第10話 戸村の悲劇 

戸村は、ブラジャーを付けていなかった。ブラウスを脱ぐと形のいい胸があらわになる。すでに乳首が固くとがっているのは、興奮しているのか、怒りのためか。どっちにしても薫にとってはどうでもよかった。

 ミニスカートのホックを外しファスナーを下ろす。足元に落としたスカートを足で拾い上げた。


 予想通りパンティーも履いていない、陰毛が黒々としている。あえて処理していないのだろうか、好みはそれぞれだろうが、薫は好きだ。


「来て、しましょ。どうせするなら楽しまなきゃ」

「ずいぶん物分かりがいいんですね、じゃ、まず横になって足を開いてください」

 戸村はあらがう気持ちがないみたいだ、脚を大きく開いてベッドに横になった。割れ目は思ったより奇麗で、ビラビラが大きくはみ出しているということもなかった。


「じゃ、お願いします」


 戸村にそのあとの意識はなかった。


「どこに置こうか」

「そりゃあ、決まってるじゃない」


 耳元で目覚ましが時計が鳴り響き、戸村は真っ暗な場所で目を覚した。そして自分が何か箱の中に押し込められていることに気が付いた。

 嫌だ、出して。彼女は暗い場所に潜在的な恐怖心があった。そうでなければ、今、自分が置かれている場所と状況を冷静に判断したはずだ。


 自分の横にもう一人誰かがいること、その人物の体温がじかに伝わってくること、外でかすかに人の声がすること、それらを考えれば迂闊な行動はとらなかったはずだった。


 戸村はいきなり立ち上がった。何かが倒れる大きな音。天井の照明が、目に入った。同時に女生徒たちの悲鳴が上がった。


 体育館での、全校集会。誰が招集したか知らないが、校長名で臨時に今朝行われることになった。教頭の机の上に校長名で指示があった。内容は先日の川村の件について校長からの話とあった。当然だれも疑わなかった。


 ところが時間になっても、校長は現れなかった。演壇だけは既に準備がされていた、いつもと少し雰囲気が違ったが誰もそこまでは考えなかった。

 彼女と、これも全裸の校長が、演壇にもされた段ボール箱に押し込まれていたのだった。


 いきなり表れた全裸の教師に、男子生徒たちは歓喜の声をあげた。

 教師たちも凍り付いた。誰も動くことはできなかった。

「きゃあぁー。誰か、誰か服を」


 自分の叫び声で目が覚めた、夢だった。

 なんて夢だと戸村は思った、同時に自分は今どこにいるのか。寒い、全裸であることは間違いなかった。星が見えた、外らしい。

 固い床に寝ていることに気が付き起き上がろうと脚を床につけた。


 が、そこに床はなかった。一気に心臓がちじみ上がった。自分がどこに寝かされていたのか理解した、どこかの建物の屋上だった。

 そこから真っ逆さまに地面に向かって落ちていく途中だった。

 校舎の窓枠が、自分の頭と逆方向にものすごいスピードで流れていく。

 地面がどんどん近づいてくる。

 叫び声をあげるにまなく自分の頭が地面に衝突した。頭蓋骨の割れる音を確かに聞いた。


「戸村先生、起きてください」

 自分は生きていた。というより保健室のベッドの上に横たわっていた。

「倉橋、玲の方?」

「はい、薫は、出すものだしたらさっさと帰っちゃいました。ひどいですよね、先生のことを穴としか見てないんですから」

 何か侮辱された気がして怒りがわいた。 

 玲が差し出したティッシュをひったくるように受け取った。


「どっちを選びます?」

「どっちとは」

 戸村は股間の後始末をしながら聞いた。どうして玲がここにいるのかという疑問は思い至らないらしい。


「全校生徒の前で校長と全裸で抱き合うか、屋上から飛び降りるか」

 戸村は背中に悪寒が走るのを感じた。

「どうしてそれを」

 夢なのだ、玲が、この娘が知っているはずはなかった。

「ね、先生、今起こっていること、これ現実だと思いますか」

 何を馬鹿なことを、そう思ったが、可能性がないわけではなかった。悪夢の続きかもしれない。


「心配しないでください、これは現実です、でも、わすれないでください、私と薫はいつでもあなたの夢を操れる」

「嘘よ、そんなことが」

「そうあなたに夢を見せたのは私」

 玲が、ニコッと笑った、その顔が戸村には悪魔に見え、彼女の言うことが真実に思えた。


「今日から、あなたは薫専用の穴、彼がしたくなったらいつでもどこでも足を開くこと、ま、いやならそれでもいいですけどね、屋上から落ちたら痛いでしょうね」


 玲はそう言い残すと保健室から出て行った。一人残された戸村は、ベッドの上で震え続けるしかなかった。

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玲と薫 らいとばーじょん ひぐらし なく @higurashinaku

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