かわいいねと言ってください

 出産後もコロナ禍は続いていたので、娘が赤ちゃんの時はほとんど思い出やエピソードはありません。

 いや、身内のうちで話せるこんなことをしたーあんなことをしたー程度ならあるのですが、わざわざここに書けるようなことがないのです。


 何より、寝ることしかできない赤ちゃんのうちは

 自分から喋ったり動いたりできないので特別面白くないと言うのもあります。


 それでも、やむを得ず娘を連れて出かけなきゃ行けない時とか、野外の大きな公園に行ったりとかはしていました。


 これは、その時のことを娘が2歳になってからやっと会えた私の両親、娘にとっては祖父母の二人と振り返った時の話です。




 大前提として、私の両親は親バカです。


 私が赤ちゃんの時、どこかの店で出会った知らないおじさんに「この子は将来美人になるぞお」と言われたことを心底喜んでいて、私が物心ついてから大人になるまで、事あるごとに話して来ました。

「まあね、実際美人だからしょうがないよね」という一言を添えて。


 今の自分を客観的に見てみると、おじさんの読みはかなり甘かったようで、ここはおじさんを恨むべきなのか、期待通りじゃなくてごめんねとおじさんに謝るべきなのか、私は身の振り方を悩まなければいけない結果になったのだけれど、そんなことはまあ良くて。


 私もその血を引いているので、それなりに親バカです。


 両親は、初めて孫に会ったその席でも、

「緑はね、赤ん坊の時に知らないおじさんにかわいいね、将来は絶対美人になるよーって言われたのよ!」なんて言い出して、私の前ではまあいいけど、旦那の前ではやめてくれよと思いながら聞いていたのですが、「娘ちゃんも、出かけたらかわいいねーって言われるでしょう?」と聞かれて、私は笑ってしまった。

 嘲笑うかのように、鼻で。




「言われるに決まってるじゃん。出かけるたびに数えてるよ」




 解説すると、娘はとてもとてもかわいいので、出かけて知らない人の目に入ったら「かわいい」と思われているのは当然である。

 しかし、恥ずかしかったり、少し遠かったりして声をかけられない人もいるだろう。

 それでもかわいいと思う気持ちを抑えられず、わざわざ「かわいですね」と声をかけてくれた人は「本日は○○人いました」と集計を日々しているよ、という意味です。




 これを聞いて、我が両親は爆笑していた。




 そしてその後は事あるごとに「あれは笑ったよね、緑が娘ちゃんがかわいいって言われた回数数えてるってやつ。親バカすぎる!」と言われるようになりました。



 両親の親バカ具合も相当だとは思っていましたが、私はそれを優に超えていたようです。笑っちゃうね。

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うちの子育て日記 緑ノ池 @midorino-ike

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