受賞作VS添削例

滝口アルファ

第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト 短歌の部1首部門 受賞作について

最初に言っておきますと、

私は、残念ながら、

このコンテストに落選しました

(と思っていたのですが、

実際は応募方法をミスっていたようです)。

しかし、

いずれにせよ、

これから行う批評(添削)は、

引かれ者の小唄として、

ご覧いただけますと幸いです。


それでは、早速、大賞受賞作の短歌を見てみましょう。


生まれたとメールをもらう臨月のあなたが遠い惑星になる  中山史花


これはこれでいいのでしょう。

しかし、私は、まだ直せるのでは?と思いました。添削例を挙げてみます。


A 「生まれた」と4文字だけのメール来て臨月だった友は彗星  

B 花冷えに「生まれた」というメール来て臨月だったあなたは火球  

C 炎昼に「生まれました」とメール来て臨月だったあなたは火球  

D 「生まれた」と4文字だけのメール来て臨月だったあなたは銀河  


添削例A

時制を整えた、シンプルな添削です。

添削例B、C、D。

季節感があるほうが臨場感が出ますので、

例えば「花冷え」で春を、「炎昼」で夏を、「銀河」で秋を表現してみました。

原作の「遠い惑星」ですと、では「恒星」は誰なの?と突っ込まれそうなので、

ここは思い切って、火球や銀河に直してみました。

ちなみに、火球(かきゅう)とは、大きな流星のことです。

以上のように直すと、「臨月だったあなた」が、

より美しく、より儚い存在に感じられるのではないでしょうか。


次に、1つ目の佳作受賞作を見てみましょう。


灯の下にしらす捨てたん誰やねん目と目と目と目 閉じひん昼顔  みなくちてんれん


個人的には、好きな短歌です。

塚本邦雄の「聖ピリポ慈善病院晩餐のちりめんざこが砂のごとき眼」の

本歌取りでしょう。上手いと思います。

ただ、関西弁がどれほど効いているのか、疑問に感じました。

添削例を挙げてみます。


灯の下にしらす捨てたの誰だろう眼と眼と眼と眼 閉じない昼顔  


このように標準語にしたほうが、

この短歌の怪奇な美しさが、一層際立つのではないでしょうか。

もしくは別案としては、

結句の「昼顔」への飛躍(ここがこの短歌の最大の魅力なのですが)を諦めて、

思い切って「しらす」の描写に徹する方法も考えられるでしょう。

添削例を挙げてみます。


灯の下にシラスぶちまけられていてほのかにひかる眼眼眼眼眼眼眼眼  


こうすると、原作の爆発力はやや抑えられてしまいますが、

その代わりに、短歌としての安定感は高まっていると思います。


最後に、もう1つの佳作受賞作を見てみましょう。


妹が東京で七人になって減りながら帰ってきた餃子の日  くらやみお姉さん


これも面白い短歌です。

しかし、私は、韻律を整えながら、

もっと振り切れてもいいのではないかと思いました。

添削例を挙げておきます。


A 東京で百人になった妹が減りながら帰郷 餃子パーティー

B ロンドンで百人になった妹が一人で帰郷 闇鍋パーティー

C 1000人になった自分を消しながらパリから帰郷して姉とパフェ


いかがでしょうか。

このようにすると、イメージがクリアーになるのではないかと思います。

なお、Cの添削例は、妹の視点から詠んでみました。


以上です。








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受賞作VS添削例 滝口アルファ @971475

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