ツンデレ幼馴染と「補修」
付き合い始めて1日目。
俺はアラームでも起きれないほどに朝に弱い。でも、この日は何故かアラームが鳴る前にパチリと目が覚めた。もしかしたら、真凛と付き合えたことに気持ちが興奮していたからかもしれない。
窓を見てみると、外はまだ少し暗かった。
いつも起きるときは賑やかな世界が、ほのかに暗く、しーんとしている。そんないつもと違う景色に、俺は別世界に来てしまったのではと錯覚してしまう。
(もしかして、昨日のメッセージも無くなっちゃってたり...いやいやいや、ないないない...)
そう思いながらも、なんだか不安な気持ちが湧き出てきた。
この気持ちを晴らすために、仕方がなく、そう、本当に仕方がなく、スマホを取ることにした。
スマホを手に取り、暗証番号を入力する。
ゴクリッ
謎の緊張感から、思わず唾を飲み込む。
ゆっくり、ゆっくりとアプリに指が近づいていく。そして、ついにアプリを開いた。
コレで昨日の写真がこの気持ちも晴れると思った。でも、
「嘘...だろ?」
写真も、メッセージ履歴も見当たらなかった..
「嘘だーー!!!!!!!!!」
俺は頭を抱えながら心の底から叫んだ。
〜〜〜〜〜
「薫、さっさと起きなさいよ。何回言えば起きれるのかしら?」
「嘘だ、嘘だぁ....むにゃむにゃ。」
「....ッ!いい加減に、」
「むにゃむにゃむにゃ....」
「しろッ!!!!!!!」
「ぐはぁ!」
急に腹にものすごい衝撃を喰らい、俺は思わず飛び跳ねた。
「いってぇ!!...ってアレ?なんで真凛がここにいるんだ?」
「貴方のお母さんにあげてもらったの。貴方がいつまで経っても起きてこないから、私が起こしてあげたのよ。」
「......」
さっきまで見ていたのは現実ではなかったのか?でもその割には妙に現実味があった気が..
「な、何よ?」
俺が黙り込んで、考え事をしていると、真凛が不安そうな、不思議そうな顔で質問してきた。無視しても可哀想なので、一応、大切なことを確認しとくことにした。
「なぁ、俺たち付き合ってるよな?」
「な、何よ急に!?そ、そうよ!昨日から付き合ってるでしょ!貴方から告白してきたんでしょ!?それをもう忘れるなんて信じられない!」
「だよなぁ...」
うん、彼女の説明で、なんとなく理解した。
きっと、俺が見た、あの恐ろしいものは夢だったのだ。そうに違いない。いやー、現実じゃなくて安心した。
(本当に、良かったぁ。)
俺は、生まれてきてから初めて、夢オチというものに感謝した。
〜〜〜〜〜
あの後は、いつも通りに支度をして、真凛と一緒に家を出た。登校中に、手を繋ぎたいと真凛に頼んでみると、彼女は顔を真っ赤にしながら、首をコクリと縦に振り、了承してくれた。
その後は、真っ赤な顔の真凛と手を繋ぎながら、横に並んで学校へ向かった。
正直な話。
あの時の真凛は、最っ高に可愛かった....
こうして、自分の席に座った後でも、手に彼女の温もりを感じる。キモいと思われるかもしれないが、そんなの関係ない。
今、俺は、この素晴らしい幸福感をを噛み締めなくてはいけないのだ。
「どうしたんだ?そんな幸せそうな顔して。」
俺が幸せを噛み締めてる時、不意に翔治に話しかけられた。
この素敵な時間を邪魔するな!
なんてことは言わない。だって、彼がいなければ俺は昨日、真凛と付き合えてないのだから。だから、彼を貶すのではなく、むしろ彼のことを崇めるべきなのだ。
「いや、実はですね。昨日、あの後、真凛と付き合うことができましてね。今日、手を繋いで学校に来たんですけど...
彼女の手のぬくもりがまだ残ってる気がして幸せだなぁって思ってたわけなんですよ。」
「うわ、キモいな。てか、なんでそんなですます口調になってんだよ。キモいぞ?」
(コイツ、人が下手に出てたら好き放題言いやがって...せっかく翔治の事を尊敬してたのにこの短時間で元に戻ったわ。てか、キモい2回も言うな。流石の俺でも泣くぞ?)
そんな事を思ったが、口に出すのは辞めておいた。今の俺がキモいのは承知しているから、実はあまり気にしてないし...
