違いはよく分からない

 ここ数か月で、新しい習慣ができた。

 それは、お茶の専門店に行き、気になったお茶を買いに行く、というものである。

 もともと、紅茶が好きで、スーパーの安いフレーバーティーを飲んでいた。それも十分に美味おいしかったし、満足もしていた。

 なら、なぜ専門店へ行くようになったのかと言うと、数年前の夏に札幌の駅ビルの1つが閉店したことである。

 閉店する駅ビルは、私もよく通っていた思い出の場所だった。もっとも私が懇意こんいにしていた店は、閉店が決まる前にすでに駅ビルから撤退していた。だが、駅ビルが閉店する年の初夏、最後に中を見ておこうと、件の駅ビルへと足を運んだ。

 チェーン店のファストフード店やお菓子売り場をなんとなく眺めながら、歩いていくと、少し外れた場所にお茶の専門店があった。その店があることは知っていたが、実際に商品を詳しく見たことはなかった。ここに来るのも最後になるかもしれない、と思うと何か買ってみようという気持ちになった。

 そして、私は春摘みの台湾ウーロン茶を買った。10パック入って、1000円。普段買っているフレーバーティーと比べると内容量は半分だが、3倍くらい値段が高い。

 買い物後に店員さんから、「会員になりませんか?」と言われるがまま会員になって、家に帰宅する。

 早速買ったウーロン茶を飲んでみると、非常に美味しかった。

 このお茶がもう飲めないのか、なんて思い、店名でネット検索してみると、普通にチェーン店だった。だから、店員さんも会員になることを勧めてきたのか。

 なんにせよ、美味しいお茶が今後も飲める。それが、嬉しかった。

 こうして、私はその専門店へ通うことになるのだった。

 と、いってもお茶の細かな違いは、よく分からない。

 美味しいか、美味しくないかと香りの違いくらいしか分からない。

 それでも、美味しいからいいか。

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