小夜の日常


今日は東雲ちゃんと遊ぶ日!これは今決めたことだ。そうと決まれば行動に移さなくちゃ!遊ぶ時間が減っちゃう!!とりあえず電話をかけよう。メッセージを送るだけだと東雲ちゃんは未読スルーしちゃうかもだもんね。

「早起きだね。どうしたの?」やった!出てくれた!!もうすぐお昼だよ!?いや、そんなことより誘わなきゃ!遊んでくれるかな?

「遊ばない」それだけ残して切られてしまった…どうしよう、断られちゃった。さすがに断られたのに家に押しかけるのは迷惑かな?いや、東雲ちゃんのことだから夏休みずっと引きこもってたに違いない!なら私が外に連れ出さなきゃ健康に悪いよね!そうと決まれば早速出かける準備だ!!

外に出ると夏の暑さが襲ってきた。でも今日はまだいい方かな?これなら東雲ちゃんでも耐えられそう!よかったよかった。東雲ちゃんはどこなら楽しんでくれるかな?そういえば東雲ちゃんの家の近くに映画館があったはず!映画なら引きこもりの東雲ちゃんも楽しんでくれるよね。何観ようかな〜。確か東雲ちゃん恋愛映画は嫌いって言ってたような…そうだ!バイオハザードにしよう!!これなら東雲ちゃんも楽しんでくれるはず。それに私も観たいしちょうどいいや!!チケットも買ったしあとは東雲ちゃんの家に行くだけだ!!楽しみだなぁ。

ピンポーン。チャイムを鳴らして少しすると東雲ちゃんが出てきた。やっぱり引きこもってた!

「なんでいるの?」一言目がこれなのは酷いなぁ…でも東雲ちゃんらしいか。こんなこと言いながら家に入るように促してくれてるんだもん!!やっぱり優しいなぁ。家に入ると鞄の中に綺麗に入った教科書達が目に付いた。東雲ちゃんに限って終わってないなんてことあるのかな?聞いてみよっと!!

「そんなのあったね」と言いながら鞄の中に眠っている教科書たちを指さす。あと二日しかないのに!?!?

「私頭いいから一日あれば終わるもん」やっぱり東雲ちゃんはすごいなぁ…私はバカだから尊敬しちゃうなぁ。そういえば映画のチケット取ったんだった!!危ない危ない、お昼も食べなきゃだからそろそろ外に連れ出さなきゃ。やばい!東雲ちゃんなんにも準備してないじゃん!!とにかく服を着せなきゃ!!その次はお化粧して髪もやってあげなきゃ!!よし、服はこれにしよう!お化粧は東雲ちゃんは薄くするだけで問題なし!最後は髪の毛だ!!あれ?全く寝癖なんてないしそれに石鹸のいい匂いがするなぁ。シャワー浴びたのかな?私と遊ぶから浴びててくれたなら嬉しいなぁ。なんとか外に連れ出すことには成功だ!東雲ちゃんすごく暑そうにしてるなぁ…やっぱり引きこもってたに違いない。それにしてもデニムにTシャツ姿は東雲ちゃん似合うなぁ…肩まである下ろした髪型と相まって最高だ。我ながら東雲ちゃんの事をよく知ってると思う。出来れば帽子も被せたかったけど暑いし蒸れちゃうから可哀想だよね。あ、もうすぐ映画館に着いちゃう!!東雲ちゃんに伝えとこっと!!

「嫌だけど。映画は展開がすぐに分かっちゃって退屈だし。」え!?チケットもう取っちゃったよ…

「はぁ…じゃあ行こっか」よかった!!いつも面倒くさそうにしながらも私に付き合ってくれるんだよね。東雲ちゃん最高!でも映画の前にお昼食べなくちゃ!!そこのラーメン屋なら食べるの遅い東雲ちゃんでもゆっくり食べられるよね。そこにしよっと!ラーメン屋に向かおうとすると東雲ちゃんに手を掴まれた。どうやらラーメンは嫌みたい。じゃあどうしようかな?そうだ!隣の店の焼肉屋にしよう!肉なら東雲ちゃんの夏バテ対策にもなるしゆっくり食べられるからそこにしよう!今回は東雲ちゃんも止めて来ないみたいだし。お店に入ると店員さんに入口からすぐ近くの席に案内された。ちょうどクーラーの風が当たって気持ちいい。当たりの席だ!とりあえず飲み物と肉を頼もっと!東雲ちゃんすごく汗かいてるなぁ。飲み物は二人ともコーラでいっか。東雲ちゃん確か好きだったし。肉はホルモンとバラ辺りでいっか!東雲ちゃんバテないようにしないとだからね。やっぱり東雲ちゃんとおしゃべりするの楽しいなぁ。あ、注文した肉とコーラが来た!とりあえず焼こっと!

