第43話

 お姉さんの言葉に、僕は涙を流しそうになった。


 居てくれるだけでいい。


 そんな言葉、生まれてこのかたかけられた事がなかったからだ。


 僕は俯き、涙が流れてしまうのを必死に堪えた。




「ね、だから、自分には何も返せないだなんて思わないで。君が居てくれるだけで、私は充分だし、幸せだよ。料理だってこれから頑張るし……だから、これからも私の側に居てくれないかな?」


「は、はい……」




 続くお姉さんの言葉に、僕は耐えきれななくなって、椅子から立ち上がった・


 お姉さんに泣き顔を見られるのが恥ずかしくて、咄嗟に近くの別の部屋に逃げようと、戸に手をかける。




「あ、待っ、その部屋は……」




 しかし、その瞬間、お姉さんの声音に緊張感が生まれた。


 けれど、時すでに遅く、僕は扉を開いてしまった。




「えっ? うわぁぁぁぁぁぁぁ」




 扉を開いた瞬間、僕の上に突然雪崩こむ質量。


 何が起こったか理解できず、僕は下敷きになりながら、お姉さんに聞いた。




「えっ……何ですかこれ?」


「えーっと……えへへ、実はウチ、掃除も苦手……というか家事全般苦手なんだよねー」


「…………」




 この言葉を聞き、僕の背中には悪寒が走った。


 優しい大人のお姉さん。


 頼もしい大人のお姉さん。


 ついさっきまで、そう思っていた。


 でも、今のlこの惨状みた瞬間、脳裏に過った可能性。

 

 もしかしたら、お姉さんは……




 ちょっと……だらしない? 

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借金の形に売られた僕が、何故かギャルのお姉さんと生活する事になった話。 村木友静 @mura1420

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