第9話 秒速の錬金術師

 「300万の金が1200万に化けた、最高の気分だ」車の窓を開け満足げに工藤トカゲおとこが呟く。

 

  300万は日向南ひなたみなみの父親に工藤トカゲおとこが貸し付けた金額である。


 「アニキ、あの姉ちゃんの器量だったら、風呂屋の方がもっと稼げたんじゃないですか?」と柴田タトゥーゴリラ

 

 「いや、あのお嬢ちゃんじゃ、風呂屋は長く続かんだろうなぁ……。精神を病んできっと逃げ出すだろう、逃げ込んだ先そこはもっと地獄だけどな……」


そこまで語り、思い出したように、笑いだす工藤トカゲおとこ


 「クックック、ロイヤルストレートフラッシュを引くより、すげえ役を引いたな、あのお嬢ちゃん。いまだに信じられねえよ」


「伊藤さんですか、あの人そんなに凄い人なんですか?」


「窓の外にタワーマンション見えるだろ、あれの最上階の値段がいくらか分かるか?」


「最近たったやつですね、う~ん……2億位ですかね」


「5億だ」


「5おくううううううう~誰が買うんすかそんなもん」興奮した柴田タトゥーゴリラに合わせて、ハイエースがフラフラと蛇行する。


「危ねえな馬鹿、ちゃんと前見て運転しろ」柴田タトゥーゴリラの頭を工藤トカゲおとこがパシッと叩く。


「すいやせん……」


「50階建て超高層タワーマンション『ラピュタタワー』その最上階5001号室の持ち主、それがあの兄ちゃんだ」


「ええっ」絶句する柴田タトゥーゴリラ


「最上階のオーナーは極度のマスコミ嫌いでな、ずっと誰だかわからなかったんだ。

 仕方がないから腕利きの情報屋に金を払って調べさせた事がある、その結果分かった事は、20代の天才FXトレーダーという事だった」


「アメリカの最大手証券会社XYZ Trading、その会社が主催する『XYZ Tradingカップ』優勝賞金3億円、世界中のトレーダーが集まるその大会で、史上初の2連覇を成し遂げた化け物FXトレーダー。ハンドルネーム『秒速の錬金術師びょうそくのれんきんじゅつし』それが5001号室の持ち主だとな」


「何でアニキは伊藤さんがその……連勤地獄だって分かったんすか?」


「クックック……それな……あいつの免許書に『5001 ラピュタタワー』って書いてあったんだわ」


「……なんすか、その落ち」

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秒速の錬金術師 ~ どうしても異世界に行きたいご主人様と行かせたくないメイド ~ アカバネ @akabane2030

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