第11話
えっと、何を言っているのかしら。
さすがによくわからない。
完全に思考停止してしまった。
いや、そんな場合じゃない。働け頭!
リメルは風魔法が第5段階までと回復魔法を使える。
それに加えて、光魔法が第7段階……?
光魔法って闇魔法と同じくとんでもなく珍しい属性よ?
威力だって他の属性とは比べ物にならないし……それを第7段階まで使えるですって?
そんなのこの国最強レベルじゃない。
お父様ですら第6段階までなのに……。
しかも本来の属性は光魔法だと言うのなら、なんで風魔法まで使えるわけ? 本来の適性じゃない魔法なのに第5段階まで使えるとか、聞いたことがない。
うん、やっぱり信じられない。
「嘘おっしゃい。いきなりそんなこと言われても信じられないわ」
「そう言うと思いました。この場で使ってみてもいいのですが、第7段階ともなるとかなり派手で……でもヴィナ様がどうしてもと仰るなら……」
「い、いや、やめなさい。ひとまず信じましょう」
リメルの話が本当だった場合、こんなところで使われたら大惨事だ。
屋敷中の人間がここに集まってしまう。いや、その前に屋敷が吹っ飛ぶのでは?
あれ、そうしたらわざわざ危険を冒してまで逃げなくて済む?
光魔法の第7段階ともなるとどれほどの威力か全く想像できないけど、一国を滅ぼせるほどの力なのだから余裕で屋敷の一つくらい吹っ飛ばせるわよね?
あ、でも一応外部からの攻撃から守るため結界が張られてるんだっけ……でも内部からだと意味のないのかな?
うーん……もし仮に上手くいったとして、お父様が生き残っていればなんの意味もない。
そもそも今世で大事に育ててくれたお父様を殺す気にはなれないし……。
うん、やっぱりここは大人しく逃げよう。
「ところで、どうして今まで隠してたのよ?」
そんな力があるなら早く言って欲しかった。
刻印を消す方法を見つけたのはまだ第5段階までしか使えない時だったから、もしリメルがその時既に第6段階以上を使えていたのならもっと早く解放してあげれたのに。
そうしたら、もしかしたらここまで面倒なことにならなかったかもしれない……。
って、そういえばいつからリメルは光魔法の第7段階っていう国中に衝撃が走るような魔法を使えたのだろう。
使えたとしても、それを試す場がないと自覚もできないはずでは……?
謎なことが多すぎてなんだか怖くなってきた……。
「奴隷となった身分で変に目立つと厄介なことになり得るでしょう? だから隠していたのです」
なるほど……それには納得だ。
ただでさえ第7段階の使い手は奇跡レベルなのに、奴隷の身分で優秀すぎると何をされるかわからない。
リメルの判断は正しかったわけだ。
「でも、よく隠し通せたわね。使えるようになったのはいつなの?」
「3年前くらいですかね……奴隷は戦場に駆り出されるのが普通なので、僕も無理矢理戦わされてました。光魔法の適性があるのは昔からわかっていたのですが、第7段階が使えるようになったのはその頃です」
「そんな目立つところで使っちゃったの?」
「そうですね……その時満身創痍だったので無我夢中で。でもその場にいた人間は皆殺しにしたので隠すことができました」
そうにっこり告げるリメル。
発言と表情が合ってない。まさかリメルの口から皆殺しなんて言葉が出てくるとは思わなかった。
まあ戦場ではヤるかヤられるかだから、手加減は無用。おかげでリメルは無事帰還できたわけだし、結果的に良かったのだろう。
「他に僕を拒絶する理由はありますか?」
リメルが最終確認とばかりに尋ねてくる。
う……実際もう拒否する理由が思いつかない。
光魔法の第7段階の使い手なんて喉から手が出るほど欲しい人材だ。
だけどイマイチ決めきれずに言い淀んでいると、リメルが焦れったいというように溜息をついて脅し文句を言ってきた。
「どうしても僕を連れていかないと言うのなら……今ここで大声を上げてヴィナ様の逃走を邪魔します」
「……ッ!」
最早、私に選択肢などなかった。
稀代の悪党一家に生まれましたが、血が怖いので家出します 藍原美音 @mion_aihara
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