Chapter_7 黒太陽墓場
キオン&タランドゥスを仲間に加え地球を目指す一行。
あの後、アイガイオンの搭乗室はタマゴの安全な保管をする為に再改造が施され部屋の拡張をした。
幸い自分達よりフィロソフィアスの仕様にまだ理解があるエンドやキオンという人手もあったので困難な改造ではなかった。
現在のアイガイオン搭乗室は縦に連なる操縦席をメインに全周囲モニターと体感連動グローブとそれに追従するパネルやセンサー機器類が前面にある。 例のタマゴは上側のエアの座席の横に括り付けてある。
一行は会話をしながら宇宙をゆく。
「銀河路図によるとこの近くは
「宇宙嵐?」
「外銀河怪獣が出すエーテル力場……エーテルというのは省いて言うと火、水、風、土の四大元素とは別の宇宙空間に漂い世界の大半を構成するとされる超エネルギーの事だよ。ちなみにエーテルについては未だに新説や研究がされていて明確な結論は出ていないんだ。それを科学的に分析、制御可能なものにしようとしたのがスペースマシンにも使われる超電光子PhotonPlasmaで……」
「旦那一度話し出すと長えな。 つまりは外銀河怪獣がいそうな場所って事だ。気をつけて行こうや」
「じゃああれは?」
エアがイルトに教え、イルトはアイガイオンを操作して指を指す。そこにはぽっかりと
穴と形容するしかない、その周囲だけ銀に空間が歪んでいる。
「エンドの旦那、こいつぁ!」
「ああ、ここまで安定しているものを見るのは初めてだが……間違いないだろう、
「宇宙風穴?」
「平たく言や外銀河怪獣の巣の作りかけだ。 中断したか巣立ったか。 それが自然消滅しないで残るとこんな穴になるんだよ。大抵の場合、自然的な性質の変化でワープポイントになってるから……」
「近道ができるって事ですか?」
「おぅーい、どこに繋がってるかわからないんだぜエア嬢?」
「とりあえずここは無視だね。 普通に行けばそろそろ次の宇宙サービスエリアに着く筈だ。 そこで補給をして順調に行こう」
「了解です。 一応銀河路図にここにこれがあるって書き足しときますわ」
そう言ってアイガイオンは宇宙風穴のそばに寄せて止まり、コックピットではイルトが路図の情報を更新をする。ちなみに路図は昔ながらの紙媒体である。
宇宙では、機械が壊れれば満足に修理できるスペースがあるかわからない。なので確固として存在する丈夫な紙媒体が重宝されるのである。
それを横で待つギュグエース、タランドゥス。
「よし! 更新かんr……」
声を出したとほぼ同時。なんの脈絡もなく風穴の歪みが荒れ始めた!
「きゃあっ!?」
「うおおおおおお吸い込まれる!?」
風穴の方に引き込まれるアイガイオン。
「おい嘘だろ!? 振り切れ!!」
「やってるけど!! ……ぐおあああっ!?」
奮起するが、その大きな機体は段々と渦に飲まれていく。
「ヤバい! 今行く!」
ギュグエースがアイガイオンを追って渦の中へ突っ込む。
「マジかよ! ったく……!」
渦の中に消えゆく二体のフィロソフィアスを追うスペースマシン・タランドゥス。
こうして宇宙の風穴に旅人が迷い込んだ。
渦に飲み込まれ、乱流に体を振り回される。
無線越しにそれぞれ叫ぶ。
数秒後、乱流が終わり渦の外に出た。 転移が終わったのだ。
「無事かエア!?」
「大丈夫です、タマゴも……」
傷や割れがないかぺたぺた触るエア。
「無事です! ここは……?」
「……どうやら僕達は、別空間に迷い込んでしまったようだ……」
「なんだこりゃ……」
四人を取り巻く宇宙空間は少し様子が違っていた。
通常、宇宙空間は四方八方に星の瞬きがあり完全な闇の世界ではない。 光の明滅の差や認識可不可によるズレを加味しても一切の光のない暗黒空間というのは滅多に無い。
一行が迷い込んだ空間はまさにさの暗黒空間であった。 星の光がない完全に闇の世界。 辺りを照らすのはアイガイオンギュグエースタランドゥスのセンサーライトのみである。
眼前に広がるのは、鈍く陰った赤い光を灯す巨大な灯台と不気味に歪んだ小さな球体状の惑星であった。
「怖っ……」
キオンが怯む。
「聞いた事がある……宇宙には、遺体を発見されなかったりで弔われずに死んだ遺恨のある霊魂を鎮めるための通常の墓場とは一線を引く霊園があると……」
エンドが呟く。
「銀河路図の表示的にも、どうやらそれらしいですね」
イルトとエアが表示されているデータを見て言う。
