Chapter_6 loSTARticle
「だーかーら! ついてくんなよ!」
「そう言わずにぃ! 仲良くやろうぜぇ!?」
地球を目指すイルト、エア、エンドの一行は宇宙政府軍警察の検問を超えた道中でキオンに付き纏われていた。
「一方的にてめえの身の上ぇ話しやがって……そんなに修行の旅がしたいんなら一人で行けばいいだろ!」
「寂しいだろ!!!」
「このやろっっっ……!」
「俺はどうしても強くなりてえんだよ!! そのためには武者修行だろうが!」
「知らねぇよ! 勝手に強くなって認めてもらえたら良いだろバカ!」
「バカとは何だ分からず屋!」
「お前だろ!!!」
現在、イルト達……というよりイルトが宇宙を進みながら相手をしている。 宇宙政府の人間である事、自身の成り立ちや付き纏う理由などはこの調子で勝手に捲し立て喋っていたのでわかったが……
「宇宙政府の人間は信用できないんだよ!」
「なんでさ!?」
「俺らは宇宙政府が宇宙海賊を一方的に攻撃してるのを見たんだ! それに、Dスターで暮らしてた頃から宇宙政府の人間はいけ好かない奴多かったし!」
といった感じでイルトは警戒しきって突き放していた。 エアは前者自体は納得していたが、後者に対しては知らない。 譲歩しても良いのでは……そこまで嫌悪するほどでは……という元来の優しさからくる戸惑いで声を出せずにいた。
エンドは黙って見ている。
「大体武者修行するのに……」
イルトのそんな声も聞かず考え込むキオン。
(しかし宇宙政府そんな事もやってたのか……基本的に宇宙海賊に対しちゃ見つけたらしょっぴく程度で潰しをするなんて……
宇宙政府が一枚岩じゃねえのは体感やルウの口ぶりから感じてたがそこまでいってんのか? 抜けて正解だったな……いやルウはそれまで見越して俺にタランドゥスを持っていかせるように? タランドゥス級の性能のスペースマシン量産したら宇宙政府と軍警察が更に力付けるから……)
敵わねえな、と頭をかくキオン。
「こらぁぁぁっ! 聞いてるのか!?」
イルトの怒鳴り声で気を戻す。
「おっとすまねえ、他にはどんな旅してきたんだ!?」
「あぁっもう!」
イルトとキオンの言い合いは続く。
アイガイオンは度々タランドゥスを振り払うように手を振り回すがタランドゥスは持ち前のスピードでさっさと避けてくっつかない程度の距離で付き纏っている。
「ふふふ……」
エンドが笑いをこぼす。
「!?」
「すまない……おかしくって……
確か君達の掛け合いみたいなのをコントって言うんだっけかな……兄弟喧嘩みたいだ。
彼、乱雑だが性根としては悪い人間ではなさそうだ。 一度腰を据えて聞いてあげてもいいんじゃあないか?」
咳をはらってエンドが余裕を持って言う。ギュグエースはアイガイオンとタランドゥスの後ろを離れずついてきている。
「僕が……」
「俺が……」
「こいつとぉ……?」
モニター越しにアイガイオンを、タランドゥスを。
イルトとキオンが見つめ合う。
「……よろしくお兄ちゃん?」
「んがあああああっっ! 付き合ってられるかーーっ!」
キオンのおふざけに、イルトがキレた!
振り切ろうとアイガイオンが飛び出す!
