな…… ッッ!!?」


 ズガァァァァァン!!!


 イルトキオン救助者達を潰さないギリギリの距離に行く外銀河怪獣が倒れてきた。 直ぐに立ちあがろうとするが、そこに運悪く一行が目にとまる。 トゲの生えたクジラのようなその外銀河怪獣は体を起こし

「ギャオオオオオオオン!!!」

 一行に敵意を見せる。


 救助された者達はパニックを起こしている。

 キオンはここまでかと腹を括った。

 イルトは。


「キオン、行ってくれ」

「は?」

「この人らを連れて避難船まで逃げてくれ、時間を稼ぐ」

「ハァ!?」

 アンドロイドのメタルボディが軋むなど、脳味噌が煮え、心臓が迸る。 イルトの本能と理性が全力稼働している。

「俺なら大丈夫だ! 行け!!!」

「!!!? ……死ぬなよ!

 テメエら! 死ぬ気でついて来い!」

 キオンはイルトの出す気迫を信じつつも不安を隠せない、そんな一瞥をしてから救助者達を連れて離れていく。


 残されたイルトは、絶叫を続けている外銀河怪獣に向かって、独り言か対話かわからない言葉を紡ぎながら歩き出した。

「どけ…」

 一歩。 ゆっくり歩き出す。

「俺は……」

 二歩。 確実に前に進む。

「エアの所へ! 行く!!」

 三歩目はもう勢いを付けて走り出した!


「うおおおおおおおおっっっ!!!」


 イルトは物凄い勢いで外銀河怪獣の方へ手を伸ばし突進する。 側から見れば無謀である、しかし!



 ズグゴォォォォォォッッッ!!!!



 イルトの想いに呼応した、そうとしか考えられない。 イルトの肩の上あたりの時空間が歪み、巨大な腕が生え外銀河怪獣の図体を押し飛ばした。

 イルトは激昂した心を我に返し、自分の斜め右上から飛び出ている自空間のひずみを見る。 

 その巨腕には見覚えがある。 真っ白なメタルボディの素体に三原色にキラキラとしたラインを輝かせている。そうそれは!

「アイガイオン……!?」

 イルトの言葉に返事するように肩を、ぐぐいとひずみから乗り出してきて顔を出したアイガイオン。

 その瞳には明らかに意志を感じられた。 言葉は無いが想いを届けるように、ギラギラと輝く瞳。


「自分で動いて、来たのか…………!?

 すげえぜ!!!!!!」

 イルトにとっては困惑よりも、信頼が勝っていた。







 場面は再度移り変わり、惑星キーラ上空の宇宙。

 そこではギュグエースとプルトーラ号が三つ巴の争いの中心にいて台風の目として悪戦苦闘していた。

「ギュグエース・ミサイルゥッ!」

 フィロソフィアスの無機物創造装置の機能を全開にした戦いをするギュグエース。 全方向に超電子ミサイルをばら撒き、痺れ怯んだ相手を

「ギュグ・エース・ザンバーッ!」

 即座に作った両手の担当で切り倒す。 この戦いにおいては完全に巻き込まれであるし、外銀河怪獣も宇宙政府軍警察も宇宙海賊も明らかな殺意をすべてに向けているので中途半端な抵抗はしていられない、そしてプルトーラ号は自衛に専念しほぼ完全に近い堅牢なバリアを張っている。 ギュグエースが暴れる条件としては十分であった。 しかし、マシンは強くてもエンドの体力が持たない時が来つつあった。

「クソッ……デズモとやり合っていた時はこんな長期戦なんて事なかったのに……!」

「訛ってんねえエンド!」

 レルビアは自身の特製改造スペースマシン・シェラタンで援護射撃をして隙をカバーしている。

「ブランク、というのは恐ろしい……!」

「エンドさん!次が気ます!」

 それでもここまで耐えきれたのは、やはりレルビア&エンド、ギュグエース&シェラタンの慣れた手つきのコンビネーションにエアのオペレートも加わったお陰だろう。 プルトーラ号が高いステルス性と高出力バリアを持っているからと言ってディフェンスだけでは決して持ち堪えられなかったし、久しぶりのコンビネーションだけでは崩されていた。


 そこに、新たなオフェンスが参加した!

「旦那エアカロン!待たせた! ……そこの赤スペースマシンは!?」

 キオンinタランドゥスである!


キオンが何故タランドゥスに乗り来れたのか?

数分前、宇宙総商組合の避難船に乗り上がったキオンは、そこでなんとタランドゥスに再開した!