「この場所の名は黒太陽墓場。 "黒き太陽の如く、宇宙に彷徨う命に安息をもたらす土地"……」
元の空間へ帰ろうとしたが宇宙風穴はもう閉じてしまっていた。
とりあえず一行はその場に漂っているだけでは状況が進まないので黒太陽墓場に降り立って見ることにした。 幸い大きめの土地があったのでアイガイオン達はそこに停めた。
例の外銀河怪獣のタマゴはアイガイオンの中に置いていく事にした。
「空気は異常ない、生活可能なレベルだ」
エンドが手に持った端末で調べながら言う。
「焦げたような匂いがする……」
「何があるかわからねえ、気をつけようエア」
一行はそれぞれマシーンを降り周囲を見渡す。 どうやらここは丁度入り口らしく、遠くには柵で囲っているエリアとゲートが見える。
「……進むぜ」
「おい! そんな不用心な……!」
「わかってるって、気は引き締めてるよ。 ここは墓場だ。って事は管理人がいるだろ。 そいつに帰り方とか聞けると思ってよ」
そう言ってキオンはずかずかと進んでいく。
「ああもう勝手なやつ!」
イルトはしょうがないと追って歩きエアもその後ろに着く。
「……?」
エンドは三人の後を追おうとした瞬間、何か強い違和感を感じ立ち止まった。これは……視線?
「……鬼が出るか蛇が出るか、か……」
エンドはより一層気を引き締め、ホルスターの超電光子銃を確認して進んだ。
門を超え、墓場の中を進む一行。
「中は更に暗いですね……」
エアは用意していたライトをカチカチと点けようとする。 はっきり点かない。
「不調か?」
「この前電池変えたばっかじゃなかった?」
「ここは光が届きにくいからライトも点きにくいんよ〜」
「なるほど〜」
「マジに陰気臭えなオイ……」
一行の会話。
「……ん?」
呑気な声が混じっていた。
「うおおおおおおおおおっっっ!!!??」
「「「ひゃああああああっっっ!!!??」」」
キオン、イルト、エンドが驚きとんでもない声を出す。
エアは驚きで一旦思考停止した後、すぐに正気を取り戻してイルトの後ろに隠れた。
「きゃああ!!? お、おばけですか!!?」
「あばばばばばばば……」
混乱するエアとイルト。
「あはは、そんなびっくりしないでよ〜」
声の主はのほほんと言う。 声質は呑気で陽気。 全身がすっぽり隠れる真っ黒ローブの人間だ。 そんな格好の人間がこんなところで言っても警戒しない方が変である。
「……はっ!」
エンドが再起動した。 ぺこりと会釈して話し出す。
「君はここの人かい? 僕はエンド。 近くの制服の彼はキオン。
ちょっと遠くにいるアンドロイドで作業着の彼がイルト、蒼髪セーラー服の少女がエア。 僕らはここに迷い込んでしまったんだけど……」
「あっどうも〜。 あたしはカロン。
そうともここの人だよ。 みんなと一緒に住んでるの」
「みんな……?」
「うん!」
黒ローブはゆさゆさと手を振る。 すると、墓の影や木の影からぞろぞろと同じような黒ローブが出てくる。 このワンシーンはさながらサバトに迷い込んだ一般人、ホラー映画のようである。
キオンは警戒と混乱で恐慌状態。 エンドも怖かったが、押し殺して質問した。
「き、君達は……」
「あたし達は、
「どうぞ〜」
四人は墓場の奥まった小屋へ案内された。
どこもかしこも軋み今にも壊れそうな木建ての小屋。目の前には随分と熱そうなコーヒーが出された。
「そんな恐縮しないでいいよ〜」
そう言うとカロンと名乗った黒ローブはフードの部分を脱ぐ。 すると不潔さのない、おそらく地毛なのであろう綺麗な白髪とウサギの様な赤い瞳、にやけきった可愛い笑顔が出てきた。
エアが麗しきお嬢様と言うなら、親近感のある幼馴染、といったような雰囲気の美人である。
その朗らかな笑顔に四人はいくらか安堵するところがあった。
イルトとエアは怖いというより理解不能の混乱が大きかった。 なので現状を打破すべく会話を切り出したのも二人だった。
「舟渡しって?」
イルトが作業着を着直し身なりを整えながら聞く。
「たまに外に出て買い物したり流行チェックしてるの。 みんなはここの墓守に専念してるからねえ」
「みんなって言うのは……この部屋に入らねえあの人らのこと?」
「そうだよ〜。 みんなでここを守ってるんだ」
「「へえ……」」
(ここにくる途中、チラッとローブの中見たけど闇が広がってるだけだった……ただもんじゃねえなありゃ……)