「へへあ、負けねえぜお兄ちゃんよお!」
笑いながら追いかけるタランドゥス。
「うわわわ! 急発進しないでくださいよーっ!」
突然のGに慌てるエア。
「やれやれ……」
追いかけるエンド。
一行が爆走していたその時、エアが複座のセンサーで反応を捉える。
「これは……生命反応!?」
「「「!!!???」」」
エアの声に皆驚く。 こんな宇宙空間の真っ只中に生命反応がある訳はない、あるとしたら外銀河怪獣くらいである。警戒する一行。
反応は近くのスペースデブリ隕石群から来ていた。
「……漂流者だ!」
エンドが気付き叫ぶ。 今この宇宙は活発な外銀河怪獣と強行的な宇宙政府とせめぎ合う宇宙海賊のせいで治安が悪い。 何かあってトラブルに会う者もいるだろう。
「イルト!」
「ああ!」
二人の理解も早かったが、それより先にキオンのタランドゥスがと飛び出した。
「おい!」
「助けるんだろう!?」
キオンは手短に言い放つ。
「勝手な奴……助けるに決まってんだろっ!」
追うアイガイオン。
「あ、似てますね、そういう所」
「フッ……」
スペースデブリ帯に突入した一行。
「どこだ……!?」
キオンがタランドゥスのセンサーを全開にして探す。間もなくアイガイオンとギュグエースがやってきた。
「見つかったか!?」
「まだだ! スペースデブリが多くて見分けがつかねえ……!」
「僕に案がある!」
「旦那! 案って!?」
「対人的な性能は僕らのフィロソフィアスよりスペースマシンの方が上なはずだ、アイガイオンとギュグエースのセンサーをハイパーリンクさせて探知の性能も倍以上になる筈だ、それで一気に!」
「そんな事できるんですか!?」
「できる! 良いな! 宇宙警察の!」
「やってくれ!」
「良し!」
そう言うとギュグエースはタランドゥスの肩に手を乗せる。アイガイオンも真似て乗せる。
「機能を起動して加減は念じれば上がる!」
「機能ありました! 点けます!」
「こうか!?」
二体のフィロソフィアス・マシーンがそっとタランドゥスに触れると、タランドゥスの黒いボディが更に黒光り、発光する。大仰な機体シルエットが宇宙に更に目立つ。
「す、すげえ! これなら!
……いた!」
強化されたセンサーで瞬時に発見するタランドゥス。アイガイオンとギュグエースも後続して高速で反応元へ向かう。
「クソッ、もうバラけちまってて残骸しかねえ……」
残骸をどけながら探すタランドゥス。
「ん? これは……」
微弱な生命反応をセンサーが表示する方を見る。
そこには白い球体があった。
「これは……タマゴ?」
ゆっくり丁重に拾い、タランドゥスの両手で包む。
遅れてアイガイオンとギュグエースがやって来る。
「拾えたのか!?」
「生存者らしい人影は見当たらねえ……反応源は多分これだろうぜ」
「このままスペースデブリ帯にいるのは安定しない、抜けるぞ! その後ギュグエースのコックピットに移して検査をしよう」
「「了解です!!」
一行は漂流タマゴを連れ、スペースデブリ帯を離脱するのだった。
そうしてスペースデブリ帯を離れ、宇宙の片隅。
一行はギュグエース内のコックピットに集まっていた。
複座で操縦用に改造したアイガイオンやあくまで一般のスペースマシンであるタランドゥスとは違い、ギュグエースのコックピットは操縦室と言うには広く、一種のブリーフィングルームのような設備が整えてある。 エンド曰く「何かあった時の為に備えを増やしていくとこうなった」らしい。
拾い物はギュグエースの生体検査システムで詳しく調べることとなった。
検査中に四人が話す。
「しっかしフィロソフィアス……なんでもありっすね……」
「無機物創造装置、凄いよね。 設計図か本物が有れば大体の無機物は創造可能だよ。 設計図は財閥主だった頃に色々集めたから大抵は作れる。