「まあ、俺がキモいのはいいんだよ。
俺は今日から毎日真凛とイチャイチャしてやる!たとえ、どんなことがあっても!」
「そういや、さっきは無視したけど、お前ら付き合えたのな。おめでとさん。」
「...ありがとう。」
「ずいぶん声が小さいな。」
こうも、正面から堂々と祝われると、なんか、こう、気持ちが落ち着かない。そのせいで、言葉が一瞬詰まったし、ボリュームも小さくなってしまった。
「ま、まあ、そんなことはどうでもいい!
そんなことより、今日の放課後どうしよっかなぁ〜 どこか近くのショッピンモールにでもいって、一緒に買い物をするのはどうかなぁ...それで、一緒にクレープでも食べて、食べさせ合いっこしちゃったりして!」
俺の妄想がどんどん膨らんでいく。こうなったら、もう、誰にも止められない。俺自身も止めることができないのだ。
「...なぁ、薫。楽しそうに考えるのはいいんだが...」
翔治が呆れた顔でこちらを見てくる。
「なんだ?お前も来たいのか?でも悪いな!俺は2人っきりで行きたいんだ!」
少し煽り口調が入ってしまう。もうこの性格は、今後も治ることがなさそうだ....
まあ、でも、俺の幸せな放課後ライフを邪魔しようとした方も悪いと思うんだ、うん。
たとえ!どんなことがあっても!
俺は真凛と!今日!デートに行くんだ!
「いや、お前、今日補修だろ?」
「...え?」
ほ、ホシュウ?ナニソレオイシイノ?俺わからない...
「お前、前回の期末試験で赤点取ったじゃねえか。それの、ほ•しゅ•う!」
翔治がニコニコしながら俺の肩を叩いてきた。
「お、俺の、幸せな放課後ライフが...」
すがるように翔治を見る。すると、コイツは満面の笑みでこういった。
「...過去の馬鹿な自分を恨むんだなw」
「期末の時の自分の馬鹿やろー!!!!」
この日の朝、俺の声が校舎全体に響き渡った。
〜〜〜〜〜
「ハァ...疲れたなぁ。」
放課後、俺は補修を受け終わり、"1人"で下校していた。ん?真凛はどうしたのかだって?
もちろん、昼休みの時に真凛に残って欲しいって頼んださ。こんなふうに...
『今日の放課後、俺、補修があったみたいで...俺としては、今日、一緒にどこか行きたかったんだけど。ごめんな。』
『そう。まぁ、明日から2日間休みなんだから、その時行けるし、平気でしょ?
それに、私、今日は疲れたから、早く家に帰ってゆっくりしたいわ。』
『そ、そうか。ちなみに、俺が補修受け終わるまで、待ってくれたりは?』
『しないわ。なんで補修ないのに残らないといけないのかしら?』
『ですよねー。』
(....うん。今思い出しても見事に惨敗してる。全く俺のこと気にしてないし、俺より家の方が優先度高いみたいだし...あぁ、泣きたくなってきた。付き合えて嬉しいのは俺だけか...)
そう思いながら、トボトボと帰り道を歩き続けた。
いつもなら、5分で歩き終わる距離を、10分かけて歩き終わり、なんとか家に着いた。
(ハァ...明日、デートにでも誘おうかなぁ。でも、あんま乗り気じゃなさそうだなぁ...)
俺は、沈んだ気持ちのままで、扉をを開けた。
ガチャリッ
「お、おかえりなさい!遅かったじゃない!補修はどうだったかしら!?」
「...ぇ?なんで真凛が?」
驚きのあまり、心の声が漏れてしまう。全然想像してなかったため、嬉しさよりも驚きが勝ってしまい、頭がボケーっとしてしまう。
「俺が家に上げたんだ。」
急に声がしたので、そちらを見ると、そこには親父が立っていた。
「なんで親父が?」
「なんでって。お前なぁ...
彼女、ウチの前でうろちょろしてたんだよ。どうせお前が約束破ってどっかいったんだろ?ったく、ダメな奴だなぁ...」
親父が俺に向かって説教まがいのことを言ってくる。正直ウザい。しかも、言ってること全然合ってないし...
「俺、約束なんてしてないよ。だからこうして真凛がウチにいることに驚いてるんだろ?」
「へぇ。じゃあなんでこの子家に上がってからり「あー!!あーあー!!!」..どしたんだ、真凛ちゃん。急に大声なんか出して。」
親父が何かを言おうとする前に、真凛が大声で止めた。何か言われたら嫌なことでも言おうとしたのだろうか。だとしたら、親父を俺は許さない...
