四日目 不思議なお客さん

男が現行犯で連れて行かれた、その日の午後。

 朝よりも随分客足が減り、のんびり出来るようになった頃、不思議な客がやってきました。

 二人組で、片方は不思議な格好に真っ白な髪の、小さな女の子。もう片方は、ぱりっとしたスーツを着た、右目と左足の無い男性でした。

「……この子にはクリームソーダ、俺はオリジナルフレーバーにプレーンのスコーンを一つ」

 物静か、と言うよりどこか威圧感のある男性の注文を受け取って、マスターに伝えるとき、ふと尋ねてみました。

「あの人、もしかして常連さんですか? なんというか、注文が手慣れているというか」

「あぁ、イーグさんは出張先で良く来てくれるの。遠い、本当に遠い国の軍人さんね。連れている女の子について聞くと面白い話が聞けるわ」

 軍人さん。なるほど、威圧感の正体はわかりました。が、連れている女の子については疑問だらけです。机に突っ伏しながら足をぱたぱたさせている姿はとても可愛らしいのですが、どことなく違和感を覚えます。

 なので、注文の品を持っていった時に、思い切って聞いてみることにしました。

「あの、イーグさん。マスターの出張先の常連だと聞いたのですが……」

「ん、あぁそうだ。――ふむ、あまり詳しく語るなと運び屋には言われているが……気になるのは、その子だろう?」

 顎でしゃくって見せた女の子は、美味しそうにクリームソーダを抱えて飲んでいました。

「さっき言われたように、俺は軍人だ。が、君の知る地図には載っていない国の出身でな。その子はうちの技術者たちが作ったロボットなんだ」

 なんと、ロボットなのですか。でも

「でも、美味しそうにクリームソーダを飲んでいますよ?」

「今、ちょうどその研究が行われていてな。偵察や諜報の任務の時に、小さな子供を連れて親子を偽るのはいいんだが、どうしても飲食をしないとなると悪目立ちする。そこで、飲食を可能にし、味覚を与えて、どんな不具合が出るか出ないかを調べているんだ。そこで、マスターにも協力してもらってるわけだな」

「なるほど。それでイーグさんも、マスターの紅茶が気に入って?」

「そうなるな。よく仲間たちに文句を言われるよ、一人だけいい思いをしてって」

「んー……でも、それはわかったのですけど、納得いかないことがあります」

「が、それは話すことが出来ない。トップシークレットなのでな。ま、いずれマスターか、運び屋本人から語られるだろう」

「むぅ、少し消化不良です」

「すまんな、これに関しては、うっかり漏らせば俺も二度とここへ来れなくなる。だから、許してくれ」

「まぁ、軍人さんは何より口が堅くないとダメですしね。これ以上は聞きません」

 この後、のんびりとお茶を楽しむイーグさんを眺めながら、もしかして今後もああいった不思議なお客さんが来るのだろうか。と考え、それはそれとして面白そうだからいいかー。と、残った仕事を片付けました。

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絢爛苛烈な家出娘 鈴音 @mesolem

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