美味しい物も楽しめない

 私は、大学生4年生の頃に担当の助教授とうまくいかず、統合失調症をわずらった。

 それから、人生狂い散らかした。が、今は、何とか生活できている。

 病状が安定している今だからこそ、大学生4年生の頃を思い出しても、特にダメージはない。

「ああ、そんなこともあったな」くらいには、落ち着いている。

 それでも、当時はひどいものだった。

 電話が常に鳴っているように感じて、スマホを見るのが怖かった。

 常に監視されているように感じて、心の休まる時間がなかった。

 特に顕著けんちょに影響が出たのは、睡眠と食事である。

 夜、9時くらいに布団に入っても、眠りに落ちるのは明け方4時などざらだった。

 食事は、普通サイズのカップ麺ではなく、お弁当の汁物代わりに買うような小さなカップ麺でお腹いっぱいになった。そして、あらゆるものが、美味しく感じなかった。

 食事をしている間も、助教授から「休んでいるな!」と言われている幻聴が、聞こえていた。

 何をしていても罵声ばせい軽蔑けいべつした監視の目を感じていた。そんな状態では、楽しめるものも楽しめない。

 そんな状態から、どう立ち直ったかというと、逃げたのである。

 病院に逃げ込み、病気でありその状態はおかしいという事実と薬をもらった。

 環境を変えるために逃げて、逃げ続けて、今の職場にたどり着き、落ち着ける環境を手にいれた。

 今の場所に来るまで、ずいぶんと逃げた。

 逃げることは、悪いことじゃない。

 今、辛い場所になるなら、逃げることも全然ありなのだ。

 その事を美味しい物も楽しめない過去の自分に一刻も早く気づけと言いたい。

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手さぐりで書くエッセイ きと @kito72

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