「お、おい。薫。なんだその目は!人を殺しそうな目だぞ!?俺なんかしたか!?」
父が慌てている。どうやら、感情が漏れていたようだ。まあ、しょうがない。うん。
「まぁなんでいるのかは知らんけど、ゆっくりしていってくれ。俺は一旦着替えてくる。」
「あ、うん。わかった。」
俺は、真凛にそう伝え、2階に上がった。
そして、急いで着替えて、階段を駆け降りた。
そして、リビング兼ダイニングの扉を開ける。すると、いい匂いが俺の鼻をくすぶった。
ぐーーッとお腹がなる。
その匂いのせいで急激にお腹が空いた俺は、匂いの方へ歩いて行った。するとそこには、俺の好物であるハンバーグがあった。
(誰が作ったんだ?お母さんはいないし...)
不思議に思った俺は、キッチンを覗いた。
「え?真凛?」
なんと、キッチンには真凛がいた。しかもエプロン姿で。
「ご、ご飯できてるわよ?テーブルにハンバーグは置いてあるわ。」
「う、うん...あれ、真凛が作ったのか?」
「そ、そうよ!早く食べて!冷めちゃうわ!」
「お、おう。」
真凛は照れながら俺にご飯を食べるよう誘導してきた。俺は、頭が「?」と「かわいい」でいっぱいになりながらも椅子に座り、真凛が作ったハンバーグを食べた。
「いただきます。」
パクリッ
「う、上手い!!」
正直、いままで食べてきたハンバーグの中で1番上手い。お母さんには悪いけど、こっちの方が数倍うまい。こんなのが食べれるなんて感動だ...
「どうかしら?美味しくできてたかしら?」
いつの間にか真凛が隣に来ていて、不安そうな顔で俺を見ていた。
「上手いよ!いままで食べてきたやつの中で確実に1番!まじ最高!」
「そ、そう。良かったわ。」
そう言って、真凛はニコリと微笑んだ。
エプロン姿に彼女の笑顔が合わさって、真凛が天使のように見えた。
今の彼女をずっと見ていると、キュン死してしまうため、俺はご飯を必死に食べた。
~~~~~~~~~~~~~
俺が食べ終わり、皿を下げた後、真凛は申し訳なさそうな顔で俺に謝ってきた。
「...今日は一緒に帰れなくてごめんなさい。貴方に料理を作ろうと思ってたから残ることができなかったの...」
「謝る必要なんてないよ。補修になったのは俺が悪いし。それに、真凛の料理で元気がみなぎってきたから。」
真凛を励ますために、俺は力瘤をつくりニコリと笑って見せた。すると、彼女はなんとか笑顔になってくれた。
「そう。なら良かったわ!私のおかげね!感謝してくれてもいいのよ?」
「本当にありがとうございます。真凛さん。一生お慕い申し上げます。」
「ちょ、ちょっと!急にかしこまらないでよ!それに本当に感謝しなくて良かったのに!」
どうやら、元気も完全に戻ったようだ。
そのことにホッとする。
「じゃあ、私、そろそろ帰るわ。」
「そっか。家まで送ろうか?」
「いや、大丈夫よ。隣だし、平気よ。」
「そっか。」
真凛を、玄関の前で見送る。いたのは驚いたけど、これから帰っちゃうと思うと、なんだか寂しく感じる。
彼女がガチャリと玄関の扉を開けるのを、手を振りながら見守った。
扉がだんだんと閉まり、姿が見えなくなっていく。
そして、完全に閉ま「あ、そうそう。言いたいことがひとつあったわ。」...る直前に、また真凛が姿を現した。どうやら、言い残したことがあったようだ。
「なんだ?」
「あ、明日!デートしましょ!」
「え?」
彼女のいきなりのお誘いに驚いてしまい、思わず間抜けな顔を晒してしまった。
「じゃあ、それだけだから!明日早く起きないと怒るからね!」
そう言うと、彼女は今度こそ去って行った。
俺は閉まりきった扉を眺めながら、ぼーっとしていた。
今日の真凛は、料理を作ってくれてたし、エプロン姿も見れたし、デートにも誘ってくれた。正直、付き合う前より数段可愛くなっていた。(いつも最高に可愛いけど。)
でも、でも....
「ツン」があまりにも少なくね?
~~~~~~おまけ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
???「あーっ!恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!!浮かれすぎよ私!やっと付き合えたからって!やりすぎよ!絶対少し引かれたわ!いきなり攻めすぎなのよ!本当の本当に!私の、馬鹿ーーーー!!!!!」
_________________________________________
投稿遅くなりすみません。
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ツンデレ幼馴染と付き合ってから幸せになるまで 高校生のモブA @kousokuzettai
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