キオンが未だ警戒しながら思う。
「彼ら以外には君一人?」
エンドが聞く。
「そうだよ〜。 だから基本ひまなんだ〜。 ねえ、あなたたちどこからきたの?」
「僕らは……」
エンドはイルト達の方を見る。 会話が振られたと思い、イルトはコーヒーを飲みエアは少しだけ啜ってから話し出す。
Dスターを旅立った事。
宇宙海賊とエンドに出会った事。
キオンと出会った事。
会話の後半は半ば武勇伝語りの様になっていた。そんな旅路の話はカロンにはとても興味深かった。
「すごいすごい! 楽しそう!」
カロンは目を輝かせて相槌を打つ。その様子に少し照れる一行。
「まあそんなわけで俺達は地球に行きたいんだけど……ここからどうやって帰れば良いんだ?」
イルトがズバリ聞く。
「んー? そうだね、きみたちまだ生きてるでしょ? ならまだあたしの舟で送れると思うよ」
「……生きてなかったら、どうなるんです?」
エアが恐る恐る聞いてしまう。
カロンは軽くウインクをして黙った。
なんとなく、それ以上は聞かない方が良いと思った。
「冒険譚も良いけど、イルトくんとエアちゃんの舟に載せてあるキラキラの塊もいいよね!」
「舟……?」
「キラキラ……?」
イルトとエアが顔を見合わせる。一瞬の思考の間を経て勘づいたのはエアが先だった。
「あっ! アイガイオン達の事ですか?」
「ああ、じゃあ舟に乗せてるのだからキラキラしてるのってタマゴの事だな! ……ん? 外に出してないのになんで知ってんスか?」
「う〜んなんていうかね〜……生命力のパワーっていうの?
溜まってる感じがするんだよね。 そのアイガイオンもタマゴも。 黒太陽の民はそういう命のパワーを感じ取れるんよ〜」
「「へぇ〜」」
「大事にしてあげてね、あれ。 そうしたら多分だけど、イルトくんとエアくんに良い事あると思うよ」
「は、はい!」
「わかりました!」
急に占い師みたいな事を言ったのでイルトは若干引いた。
エアは物分かり良く言葉を受け取った。
会話をしていくうち、イルトとエアはカロンとだんだん打ち解けていった。
「本当にありがとうございます! 私達、助かりました!」
「私はここの墓守の中でも特別よく外に出るからね! これくらいなんてことないよー!」
「折角だからカロンの話も聞かせてくれよ!」
キオンとエンドは会話のノリに乗れなくなったので舟を出してもらえるなら機体を取ってくる事にした。
イルトとエアは小屋に残り舟の起動を手伝う事になった。
「どう見ます旦那? 悪いやっちゃなさそっすけどねえ」
先ほどカロンにコーヒーと一緒にもらっていたチョコバーを齧りながら言うキオン。
「……今更だが、その旦那ってのはどうなんだい? 多分僕ら同年代だろ? 慣れすぎて流してたけど……」
「え旦那歳いくつ?」
「二十四」
「あっじゃあやっぱ旦那だ。 俺二十二っすよ」
「あぁ……じゃあいいか」
(いいのか……そこは『それくらいならタメ語でいいよ』ってとこだろうけど……満更でないんだな……)
「えっと、彼らについてか。
うん、騙そうとするような邪気を感じない。 悪人ではなさそうだし信用して良いとは思う。けど……」
「けど?」
「ここの雰囲気がとても怖い」
「それが一番だよなあ……」
某菓子の包み紙を雑に丸めてズボンに押し込むキオン。
エンドは歩みを止めず、思案を続ける。
「なあキオン君。 僕は地球人とデスモ星人のハーフなんだが、キオン君もハーフか何かかい?」
「えっなんすか急に……俺ァずっと前に死んだじいちゃんが地球人だったらしいっすよ。 その血が濃くて、おばあちゃんや両親は獣型宇宙人だけど両親に似なくて……色々言われてきましたね」
キオンは言いながら過去を思い出して苦い顔をする。
キオンは地球人と獣型宇宙人のクォーターである。
周囲とのズレ、積もる違和感、しかしそこそこ裕福な家庭。その歯車が噛み合わないまま決定的な破綻はなく進んできた今がキオンという人物を作っている。
つい辛い思い出を蘇らせてしまっていた。
一方そんな過去を回想するキオンを尻目にエンドも物思いに耽っていた。
イルトとエアは自分達と比べると恐怖より好奇心が勝っているようだった。 何故? そういえば、確か霊というのは地球発祥らしい。地球人の血が薄い我々とは違い、地球人の脳と心臓を持つイルトと純地球人のエアには我々に無い何かがあるのか?