今回は緊急だから作ったけれど、消耗品はなるべく創造せず市販品を使うようにしてる。それが世の中の理だろうしね」
検査結果を逐一確認しながらエンドが言う。
立ち位置としては、超大型パネルに表示されたデータを見るエンド、広いルームでロングチェアに座って待つエア、待ちきれずエンドの後ろを歩くイルト。壁にもたれかかり何かを考えるキオンといった状況。
「……」
キオンはスペースマシンの先ほどまでのパイロットスーツから、着崩し改造した宇宙軍警察の制服(デコり改造済み)に着替えていた。
顎に手を添え、ふむふむとイルトを見ている。
「……何だよジロジロと……」
「いや、俺は変装したあんたらしか見てないから……凛々しげな旦那がエンドさん、紺色作業着のてめえがイルト、そこの綺麗でセーラー服の嬢ちゃんがエア、と……」
「変装……? ええっ! じゃあ、あの時の職員さん!? そういえばその洒落っ気ついた感じ!」
「そうだぜ? ……えっバレてねえと思ってたんか?」
ショックを受けるイルトと驚きつつも納得するエア、やれやれと肩を竦めるキオンであった。
そうして他愛も無い話を続けていると、しばらくしてエンドが検査が終わったようで操作の手を終え一呼吸した後椅子に座り込む。
「「どうだった!!?」」
イルトとキオンが駆け寄り、その後ろをエアが歩いていく。エンドは深刻な表情で口を開く。
「……僕自身、受け入れ難い事だから覚悟して聞いて欲しい……あのタマゴは……
外銀河怪獣のものかも知れない……」
「「何!?」」
イルトとキオンは共に驚きの声を出す。エアは声も出ずに驚いた。
「これを見てくれ、これは僕が財閥にいた頃には調べたデータだがまずこれが外銀河怪獣が出す特殊な心拍値だ。
そしてこれがこのタマゴの中身の心拍値だ。 とても酷似している……」
エンドが表示された電子パネルを指しながら説明する。
「そしてこのタマゴから発せれらている電磁波は外銀河怪獣か情報交換時に出す独自のものと同じだった。 確かだろう。
……さて、どうするか……」
検査結果を言い終わり、エンドは黙る。全員に重たい空気が流れた。
「
その一言を発したのはキオンだった。
「外銀河怪獣は宇宙の脅威だ。余計なことになる前にやっちまった方が一番安全ではあるぜ?」
イルトはそんな言い方をと憤るが、自分たちが助けたのにな、と小さく自嘲する声が聞こえてしまった。
ぶつけどころのない握り拳が残った。
キオンが皆の意見を聞くという目で三人を見る。
「……深く関われば何があるかわからないがしかし……いや外銀河怪獣のタマゴという貴重なサンプルでもあるし……」
エンドは悩む。 理屈としては正しい選択肢が出てくるが、どれも一生命として扱った時に真っ当な物ではない。 焦り血が上るほど
正常な思考を押し分け混乱が
イルトは答えが出なかった。 出せなかった。 頭が回らない。
その理由はDスターでの生活にある。
イルトはゴミ星のDスターで、外銀河怪獣になんの対処の手段も持たず、いざやって来たのなら通り過ぎるまで例の居住ブロックで息を潜めているしかない日々だった。
謂わば外銀河怪獣は降って湧く災厄そのものというイメージが根強くある。 アイガイオンを操縦できるようになった事で多少和らいだが。
訳がわからない。 混乱状態であった。
沈黙に包まれるギュグエース内部。
「あのう……」
エアがおずおずと言い出る。三人が顔を向け息を飲み言葉を待ったその時。
ボガァァァァァァン!
「ぐわっ!?」
エンドは咄嗟に機体制御に取り掛かり、キオンは外を見る。
すると周りには宇宙海賊らしき、ガラの悪そうな機体が八、九機ほど取り囲み、奥には艦も見えていた。
「そこの緋色と蒼色の機体! そして周りの! パイロットは二色のやつの中に全員いるのは目撃している!