曰く「珍しい機体だったので、つい……」らしく、この野郎とキレそうになったが運命僥倖、許して代わりに「後はテメエらでなんとかしろよな!」と逃げるのを確認してからタランドゥスに乗り来たのだった。


「僕の友人だ!」

「ども!レルビアって言いますよろ!」

「キオン! イルトは!?」

「途中で別れた!」

「「なんだって!?」」

「多分大丈夫だ! あいつはここで一皮剥ける……そんな気がする! それまで持ち堪えるぞ!」

 そう言うとエンドとエアのギュグエース、レルビアのシェラタン、キオンのタランドゥスは三角形の隣り合わせとなり、シェラタンがブーストをふかして陣営を回し、タランドゥスが持ち前の豊富なビーム兵器レーザー武装を乱射して牽制、ギュグエースは超えて近づいてきた敵を切り倒すというフォーメーションを取った。

 これをなかなか突破できない敵共。 

 膠着状態で数分経った、その時。



ギュオオオオオオッ!



爆炎を引き連れセンサーを眩まし、宇宙空間に凄い勢いで上がってくるものがあった。 破壊されたスクラップと破壊による炎を纏いながら上がってくるその竜巻に気圧されるその場の皆。

しかしギュグエースとタランドゥスに届いたその無線が2機を安心させた。

爆炎竜巻の中からドッパァァァァッ!と飛び出す影は!


「ま・た・せ・たぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


「イルト!」

「アイガイオンか!」

「来ると思ってたぜ!」

「へえ、あれが!」

一行は口々に反応する。 その勢いを見たエンドは閃き、口火を切った。

「しめた! イルト、そのまま向かって来い!」

「えっ!?」

「いいから!」

「なんだかわからないらがぁぁぁっ!」

「タランドゥスとシェラタンはバリア機能を最大ONに!

このままプルトーラに叩きつけられるぞ!」

「旦那マジすか!?」

「キタキタエンドのトンデモ! らしくなってきた!」

「カロン! ワープチャージは!?」

「できてるよお!」

「ならこのまま離脱するぞおおおおっ!」

「よおおおおおおおっしゃぁぁぁぁっ!!!」


アイガイオンは勢いを止めず、ギュグエースシェラタンタランドゥスを巻き込んでそのままプルトーラに激突!

「いっけえええええっ!」

カロンはそれを確認するとワープドライブを決行! 惑星キーラ宙域からの離脱を図る。


ギャガラッッッッ!

いち早く動いたのは外銀河怪獣の群れ。

ワープせんとするプルトーラ号にまとわりつく。

宇宙政府軍警察と宇宙海賊も追うか迷うが、互いに互いの敵を殲滅する事を選ぼうとした。


この選択が運命を分けた。


プルトーラ号はワープドライブに成功、外銀河怪獣を亜空間に引き連れ、やがて剥がれ散らしながらその場を離れる。

また、ワープドライブによる莫大な電磁ショックを受けた惑星キーラの戦闘は宇宙海賊達が電磁ショック対策のアナログ連絡網を持っていた事から逃げの択を取り始め、蜘蛛の子を散らしていく。 鎮圧から捕縛に変わった動乱は、時間を経て落ち着いていくのだった……。







そうこうして、その後。

ワープドライブをしたプルトーラ号。

アイガイオン、ギュグエース、タランドゥス、そして臨時のシェラタンを格納して。

一行は、どっと疲れを吐き出してブリーフィングルームにてぐだらけていた。

「はぁ〜っ……血相変えたエンドくんから始まってどうなることかと思ったよ〜っ……」

「ありがとうカロンちゃん……結果的に待っていてくれて助かった……」

「私も久しぶりに疲れたわ〜…… あ、折角だから暫くお世話になるわね 遅ばせながら、お邪魔します〜」

「また緩い感じの女が来たぜ……」

「イルト! 良かった!」

「エア!!!」


「……へえ、そういう感じなんだ」

レルビアが察すると3者から睨まれる。

(分かってます! 分かってますよ〜)

レルビアがおどけて身振り手振る。

イルトとエアは手を繋ぎ笑顔で互いの無事を喜んでいた。





やれやれ、とんだ寄り道だったと肩を竦めるカロン。 まあでも、こんなトラブルも旅の醍醐味かなと納得していた。

合流会話にてアイガイオンが自力で助けに来た事を黒太陽墓場でのギュグエースと照らし合わせて訝しむエンド。

ルウやギルスの顔がチラつき、旅で得なければならないもの、自身の覚悟を固めるキオン。

純粋に無事をただ喜び合うイルトとエア。


星の旅行譚は、紆余曲折を経て更に続き進んでいくのだった……。
















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超克星旅伝フィロソフィアス 火鷲 @beagle_18

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