同意か、不同意か!!!
立花 優
第1話
「裁判長、異議があります」
「被告人の発言を認める。で、反論したい事は何ですか?」
すると被告人の山崎真一は、弁護士に向かって、
「アレを、皆の前で、音声拡声器で流して下さい」
それを、聞いて、弁護士は、カバンの中から、デジタル・ボイス・レコーダーを取り出した。
音声拡大器に繋ぐと、嫌らしい雰囲気の、被告人と被害者の、二人の会話が、法廷に流れた。
◆ ◆ ◆
「ねえ、渚ちゃん。僕たち、付き合ってもう、1年以上経っているし、そろそろやらせてくれてもいいんじゃ無い?」と、被告人の山崎真一は、恋人の浜辺渚に、それと無く、イヤはっきりと聞いているのだ。
何しろ、令和5年7月13日から、従前の、「強制性交罪」は、「不同意性交罪」に、罪名が切り変わり、その他、諸々の改正もあったのだ。
特筆すべきは、恋人同士は勿論、例え、夫婦間であっても、同意無き性行為は厳罰化された事だ。
しかし、今回のこの事件が、異常に裁判が長引いたのには、理由があったのだ。
それは、法廷内での、二人の会話を、どう、解釈するかで、大きく罪状が変わってくるからであったからだ。
行為に入る前に、被告人の山崎真一は、次のように言ったのだ。
「もう、性欲が我慢ができない。でも、同意無き性行為は、不同意性交罪になると言うらしい。
で、僕は、浜辺渚チャンに、聞いて見たいのだ」
「ねえ、一体、何を聞くつもりなの?」と、アンニュイな反応の浜辺渚の声が聞こえる。
「つまり早い話、チャンとアレを付けて、先っちょだけ、入れさせてくれないか?」
「ホントに先っちょだけよね?それなら、アソコに傷も付かないかも……。
これでも、この私、まだ未経験者なのよ。大切に扱ってくれるなら、まあ、先っちょだけなら、OKしようかな……」
◆ ◆ ◆
ここで、検察側が、即、反論に出る。
「裁判長、異議あり」
「反論を認める」
「今この場で聞いた、ここまでの録音内容では、被害者は、先っちょ、つまり、亀頭部分の一時的挿入までの同意は、あったとは理解できます。
しかしながら、その後の被害者の被害届けには、某産婦人科医の診断書が添付されています。
それに、よれば、被告人の男性器は、被害者の内部の最深部まで、挿入され、なおかつ被害者は、内部裂傷まで、起こしています。
私ら、検察側としては、この診断書をもって、不同意性交罪の適用を求めます」
「異議あり」と、弁護士が手を上げる。
「犯罪の構成要件に、犯罪実行犯の故意が必要です。
裁判長、先っちょまでさえ入れれれば、男性は、本能的に、奥まで入れるのは、自然の摂理です。これを、犯罪の故意と果たして言えるでしょうか?本能に基づく条件反射なのでは!
つまり、ここに実行犯の故意は、存在してないと断言致します。
つまり、私から言わせれば、被害者が、先っちょ部分の挿入の一部を同意していた段階で、ある程度の事は、想定していた……つまり、この段階で、不同意性交罪の犯罪構成要件は成立しないの事になるです。
その直接証拠とまでは言えませんが、二人共、ラブホで行為に至るまで、約1時間、モザイクがかかっていたとは言え、挿入行為を繰り返すいわゆるエロビデオを、ラブホの液晶テレビで見ています。
これを、見てさえいれば、一旦、先っちょでも挿入されれれば、最後まで押し込まれる事は、容易に想像出来ます。
私は、以上の事全てから類推して、不同意性交罪における、被害者側の同意はあったものと考えます」
すかさず、検察側が反論する。
「しかし、裁判長、被害者は内部裂傷まで負っています。この事実は、動かせません」
「いい年をして、馬鹿を言うな。被害者が未経験者なら、誰とやっても、同じ事だ」
この今回の、不同意性交罪についての裁判は、マスコミで大きく取り上げられた。
さて、読者の皆さんは、どのように、考えられるのであろう?
◆ ◆ ◆
実は、この話には、後日談がある。
あまりに、話が大きくなりすぎて、被害者女性の、浜辺渚は、被害届けを取り下げ、事もあろうか、被告人の山崎真一と、即、結婚式を挙げた事だった。
マスコミも国民も、唖然とした事は、間違い無い。
同意か、不同意か!!! 立花 優 @ivchan1202
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