うちの子育て日記

緑ノ池

コロナ禍ど真ん中出産

 現在3歳の娘がいます。

 その3年前は、コロナ全盛期。


 彼女が、コロナ禍真っ只中に誕生した時のことを振り返ります。





 妊娠が判明し、エコーを見るために旦那同伴での妊婦健診は、2ヶ月目くらいで中止となりました。


 コロナがめちゃくちゃ猛威を払い始めたからです。


 当時はまだ不明なことばかりで、妊娠中にコロナに罹ったらどうなるの?みんな死ぬの??みたいな感じでしたから、産婦人科でももちろん厳重な警戒体制がとられていました。


 エコーは見れなくても、私が通っていた産院ではSDカードに動画のデータを保存してくれたのでその点は問題ありませんでした。


 問題は、出産時です。


 旦那は立ち会う気満々でした。


 しかし、私は立ち会ってほしくない派でした。


 なぜ立ち会ってほしくないかというと、旦那は医療ロボ大好きな変態だからです。


 旦那は大学時代に医療ロボットの研究をしていて、今もそれに掠っている(本人は全然違うと言っていますが、素人の私には同じ方向性のないように思える)仕事をしているのでとても世の人々の役に立っている誉高い仕事人だと思っているのですが、どうしてか変態なのです。


 初めて妊婦健診に同行し、診察室に通されて私の股を隠すカーテンの手前でエコー映像が映されるまで待ってる間、まあきょろきょろと狭い部屋を見回して、わぁー、すげーと言わんばかりに目を輝かせていました。


 その時はキョロキョロすんなよーくらいに思っていたのですが、帰りの車で「診察室の設備すごかったね!」「天井に機材ついてたけどあれって診察で使うのかな?」「分娩台もすごそうだな〜」とかめちゃくちゃ1人で盛り上がっていたので、


 あ、こいつは分娩室入れちゃダメだ


 と思いました。



 その後、お腹の子も大きくなり、性別も分かり、いよいよ出産の時どうするかの話をする時が来ました。


「立ち会いは絶対しないで」


 え〜なんで〜と言われ

 私は「だって機材ばっか見てやばい奴だと思われるじゃん」と茶化して返してしまいました。


 本音は、命懸けで生まれてくる子、出産する私をそっちのけで機材を見るために分娩室に入られるのが悔しかったからです。


 なんとなく私も素直になれず、夫には冗談で拒否している妻に見えていたことでしょう。



 しかし、今はコロナ禍です。


 診察に同伴もNGなのにそもそも立ち会い分娩室なんてできるのでしょうか?



 まあ、私は立ち会いNGなのでできるできないなんて気にしてはいなかったのですが、病院からも特別事前に知らされることはありませんでした。



 その理由は、私が予定日よりめちゃくちゃ早く破水して、正産期(妊娠37週以上経過し、それ以降であれば早産扱いにならなくなる赤ちゃんが産まれて良いとされる期間)に入って最初の健診を受けていなかったからかもしれません。



 破水したのは土曜日の夜中の2時。


 なかなか寝付けずベッドでもぞもぞしていると、お腹から バチン! という振動というか音というか、とにかくそんな感覚があって、それから数十分後、ジョボ


「あ、破水したかもー」


 慌てて起き上がる旦那と、ゆっくり起き上がる私。


 足を動かすとじょぼじょぼと羊水が出てくるので、なるべく足を開かず、それでもじょぼじょぼするし、全然進まないしで後半は股を手で押さえて爆速でトイレに、生理用ナプキンのどでかいやつを当てて、産院に電話。


「破水したみたいなんですけどー…」


 即、入院。



 正産期に入っているのに正産期に入ってる人が受けてる健診が済んでないのでドタバタで私と旦那のPCR検査、お腹にベルトを巻いて心拍確認、いい感じの個室に通されて、


「まあそのうち陣痛来るから!」


 と立ち去る看護師。


 ええええ〜となりながら、じゃ、と隣のベッドで眠る旦那。


 私は緊張とドキドキと動揺とお腹痛い気がする…?の気持ちで全然寝れず(多分)、朝、陣痛来たかも知んないっす!と看護師に報告し、先生の診断を受け、「早くて明日の朝っしょ!」と言われベッドに…。


 その後急激に腹痛が進み、一度看護師に子宮口の開きを診てもらう事に。


 ゴム手袋をした指にうがい薬のような消毒液を付け、股に差し込んで、指の開きで何センチか測るらしい。

 ちなみに、子宮口が10センチになったら全開で、赤ちゃんが出てくると言われている。


「んー、6センチかなぁ…診てみる?」


 ここで、後輩っぽい看護師

「はい!」


 ちなみに、この指突っ込んで広げて測るの、めちゃくちゃ痛い。私ずっと唸ってた。


 手をチョキにして、後輩看護師

「6センチですね…」 

 2人でお互いにチョキにした手を見比べる。


 ねえ、それ、2人でやる必要あった!?


「まだ産まれないと思うんですけど、もうすぐ先生来るので診てもらいますね」


 先生はなんか機械とか使ってくれるのかな?

「あ、はい…」


 先生到着。

「入れますねー」


 出た!チョキの指!!結局それかい!!!!