今拾ったのを渡せ! それは俺たちの獲物だ!」
無線のオープンチャンネルで一方的に叫ぶ声。 周囲には鬼のマーキングがされたスペースマシンが周囲を取り囲んでいた。
「どうするよ!?」
キオンが叫ぶ。 キオンとしてはこんな所で死ぬ訳にはいかない。 なんとかタランドゥスに移り迎撃しなければならない。 タランドゥスを破壊されれば自分は力を失うのもあるし強くなってルウに認められるという自分の約束も果たせなくなるのだ。
その上でタマゴの処置は、最早どうでも良いものであった。
「…………」
エンドは次の攻撃に備えてギュグエースの体感連動グローブをはめている。 自然とイルトとエアに答えは委ねていた。
無駄になるシステムをオフにして、一瞬の隙を見つければ高速動作で撹乱する為にエネルギーをギュグエースの機体の全身駆動に回す。
正面にいた機体が銃を向ける。
「返事ィ〜?」
冷や汗をかき、固唾を飲むキオンとエンド。
「……アンタら! タマゴを何に使う気だ!」
イルトが叫ぶ。 なんとか時間を稼ごうと思った。
オープンチャンネルなので無線通信を開いていれば相手にも聞こえている。 取り囲む機体達はあぁ? と唸り応える。口々と聞こえる相談と汚い言葉遣いが彼らを宇宙海賊の中でもゴロツキの方である事を認識するのには十分であった。
「……あぁ、てめえらもしかしてただの通りすがりか? 変な機体だから宇宙政府の特殊部隊かと思ったが……」
奥から頭らしい、赤黒い迷彩色のスペースマシンが出てきた。
「手荒にしてすまねえな
頭らしき機体は身振り手振りして言う。
「俺らはそいつをぶん取り躾けて戦力にしようと思ったんだが、宇宙政府のやつら厳重に管理してて手が出せなかった。
だァがようやく宇宙政府の本星まで移送するという狙える機会ができた。 で、襲って部隊は皆殺したが肝心のブツを取り逃がして今よ。 長いこと狙ってたんで皆ァ血気たってたもんでな。
渡してくれりゃ危害は加えねえよ」
取り囲んでいた機体のあちらこちらからも声がする。その言葉は、悪意に満ちていた。
「今度の
「どうせ孵ってもどうせ化け物になるなら奴隷に育てあげてやりゃ役に立つしなあ!」
「宇宙政府でえ実験三昧されるよりマシじゃねえか?」
「そうそう! モルモットか奴隷かなら死ぬかもしれないモルモットより働けば丁重に扱われる奴隷のがマシだよなあ!」
ヒャハハと気色悪い声が響く。
頭らしいスペースマシンのパイロットが諌める声が聞こえる。
イルトは腹を決めた。
エアは珍しく怒っている。
「さあ、さっさと「渡しません……!」あぁ……?」
エアがはっきりと応えた。
「確かに私達も外銀河怪獣と戦いました。撃破しました。ですが、それは生きていく上で避けられなかった
しかし、まだ生まれてもいない命を戦いの道具にしようとするなんて……
それは、やってはいけない事です!」
それはエアの我儘とも取れる主張、脆い倫理の思考に基づいた言葉だ。ゴロツキ達は何を言っていると訝しみ笑う。
しかし一行の心はその言葉で決まった。
「誰にも生き方を捻じ曲げる権利なんか無い……!」
「そういう事だ、すまない。 このタマゴは我々で保護し然るべき所へ戻させてもらう。 君達には渡せない……!」
タランドゥスは五歩分は引き、我関せずという態度を取っていた。やがて対面はアイガイオン&ギュグエースVS宇宙海賊のゴロツキ九機&宇宙艦という構図になっていく。
(こいつら……)
正直、キオンはタマゴを渡してこの場を切り抜けると思っていた。 所詮はそんな奴らだろうという見くびりがあった。
しかし違った。 世間知らず、礼儀気取り。 筋を通す生き方は、こんな世の中じゃ苦しいだけだ。 しかし、こいつらはやろうとしている。
「そうかいそうかい……」
気色悪い声のパイロットが言う。
「じゃ死ねえ!」
ギュグエースに向けてスペースピストルを向ける機体。
「ッ!」
発泡する瞬間、手首を掴み直撃しないようずらすギュグエース。
「オオッ!」
そのまま力任せに固まっている方へ投げつける。
「うわゃっ!?」
怯む宇宙海賊達。
「今だ!」
ギュグエースが強く発光する。目を眩ます宇宙海賊の隙を見てタランドゥスとアイガイオンを引き離脱する。
ある程度距離をとり、イルトとエアはタマゴを持ってアイガイオンへ、キオンはタランドゥスへ戻る。
「エア君、よく言った!」