各々の考えをしながら墓場を進む。
その考えを遮るが如く、一つの影が現れた。
二人の考え事は、その声に止められた。
「隕九▽縺代◆……」
この世界、この宇宙には五つ広く普及している言語がある。その五大言語のうち三つも話せればこの宇宙で言語の問題に悩む事はない。 宇宙政府が普及させた数少ない功労である。
しかし眼前の亡者の言語はどれでもない言語かどうかも怪しい言葉を呟く。 泥に塗れ、捻れて歪んだ異形。
まさに亡者と言うに相応しい存在がいた。
そして、その姿に二人は見覚えがあった。
「貴様……クルエル司令!」
「俺も知ってるぜ、悪名高えからよ……!」
今二人の前に立ち塞がった亡者は元デスモ帝国のコマンダーである。 侵略の際、不必要な弾圧や過剰な虐殺を好み行う事から一個人として指名手配されていた。
当然デスモ帝国と戦っていたエンドにとっては知った敵だった。
「ここにいるって事は!」
「ああ、僕が倒した! なのに……いや、こんな場所ならそういう事も……! 化けて出てきたか!」
二人は臨戦体制を取る。 幽霊で怖いという気持ちはあるがそれより以前から知っている明確な敵に対して戦意の方が勝った。
「繧ィ繝ウ繝峨∝セ�▲縺ヲ縺�◆縺樞ヲ窶ヲ莉翫%縺晄→縺ソ譎エ繧峨@縺ヲ縺上l繧具シ�」
亡者は亡者の言葉を吐き続ける。
やがてその身がボコボコと沸騰して隆起する。 より怪物へと変化していく。 目を覆うような人体変形が終わった後、そこには五メートルほどの巨体をしたゴリラのような化け物がいた。
「こりゃあ……!」
「生身じゃ分が悪い! 走るぞ!」
キオンとエンドが駆ける。 怪物は咆哮を一つ上げ、二人を追った。
一方小屋の地下。 黒太陽墓場の惑星内部。
カロンの舟、プルトーラ号の出港用地下ドッグに三人はいた。
「!」
「どうしたんですか? カロンさん」
「ん〜この感じ、
「出たって……」
「お化け」
「ええっ!?」
「はは、ホントは
「エンドさんとキオンを助けなきゃ!」
「りょ。 折角だから手伝ってくれる?」
「勿論! ……イルト?」
「……なんだ? この感じ……
ん?ああ! 行こう!」
「うぃ〜
そろそろ炉心もあったまって来たし……
みんな! 黒舟プルトーラ号、出すよ!」
広い操舵室でカロンが舵輪を握りイルトとエアは計器類のチェックを手伝う。
黒ローブ達が最終チェックを終え退避する。 黒ローブの一人がサムズアップをしてカロンも応える。
黒太陽墓場、影の惑星。
イルト達が入った門や霊園とは客の星の裏側で地面が裂ける。地響を鳴らし、暗黒の宇宙にその身を溶かす漆黒の
一方その頃エンドとキオン。
怪物を撒ききれずタランドゥスとギュグエースを目視できる所まで来たものの、既に何発か攻撃を喰らいピンチの状況であった。
「畜生……亡霊にくれてやるような命じゃねえってのに……」
「貴様の様な外道に逆恨まれて死ぬのは御免被る……!」
「豁サ縺ュ豁サ縺ュ豁サ縺ュ豁サ縺ュ」
怪物は相変わらず
「エンドォ!!!」
(これは……死ぬか!?)