「脂の少ない肉は頼んでないの?」コーラを飲みながら東雲ちゃんが尋ねてきた。脂が多いのばっかりにしたのは失敗だったなぁ。でもコーラは正解だったみたい。よかった!肉が焼けたみたいだから東雲ちゃんにあげよっと。

「脂が少ない部位がいいからあとでいいよ」拒否られてしまった…新しい肉を頼んでも置く場所ないから早く食べなくちゃ!よく考えたら東雲ちゃん脂身とか苦手そうだし次から気をつけよっと!それより東雲ちゃん私が食べてるところずっと見てくるなぁ。お腹すいてるから早く注文して欲しいのかな?これだけ減ったら大丈夫か!

「少しでいいよ」東雲ちゃんやっぱり少食だなぁ。私はまだ食べれるから色々頼んで好きなの食べてもらおっと!!それに少ししか食べないと本当に消えてなくなってしまうかもしれない!!これだけは避けなければ。そんなことを考えていると注文した肉が来た。色々来たけどどれが何の肉なんだろう?まぁ東雲ちゃんは嫌なのがあったら私の方に入れるよね!そろそろ肉が焼けたので東雲ちゃんに取るように促すと数枚だけ食べて箸を置いてしまった。もしかして焼肉の気分じゃなかったのかな?それとも食欲がないだけ?どっちにしろほとんど食べてないんだから私が全部払おっと。そろそろ時間だから映画館に向かおうかな!東雲ちゃんには何を見るか教えてないから楽しみにしてくれてるはず!!席もちゃんと真ん中の少し後ろを取ったし観にくいなんてことも無いはず…

「ねぇ、そろそろ教えてくれない?」隣に座っている東雲ちゃんが聞いてきた。もうすぐ始まるから始まるまで教えないでおこっと!東雲ちゃんがうずうずしてるの新鮮だから見てたいし。あ、映画が始まった!

¦すごく感動した!!バイオハザードはやっぱりすごいなぁ。涙が止まらない!!

「どうしたの!?」東雲ちゃんが驚いた顔をしてこっちを見ている。だって…感動したんだもん。しょうがないせじゃん!

「とりあえず映画館出よっか?」東雲ちゃんが私の手を取って公園のベンチまで連れていってくれた。優しいなぁ。ベンチに座ると少し気持ちが落ち着いてきた。

「なんでわざわざ再上映のバイオハザード選んだの?」目の前に立っている東雲ちゃんが聞いてきた。もしかして苦手だったのかな。

「私一回見たことあったんだけど」やってしまった。せめて気まずい空気にしないために明るく返答しよう。

「そういえば映画代渡すね」東雲ちゃんがそう言ってお金を出そうとしてくる。見たくも無い映画を見せてしまったんだからお金を貰う訳には行かない。私はいつもそうだ。相手のことを考えたつもりになって自分のやりたいことを押し付けて…今日だって東雲ちゃんの意見なんて全く聞かずに家に押しかけて強引に外に連れ出して…お昼だってそうだ。挙句の果てに見たくも無い映画まで見せてしまった。

「お昼も出して貰ったんだから申し訳ないよ」そう言ってまだ渡そうとしてくる。多分東雲ちゃんは今日一日全く楽しくなかったはずだ。家に居たかったはずなのに無理やり付き合わせてしまったんだから。せめてこの気持ちだけは表に出しちゃダメだ。東雲ちゃんのことだから絶対に自分を責めるはずだ。それだけはダメだ。

「だって東雲ちゃん楽しくなかったでしょ?」気づくと口からこぼれてしまっていた。どうしよう。また東雲ちゃんに迷惑をかけちゃう。これ以上はダメなのは分かってるのに気持ちが口から溢れるのを止められない。せめてもの抵抗としておどけたように言おう。

「相手のこと考えずに自分だけ楽しもうとしちゃうからみんなあんまり遊んでくれないんだよね〜!」やばい…涙まで出てきそうになってきた。泣きたいのは一日付き合わされた東雲ちゃんの方なのに。私は最低だ。どこまで自分本位なんだろう。私なんて…

