第22話 黄昏と幸せな日々
葛城亜斗夢は縁側で寛いでいた
店を息子に譲った後はのんびり散歩したりして近所の住民と交流していた
もちろんあとむやの宣伝も兼ねてなのは言うまでも無いであろう
着物に雪駄という姿は貫禄を感じる
しかし普段は洋装で出かけるのであった
キッチリした格好では無くラフな格好を好んだ
ダボっとしたジーンズとスニーカーにTシャツにパーカーが定番のスタイルだ
顔立ちも整っている為にかなり目立つ
母親がフランス人であり若い頃から一際目を引く存在だったのだ
そんな彼も75歳を迎えようとしていた
孫もそれぞれ結婚して幸せな家庭を築いていた
誕生日会がサプライズで執り行われた
沢山の家族に囲まれて亜斗夢は幸せな一日を過ごす事が出来た
「もう…思い残す事は無いな」
寝室でそう呟くと眠るように亡くなった
家族が発見した時は安らかな死に顔だったそうだ
葬儀がしめやかに執り行われ後日盛大なお別れ会が開かれた
新聞の見出しにも大きく取り扱われた
「老舗あとむや二代目永眠」
記事には彼の業績や交流などが踊り人々の目に止まった
葬儀やお別れ会の際は葛城家が経営する店舗は軒並み臨時休業になった
葬儀は大恩寺で執り行われ近隣の人々が多く集った
喪主は東吾が務めた
偉大な父を亡くした葛城家の兄妹達は意気消沈していた
長姉である新も涙を堪えて気丈に振る舞ったが、頬を伝う涙が全てを語っていた
夫である大恩寺静も妻を優しく抱きしめる事しか出来なかった
お別れ会にはリカルドと亜梨沙も出席した
「俺より先に逝くなんて水臭いじゃ無いか…でも俺にはまだやり残した事があるからまだそっちに行く気はねぇよ…もう少し待っててくれよ…そん時はあの世で酒でも酌み交わそうぜ…約束だ」
そう述べた弔辞は会場の涙を誘った
こうして一時代を作った和菓子の風雲児はこの世を去った
子孫に跡を引き継いで…
その想いは代々引き継がれて行く
葛城亜斗夢亡き後のあとむやはしばらくは粛正ムードだったが日が経つにつれ元の賑わいを取り戻して行った
パティスリーTime taleにもいつもの賑わいが戻っていた
古民家カフェこもれびもまた同様である
今日も元気な声が飛び交う
「いらっしゃいませ!ありがとうございました!またお越しください!」
幸せを運ぶ甘い香りに包まれて人々が集う
そんな日常
爽快な汗を掻きまた多忙な一日は過ぎて行く
小さな町のとある場所
黄昏時に行ってみませんか?
そこには幸せな空間が待ってます
the end
すいも甘いも… みゅうた @tomrina
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます