第58話 美少女生着替え part2

「んじゃ、次はアタシの番ってことで。いいよな、カナタ」

「ふふん、もちろん」



 この2人、なんでさっきからちょっと競り合ってるの?

 2人のことを横目で見ていると、杠が俺の方を見てきゅっと口を噤んだ。え、何その表情。



「あ……あんまり、見ないでよね、キョウちゃん……」

「お、おう……?」



 海に遊びに来てるのに水着を見るなとは、トンチか何かか?

 頭の中で宇宙猫状態になっていると、そそくさと着替え用テントに入っていった。

 異性の俺がいる手前で緊張しているのか、随分と着替えるのが遅い。まあ、気長に待つか。


 ブルーシートの上で胡座をかく。右隣に奏多、左隣に九条が座り、その向こうに萬木が座った。

 唯一、まだ水着を着ていない奏多が、暑そうに胸元をぱたぱたと煽った。



「大丈夫か?」

「大丈夫。ちょっと蒸れてね」



 見ると、胸周りに汗ジミができている。谷間に汗で水溜まりもできていて、淫靡というか妖艶というか……正直、たまりません。

 いくら彼女とは言え、余りガン見するのも失礼か。

 なんて思っても、おっぱいの引力の前に男のスケベ心は力を増し、抵抗はまったくの無意味。頭を垂れてつくばうしかないのだ。おっぱい強し。


 横目で見ていると、俺の視線に気付いた奏多がにまーっと笑った。しまった。

 反対側の2人に聞かれないようにか、少しだけ近付いて胸元をより強調してきた。まあ、2人は2人で自分たちの世界に入ってるから、こっちは気にしてないみたいだけど。

 そっと目を逸らすと、俺の腕におっぱいを当ててきた。ちょ、熱の篭ったおっぱいの柔らかさがダイレクトにっ……!



「んふふ〜。ほんっと、京水っておっぱい好きだよね」

「き、嫌いな男なんていないだろ」

「だとしても好きすぎ。変態、えっち、スケベ♡ よわよわ理性♡ ざこメンタル♡」

「……どこで覚えた、そのワード」

「純恋さん」



 萬木ェ……。

 ジト目で萬木を見ると、察したのか笑顔でサムズアップしてきた。おのれ、男の純情をおもちゃにしやがって。……つっても、多分奏多から相談したんだろうな。



「どう、どう? 男の人ってこういうのが好きって聞いたんだけど、京水はこーふんした?」

「しない」

「なんでっ……!?」

「いつもの奏多が好きだから」

「……ばか」



 満更でもないのか、口元をによによさせてそっぽを向いた。可愛いヤツめ。



「俺が好きになった奏多は、メスガキムーブなんてしなくても十分クソガキだからな。今更そんなことしなくてもいいさ」

「えへへ、それほどでも。……あれ? 褒められてる?」

「褒めてる褒めてる」



 これが褒めじゃなくて何を褒めと言うんだ。

 ぽけ〜っとしている奏多にほっこりしていると、テントのチャックが開いて杠が顔の半分だけ見せた。



「お? ベニちゃん、どしたの?」

「ぅ……なんか、急に恥ずかしくなって……」

「何を今更……ほらほら、みんな待ってるよ」

「ちょっ、わっ……!」



 萬木が立ち上がり、チャックを全開にして杠を引っ張り出した。

 純白の肌に映える、黒い水着。しかも普通の水着じゃなくて、布が至る所で折り重なっているクロスデザインビキニだ。

 髪の毛の銀色とのコントラストがいいアクセントになっていて、全体的にセクシーだ。

 それになんと言っても、この胸。萬木以上、奏多以下の巨乳。身長の高さも相まって、ド迫力だった。



「うおっ。ベニちゃんエッッッッッ」

「小紅、大胆だね」

「攻めたねぇ、小紅ちゃん」

「うぅ……やっぱもう少し露出の少ないものにすればよかった……」



 見た目はバチバチのヤンキーっぽいのに、意外と小心者の杠は、自分の体を抱き締めるようにして身を隠す。

 うん、本当……目のやり場に困る。萬木以上に困る。

 目を逸らすか逸らさないか葛藤していると、杠が俺の方をチラ見してきた。

 キュッと唇を噛み、両手を後ろにして目の前に立った。上から下まで、余すところなく見せつけるように。



「きょ……キョウちゃん。……どうかな……?」

「ま、まあ……似合ってるぞ、うん……」



 奏多程じゃないけど、杠も昔から知ってる仲だ。中1の頃は、もっと身長が低くてペッタンコだったのも知っている。

 だからか、妙にドキドキしてしまう。俺、もしかしたらギャップに弱いのかも。奏多にもギャップを感じてるし。

 杠のインパクトに圧倒されていると、隣に座っていた奏多が跳ねるように立ち上がった。



「んじゃ、ラストはぼくだね。みんなをあっと言わせてあげるよ」



 ふふん、と鼻高々にドヤ顔を見せる奏多。

 いったい、どんな水着を選んだんだ?


 ────────────────────


 ここまでお読みくださり、ありがとうございます!

 ブクマやコメント、評価(星)、レビューをくださるともっと頑張れますっ!

 よろしくお願いします!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る