「私は小夜と一緒にいて楽しいの!!だからそんな事言わないで!!」東雲ちゃんの声がした。それも今まで一度も聞いたことないような大きな声だ。東雲ちゃんにこんな大きな声が出せるなんてびっくりした。東雲ちゃんの顔が真っ赤だ。それだけ本気だったのかな。どうやら私は東雲ちゃんの気持ちまで勝手に決めつけてたみたいだ。私は最低だ。自己嫌悪に押しつぶされそうになる。でもそれ以上に東雲ちゃんが私に対して本気になってくれた事が嬉しい。

「へぇ〜私といて楽しいんだ〜」私がそういうと東雲ちゃんは下を向いてうん。とだけ答えた。こんな東雲ちゃんは初めてみた。嬉しいなぁ。東雲ちゃんがそんなふうに思ってくれてたなんてほんとうに嬉しい。

「だったら今日東雲ちゃんの家に泊まっていいよね?」もっと一緒に居たい、そう思ったら自然と口にしていた。

「意味が分からないんだけど」東雲ちゃんの声が聞こえてきた。また東雲ちゃんを私のわがままに付き合わせようとしてる。でもさっきみたいな自己嫌悪は押し寄せて来なかった。代わりに涙が溢れそうになってきたので東雲ちゃんにバレないように先に家の方に歩くことにしよう。少しすると東雲ちゃんが後ろから小走りで隣に来た。東雲ちゃんはやっぱりかわいいなぁ。気持ちが落ち着いたらなんだかお腹すいて来ちゃったな。東雲ちゃんの家はいつもカップ麺あるからあったら貰おっと。東雲ちゃんも食べるよね!東雲ちゃん今日ほとんど食べてないんだからこれくらい食べないと倒れちゃいそうだし。家に着いてキッチンの棚を見るといつものようにカップ麺が二つあった。

「小夜ってさ、名前と性格全く一致してないよね」突然こんなことを言われてびっくりした。どの辺が一致してないんだろう?

「だって夜って静かなのに小夜はうるさいじゃん」東雲ちゃんも意味わからないこと言うんだ…夜は静かじゃないのに。少しして東雲ちゃんがカップ麺を食べ始めた。私がまだ力説してるのに!!そういえば東雲ちゃんは昔からいつも面倒くさがりながら私のわがままに付き合ってくれてたなぁ。あれって実は東雲ちゃんも楽しんでくれてたんだ。嬉しいなぁ。やっぱり爽楽って名前は東雲ちゃんにあってる気がするな〜。

「爽楽って名前のどこが私に合ってるの?」東雲ちゃんが意味が分からないと言った顔をしている。

「だって東雲ちゃんいつも楽しそうじゃん」今だからこそ胸を張って答えられる。

「確かに小夜といる時は楽しい」自分で言って照れてる!!かわいいなぁ…照れてる東雲ちゃんなんて滅多に見られないから新鮮!

「ほら、麺伸びちゃうから食べよ」あ!すっかり食べるの忘れてた!!これ食べたらシャワー浴びよっと。東雲ちゃん食べるの遅いだろうから先に入っちゃった方がいいよね!よし、食べ終わった!やっぱり東雲ちゃんはまだ食べてるみたい。先に入ろっと!こんなに汗をかいた日に浴びるシャワーはとっても気持ちいい。そういえば目腫れてないかな?鏡の中の私の目は腫れてはいないが充血していた。あれ、今私こんなに幸せそうな顔してるんだ。シャワーを浴び終えると東雲ちゃんが入れ違いで浴室に入っていった。机を見ると課題が置かれている。どのくらい終わってるのかな?覗いてみると読書感想文を書き終えて数学の課題が半分くらい終わっていた。すごい、すごすぎる…やっぱり私とは頭の出来が違うみたい!!さすが私の親友だ。しばらくすると東雲ちゃんが浴室から出てきて課題を再開しているようだった。隣で観察しよっと!見ているとすごい速さで回答が出来上がっていく。私は昔から東雲ちゃんの勉強してるところを見るのが好きだった。懐かしいなぁ。いつも私に勉強教えてくれてたっけ。最近はあんまり勉強してる所なんて見てなかったなぁ…。

┈┈┈┈┈気がつくと朝になっていた。それに身に覚えのないタオルケットがかけられている。東雲ちゃんがかけてくれたのかな?やっぱり優しいなぁ。

「おはよう」東雲ちゃんに声をかけるとおはようと返ってきた。あぁ、ほんとに幸せだなぁ。

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日常と親友 カエデ @kaede000108

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