最後を覚悟するエンド。しかし!!
ズゥドォォォォォォォォォォン!!!
怪物が何かに潰される。
キオンとエンドが上を向くと、ギュグエースがいた。
ここは墓場のゲート前。停留させておいた場所からは距離がある。誰かが動かした? そんな訳はない……なら
「ギュグエース……」
エンドがギュグエースを見上げる。
ギュグエースは何も言わない。ただ、スカーレットとマゼンタの西洋鎧の様な装甲と一本角が、不器用に光るのみであった。
怪物はまだ生きている。 ……いや、既に死んでいるのだからこの言い方は正しくない。 死にきっていない。 グググとギュグエースの潰した足の下で持ち上げようとしている。
「今の内に乗るぞ!」
「おう!」
(自動でパイロットの危機に守りに来るとは、矢張り普通のスペースマシンとは違う……)
しばらくギュグエースとタランドゥスで踏みつけていると、プルトーラ号も合流してきた。
「感覚だとこっちっぽいけど〜」
「あっいました! ギュグエースとタランドゥスが動いてます!」
「俺が声掛ける!」
イルトが手元のマイクを手に広域回線モードにして喋る。
「エンドさん! キオン! 無事ですか!?」
やたら大きい声で艦橋から響くイルトの声。
「おう! てめえら遅えぜ!」
「そんな口叩けるなら大丈夫そうだな!」
「へっ!」
「二人ともその舟に乗っているのか?」
「そうだよ〜! これはあたしの黒舟!
これで死念獣を祓えるよ!」
「なら頼む! さっきから何度か強めに踏んでみたが消滅させられない!」
「えっ、足元にいるんすか!?」
「おっけ〜! エンドくん、合図したら上空に蹴り上げて!
イルトくんは霊光波砲の射撃準備、エアちゃんターゲットロックよろ!」
「「了解!!」」
「じゃあ行くよ〜!」
「しゃあ!」
ギュグエースが足元の怪物をサッカーボール掬いの要領で怪物を上へ蹴り飛ばす。
怪物は満足に抵抗できずにそのまま吹き飛ぶ。
「今っ!!!」
「ターゲットロック、レンジ、エネルギー、オールOK!」
「霊光波砲、照射ぁっ!」
プルトーラから一筋の閃光が撃ち放たれ、怪物に直撃する。
「縺弱c縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺�」
怪物は低く轟く唸り声を上げて塵になって消えていく。
「一件落着! だね〜」
こうして亡者は黒き星の土へ帰った。
イルトとエアとキオンはほっと胸を撫で下ろした。
エンドは一人。
(今の僕はもうお前たちを倒した事に迷いはない。
だが、僕もいつか魂となって宇宙に還るのだろう。
それでも僕には仲間がいる、友がいる。
僕が還る場所は、ここじゃない)
一人、深く想った。
こうして、黒太陽墓場での一件は終わった。
「さあ、そろそろ行くよ〜!」
通常空間に帰してもらうついでに、カロンも途中までついてくる事になった。
曰く「お邪魔じゃなけりゃ是非是非〜!」とのことでおしかけどっこい参加してきた。断る理由もなかったのでお世話になる事にした。
アイガイオン、ギュグエース、タランドゥスをプルトーラ号に積み込み黒ローブ達に挨拶をして。
「さぁて、目指すは表宇宙は天の川銀河、太陽系惑星地球!」
「ノリノリですねカロンさん! 宜しくお願いします!」
(ギュグエース……)
「ったくひどい目にあったぜ……」
「そういや、エンドさんアイガイオンの事なんですが……」
「ん?」
一行は拾った命で相変わらずそんな会話をしている。
「じゃ行くよ〜。 れっつ、ごぉ〜!」
こうして黒舟は生ける者を乗せて、暗黒空間から飛び立つのだった。
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