本作を読んで頭に浮かぶのは、日常のごく普通のありふれた、いつも通りの景色。カーテン越しに見る日向のような感覚です。それと同時に、“ありふれた景色”の中に湧き上がるザラザラした情熱、尖っているのにどこか不安定な感情が鮮明に浮かび上がります。例えるならこちらはマグマに似て、熱くてドロドロしているのに冷え固まるとあっさり石になってしまうもの。その両方があるから、どちらも輝いて見える。人とはそういうものだと感じさせてくれる作品です。