とある江戸時代の村の話後編
「続花札?聞いた事がないな、しかし酒を超えるとは興味深い。」
土衛門は酒よりも面白いと噂の続花札に興味津々であった。
青年は答えた。
「では、もしよろしければ奈多村にご招待致します。領主様もきっと気に入って頂けますよ。」
「素晴らしい、ぜひ伺おう。」
領主は内心ワクワクしながら馬に乗り、青年とともに村に向かった。
道中三つほどの村を見かけたが、どの村も
活気を失っていた。しかし、奈多村に近づくにつれ木々に装飾が施されており、なんだか浮かれた雰囲気を醸し出していた。土衛門自身、浮かれた雰囲気にあてられ、馬の駆ける音がこぎみよいリズムに聴こえてくるほどだった。
鳥居ではない不思議な半円状の門をくぐると
青年は突如馬から降り、
両手を大きく広げこう言った。
「ようこそ奈多村へ!」
と、同時にとても大きな笑い声が右手の小屋から聞こえてきた。
「なんだ、なんだ」土衛門は驚きながらも小屋の扉を勢いよく開けた。そこには多くの木札と紙札、そして土衛門よりも驚いた表情の村人たちがいた。村人たちの世代は幅広く、中高年はもちろん成人していない子供や女までいた。
「りょ、領主様!?」
村人たちには小屋から出ようとするもの、土衛門が誰かわかっていないもの、土下座するものと小屋の中は大混乱となった。
しかし、領主土衛門の力は絶大で土衛門が話出すと村人たちは一斉に静かになった。
「今、やっているものはなんだ?」
「干支揃えでございます。」
村人の一人である少年は答えた。
「続花札ではないのか?どういうことだ。」
土衛門は混乱した表情で質問した。
「続花札の中の干支揃えという遊戯なのでございます。もし、よろしければお教えいたしましょうか?」そう提案した少年を大人たちは勇敢な勇者を見るような目で見ていた。
「続花札には合計54枚の札があります。それぞれ順番があり、子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥猫 (ねうしとらうたつみうまひつじさるとりいぬいねこ)と干支の札が13種類あり、それらはさらに春夏秋冬4種類ずつに分けることができます。さらにそれに鹿が2枚入って54枚で構成されております。私たちはそれらを揃えたり、合わせたり、隠したりして遊戯をおこなっており、総じて続花札と呼んでいるのです。」村人たちの中には大きく頷きながら話を聞くものもいた。
少年は続ける、
「先ほどやっていた干支揃えを説明致しますと
続花札を鹿を除き、全て伏せ、順に2回めくり、また、裏にして元の位置に戻す。2回めくった札が同じ干支であればその札を獲得できます。札を獲得できれば、また続けて札をめくることができるといった暗記力が試される遊戯となっております。」
「なるほど、興味深いな。一度手合わせしてみたいものだ。誰かやらないか?」
領主もまた、この遊びにハマり
判断能力が鈍るということで領主も村人も皆
酒を飲まなくなった。
奈多村は後にこの続花札を販売し始め、
大きな利益を上げた。
これは
現代でトランプと言われるカードゲームの
成り立ちのお話である。
1日1小説(書く勢いで) mikasa @mikasa7Library
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