第106話 いつまでも続けて…🛤️5(悲しい時は……)

 今日の卒業式は、無事に終わった。

 いよいよ、ベルとのお別れだ。卒業生が下校した後、みんなで校長室に集まった。


 みんなと言っても、僕達防衛隊4人、玉佐間さん達4人、それに南部校長先生の9人だけである。もちろん、防衛隊のことは秘密になっているので、子ども達には知らされない。

 アンディ―&アンディスは、ベルの願いでもあり、いつも必殺のダブルキックを決めていたアンディスが顔を見せた。



「それじゃあ、これからベルフィール君の防衛隊卒業式を行います」


 厳かに南部校長は、式を始め出した。校長室には、ベルを中心に囲むように、みんなが笑顔で集っていた。

 ここ一ヶ月は、戦闘の度に僕が湿っぽくしていたが、最後ぐらいは明るく元気にベルを送り出したかった。だから、ここにいるみんなには、前もって笑って送り出そうとお願いをしておいた。



「今年度の防衛隊が、本校に決まってから、出向ということで、ベルフィール君にはとてもお世話になったね。

 私は、直接は関わることがなかったが、とても有意義な一年間だったと聞いています。

 全国校長会の会長としても、ベルフィール君にはお礼を申し上げたい。本当にありがとう」



 他の人達からも一人一人お別れのメッセージが贈られた。誰もみな、笑顔ではあったが、言葉に詰まる場面があり、その都度校長室を一時抜けることが多かった。


 僕からは、たぶん口を開けば、言葉より涙が先に出そうだったので、笑顔で握手をして終わりにした。



 最後に、ベルは目を真っ赤にしながら、それでも引きつった笑顔で懸命に話し始めた。


「あたしは、こんなに楽しい1年を過ごして、とっても嬉しかったよ。

 戦いの時だけじゃ……なくて、…………いつもみんなが助けてくれた。

 ……あたしのゴハンを……あたしのくらしを…………面倒見てくれた。

 …………ありがとう、そぅじぃ。

 それから、……みんな。

 あたしは、エルフだから人間の仲間は、すぐ居なくなってしまうんだ。

 …………だから……友達は作らなかった。

 …………今までもそうだったの…………でも、…………ここの…………みんなとは…………離れたく…………ないよぉぉぉ…………。

 もっと、ずっと…………グスッ…………一緒に…………グスッ…………居たかったよぉぉぉ…………ズズッ…………うぇぇぇぇ~~ん…………えぇぇぇぇぇん…………ヒック…………あぁぁぁぁん………」



「べるぅぅぅ~~そんなに泣くなよ~~ボクは絶対に忘れないから…………」


 僕は、努めて明るく慰めた。

 …………僕だって泣きたかったけど、僕が泣いちゃうと、折角のベルの卒業式が湿っぽくなってしまうんだ。

 でも、ベルはこれからまだまだ活躍しなきゃならない。

 

 その為に、僕は、今だけ我慢するんだ。




 その時、ゆっくりとベルの体が光り始めた。



「そろそろ、時間のようだ。……それじゃあ、ありがとう……ベルフィール君!」


 南部校長がそう言ったと同時に、一瞬光が眩く輝き、まもなく光が消えた時は、ベルの姿もなくなっていた。











「うわあああああああああああああーーーーーーんんん!……」





 僕は、その後、大声で泣いてしまった。



(つづく)

■□

ベルだって悲しかったのです。

https://kakuyomu.jp/works/16817330668420483875/episodes/16817330669455273432

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