オーロラの雨

みどり

美しいだけでは足りない

「こんなにたくさんのオーロラ見た事ねぇや。まるで雨みてぇ」


「本物より、本物っぽいだろ?」


「ああ、最高だ」


俺達は、アーティストだ。

絵も描くし彫刻も作る。今まで2人で組んで、たくさんの作品を作り出してきた。


今回の作品は初めてのチャレンジ。


いつもアナログで作品を作っていた俺達が初めて使ったコンピュータグラフィックス。


たくさんのプロジェクターを駆使して、色を重ね、デジタルとアナログを融合させる。


何もない真っ白な部屋に異国の風景を映し出す。


「なぁ、なんか足りなくね?」


「星空を出してみるか?」


星空に輝くオーロラは美しいが、どこか作り物めいている。


「「違うな」」


相棒も同じ事を思ったようだ。


「自然物ばかりだからかなあ。なんか違うんだよな」


「あ、それなら……ソリを足してみるか?」


ささっとソリのラフを描き、重ねてみるが違う。すぐに消した。


「オーロラってさ、すげぇ綺麗で日本じゃ見れないから現実味がねぇじゃん。でも、現地の人にとっちゃ日常なんだよな」


「……それだっ!」


俺は、いくつか家を描いた。


「おお、なんか良い感じになったな!」


旅行に来た人からすると現実離れした美しい光景。だが、そこにも確かに人々の暮らしがある。


「綺麗な家ばっかじゃつまんねぇよ。隠れ家みてぇなボロい小屋も描こうぜ」


「いいな」


完璧な美しさも良いが、美しいオーロラに照らされればボロい小屋も美しく見える。


「なぁ、これ小屋のパターンを色々作って時間経過で切り替えようぜ」


「それいいな! オーロラだけが変わるんじゃ面白くねぇもんな。日によって映る小屋も変われば面白いし何度来ても楽しめる」


俺達はアーティストだ。

人々を楽しめる為、今日も知恵を絞る。

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オーロラの雨 みどり @Midori-novel

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