 私は3度も激痛に耐え、ありがたい「6センチですね」というお告げをいただいた。


 この時はいたずらに指を突っ込んだ彼ら(特に2人目の看護師)を恨んだのだが、結果的にこれが良い刺激になったようで、この後急激に陣痛が進み、先生の読みが大幅にハズれ、破水当日の夕方に分娩台に上がることに。



「緑さん、PCR検査の結果まだ出てないんだけど、旦那さん立ち会いどうしようか?」


 どうしようも何もできないだろ、を飲み込んで

「しないです、しないんでいいです…」

 ※腹痛すぎてナースコール押しても声出せなくて数秒固まってた私にそんなしゃべらすなやの気持ち(ちなみに、一言でもう無理限界です産ませろを伝えられる言葉は「いきみたい」です。これから出産される方はご参考にされてください)


「そう…」と立ち去った看護婦が戻ってきて、いよいよ分娩室に連れてってくれるのかと思いきや


「先生がねぇ、コロナっぽい症状も渡航歴もないから、マスクして一言も喋らなかったら立ち会っていいって!」


 はあ?なんだそれゆるすぎねぇかオイ


「どうする?」


 え…検査結果がどうとかじゃなくて立ち会って欲しくないんだけど…でも旦那は立ち会いたいんだよね…でも私はやだし…でも記念すべき第一子だから立ち会いさせたあげた方がいいのかな…いやでもやだしな…てか旦那に聞いてくんね?私もう産めればどっちでもいいや


「す…好きにしてください」






 晴れて分娩台載せられた私。






 載せられた、というのは載ることを許されたという意味で、くっそ腹痛い上に破水して水じょぼじょぼ出てるのに自力で歩いて自分で台に上りました。超偉い。


 なんか色々機材つけられて、先生来るまで待っててねーと更にお預けくらった後、分娩室の扉が開いて先生来た!?やっといきめるぜ!と右を振り返ると








 旦那がいました。








 え、いるーー!!

えーーー!?本当にいるーーーー!!

てか本当に一言も喋んねーーーーー!




 ツッコミたい気持ちが溢れていましたが、そんな余裕もないですし、もうそっからはやっといきめる!解放の儀。

 サンシャイン池崎風蝋燭消しを披露し、いきみ方を褒められ、3回くらいいきんだら小柄なかわいい女の子が出てきました。


 臍の緒チョッキンして、子の身体を洗われ、タオルに包まれた子が私の横に載せられました。


 なんて可愛いの…小さい……可愛い……と、心の中では思っていたのに、発した言葉は


「全然ガ○ツ石松じゃない…」


 先生は「そうやで、赤ちゃんみんなガ○ツさんやないで、それぞれ顔ちゃうからなぁ」と。


 ちなみにこの先生、娘の性別発表の際は

「発射台付いてないで」と表現されていました。

 粋すぎる。



 そこで、ここまで完全に存在を忘れていた本当に無言で立っていただけの旦那が疲れ果てた私と子を顎下からローアングルで撮る大役(大罪)を終え、看護師さんに「パパさん抱っこしてあげて〜」となぜか記念すべき最初の抱っこを旦那に奪われ(大罪その2)、旦那は分娩台の上にそっと私のスマホを置き、去っていったのでした。




 本当に何も喋らなかったな。


 産んだら普通、頑張ったね!お疲れ様!ありがとう!とか言ってくれるもんだと思ってたんだけど、本当に何も言われなくて、それだけが引っかかっていた。

 喋っちゃいけないのはわかってたけれど。マスクのせいかそういう表情すら感じ取れなかった。



 私の直後経過観察も終わり、部屋に戻ってきたので旦那に聞いてみた。


「本当に何も喋らなかったね」


「喋っちゃいけないからね」


 そういうところは律儀にちゃんと守るんだこの男は。


「泣いてもいなかったし」


「泣きそうにはなってたよ!」


「結果泣いてないし。なんか言うことないの?」


「え…いや、感動したよ!」









 これは大罪(その3)です。



 本当に何のために立ち会ったのでしょうか?

 写真撮って抱っこするだけなら産んだ後でも良くなかったか?

 

 これはマスクしてるしてないは関係ないよな?


 そんなことをモヤモヤと今でも思い続ける出産でした。





 ここまで変態とかクソ男ぽく書いてしまったので旦那の名誉のために補足しておくと、私と子の退院後、私がぶっ倒れた時に対応できるように全部教えろ!とすぐに沐浴(赤ちゃんのお風呂的なやつ)のやり方を覚え、ミルクを作り、オムツを替え、時にうんち爆弾を受け、夜はシフト制で睡眠を取り、共に寝不足になり腱鞘炎気味になりました。

 その上家事は元々めちゃくちゃできる人なので、正直私がずっと寝てても問題ないくらいに全てこなしてくれました。


 子育てを「手伝う」とか言っちゃってるパパたち、これがイクメンだぞ。



 コロナ禍で当初予定していた里帰り出産は諦めての出産でした。

そうせざるを得なかったにしろ、しっかり夫婦で子育てをする時間をとれた事は結果的にとても良かったと思っています。


 その後、旦那の転勤に伴い一時的に単身赴任になってしまう前までは、うちの子は一度もパパ拒否をしたことがありません。


 これがマジで胸を張って言える、共に育児をした証です。



✌️


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る