人生に価値なんてない
あいきんぐ👾
第1話
最近、お店で買い物をしてよく思うことは、暗い表情をした店員がとても多いということだ。
飲食店の店員は暗い顔で注文を聞き、暗い顔で料理を出す。
コンビニやスーパーの店員は暗い表情でレジを打ち、ボソボソと会計金額だけ呟く。
店の中ですれ違っても「いらっしゃいませ」なんて言わないし、目も合わせないし道も譲らない。そんな店員が多すぎる。
気持ちは理解できる。
プロ意識という以前に、仕事が楽しくないのだろう。
ただ、惰性で、仕事だからやっているだけなのだ。
ご存じのとおり、接客業では『笑顔で明るく』が基本だし、きっとどこの店でもマニュアルにそう書いてるはずだが、現実には無愛想な店員が多すぎる。
ただ決まったマニュアルどおりにやればいいだけなのに、それすらできない。
だから貧乏なのも仕方ないし、いずれAIに仕事を奪われても仕方ない。
だって、無愛想な店員に接客されるより、AIに接客されたほうが気分よく買い物できるんだから。
人間なら、仕事はもっと楽しんでやるべきだ。
つまらないなら、辞めたらいい。転職すればいい。
もっと楽しい仕事をしたらいい。
人生の中で、仕事が占める時間の割合は大きい。
なのにそんなに暗い表情で、つまらなそうにやっていたら、人生そのものがつまらなくなってしまう。
それは、ものすごくもったいないことなんじゃないだろうか?
――なんて。
ずっと思っていたけれど。
実際、つまらない人生だろうが、楽しい人生だろうが、いつか終わることに変わりはない。
それに、ずっとつまらない人生もなければ、ずっと楽しい人生もない。
今、この瞬間につまらないからといって、人生そのものがつまらないわけではない。
一寸先は闇、なんていうけど、それだけ人生は不安定なものだ。
幸せに生きていても、突然、誰かに殺されて人生の幕引きを迎えるかもしれない(そこで死ぬことが幸か不幸かはともかく)
そんな不安定な人生というものに、価値を見出そうということ自体が間違いだ。
人間という動物の一個体にしか過ぎないものに、価値なんてあるはずがない。
だから、つまらなそうに生きている人を責める必要はない。
無価値な人生がつまらないのは当たり前のこと。
つまらないものを無理に楽しむなんて疲れるだけだ。
そんな相手に、価値ある人生を押し売りするような考えはよくない。
無理強いしたって、その人のためにはならない。
つまらない人生を生きたいのなら、どうぞご自由に、だ。
それが本当のやさしさとも言えるだろう。
――でも。
世界中のすべての人の人生が無価値だったとしても、自分の人生だけは価値あるものにしたいと、心のどこかで思ってはいる。
自分の人生だって、同じように無価値なことは理解している。
理解してはいるが、どんなにとりつくろったとしても、自分にとって価値があるのは、自分の人生だけだ。
自分以外の誰かの人生に価値を見出そうとしても、それは幻影のようなもの。
実際には存在しないものを、あると勘違いすることしかできない。
むろん、その勘違いは悪いことではない。
その勘違いによって、自分自身の人生の価値が上がることもある。
救われることもあるだろう。
人を愛することも、大切にすることも、尽くすことも。
何もかも、すべては自分自身のため。
それはみんな、意識のどこかでは理解している。
当たり前のこと。
自分の人生が終われば、自分にとっての世界も終わる。
つまり、そういうこと。
――だからこそ。
どんな人に対してでも、丁寧に、誠実に、やさしさと慈しみをもって接するように心がけている。
それが、正しいことだと信じている。
きっと、世界中の全員がそんなふうに生きられたら、もっと平和で素晴らしい、価値ある世界になるのではないだろうか、と。
人生に価値なんてない あいきんぐ👾 @gameandnovel
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