「き、緊張しました……」
「さぁ来い! そう簡単に僕らをやれると思うなよ!」
宇宙海賊のゴロツキ達へ向き直るギュグエースとアイガイオン。 敵はすっかり体勢を立て直して武器を構えている。 無線越しにつけ上がりやがってなどと怒声が聞こえる。
「アルファルドならお前達のような手はしない……あいつはあくまで自分の力で道を切り拓く……
お前たちのような宇宙海賊の誇りのない奴は、アルファルドに変わって僕が倒す!」
「エア、行くぞっ!」
「うんっ!」
三者の意思は重なり、宇宙のゴロツキ達との戦いが始まった。
機体性能ではフィロソフィアスの秘めたる力を運用しているアイガイオンとギュグエースが勝る。
しかし、ゴロツキ達は手慣れている集団での囲い込みでアイガイオンとギュグエースを追い詰めていく。
「いくら強え武器だせようが!」
「くっ!」
「どうしたどーしたてんでアマちゃんじゃねえか!」
「腰が入ってねえーぞぉ!」
「があっ!被弾具合は!?」
「まだやれます!索敵、エネルギー放出は私に任せてイルトは!」
「わかってる! ……だが、当てにくい……!」
固まった所へ集中攻撃するいつもの戦闘スタイルが通じない。 常に細かく周りを取りつかれ攻撃が当たらない。 多勢に無勢。
三人は宇宙戦の厳しさを強いられていた。 地に足つかず、泡を掴む戦い。
それでもかろうじてエンドは対処しているがジリジリとイルトとエア、アイガイオンは着実に攻撃を受け装甲が傷付く。
形勢は一行の不利だった。
それをキオンは側から見ていた。ただ見ていた。ただ。
(俺の求める強さは、強い奴は、こういう時……!)
バシュウゥゥゥン!!
ビームの閃光が戦闘を止まらせる。
流星が、宇宙を泳ぎ裂いた。
「何!?」
「来たのか!?」
突撃してくるタランドゥス。黒光るその大仰な姿はゴロツキ達を怯ませる。
「おらあっ!」
すれ違いざまに腕部から発生させた光刃で二機の脚部を切った。
「上半身があればバーニアとコックピットは生きてんだから帰れる! 退けよや!」
「加勢してくれるんだな!」
「違う……」
「何!?」
「加勢
俺は今、本当に心からあんたらの旅について行きたくなった! 他の誰でもよくない、あんたらが良い!」
「巡査君……」
「お巡りさん……」
「その呼び方は今はもう違う。 キオン。俺の名はキオン。改めて、よろしく!」
「へっ……こちらこそだぜぇぇぇぇぇぇっ!」
宇宙政府の虎の子、黒光るタランドゥス。
フィロソフィアスマシーン、緋色と蒼に光るギュグエースと三原色に光るアイガイオン。
三機が揃い敵に挑む。
形勢は一気に逆転する。
ゴロツキ達のスペースマシンとタランドゥスの性能は段違いであり、翻弄しようとするスピードに難なく追いつき撃つ。斬る。 慌てふためく所をアイガイオンが捕まえて殴る。 蹴る。
「こんなはずでは……!」
「は、離せ……!」
「離さない! 聞け!」
ギュグエースは拳をコックピットに置いて脅しながら言う。
「どんな目的があろうと、その為に手段を選ばなくなれば達成してもそこに栄光はないんだ……覚えておくんだな!」
その言葉はデスモ帝国と戦ったエンドの教訓と戒めが重なり、強くドスの効いた声となった。
そういうとスペースマシンの脚を掴みフルスイングの要領で艦を投げ飛ばす。
「くああああああ!」
「頭ァ! やべえ撤収だ!」
一人がそう言うと、残りの機体達も蜘蛛の子を散らすように去っていく。 下半身がオサラバした機体は無事の機体が牽引していった。
ゴロツキ達が退散していく様を、一行は追い討たず見ていた。
数分後、ゴロツキ達が完全に去った事を確認して一息付く一行。
「宇宙政府の次は宇宙海賊達にも睨まれそうだな……ああいう輩は、すぐ噂を広める……」
「構いませんよ。 私達は、これからの自分に誇れる事をしたんです」
「これからの自分か、そうだな……」
しみじみ呟くエンド、イルトエアの三人。
「さて旅を続けようぜ! 目指すは地球なんだろ? その道中でそのタマゴもどっかの外銀河怪獣に返してやらなきゃ!」
「お前が仕切るな!」
空気を変えるキオンの発言、イルトが返し言い合い。
それを呆れて笑うエアとエンド。
こうして、地球を目指す旅に新たな仲間が一人加わったのであった。
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