第59話 エースの矜持 その2
扉を開けるとそこは雪国だった。
『バタン!』
あまりの寒さに反射的に扉を閉めた私。やばいやばいお肌が突っ張っちゃう。
「おいっ!どうした」とエルウッドさん。
「どうかしたのか、サファイヤちゃん」とベイルさん。
「サファイヤ、何かあったか?」とノエルさん。
「どうかしましたか?」とナジームさん。
私は4人が揃ったところで改めてフロア14の扉を開けた。「こんなん出ましたー」と。
「アッチャー」とノエルさん。
「こりゃまた、寒そうだ」と身震いしながらベイルさん。
「一度地上に戻って、装備し直しましょう」とナジームさん。
「えっ、こんくらい、気合入れりゃあ、どうにかなるんじゃね?」とエルウッドさん。
「「「「なるわきゃねーだろ!!」」」」とみんな。
というわけで、「リターン!!」
ナジームさんが魔法を唱えると我々は『ダンジョン204高地』の入り口に戻った。
…………1時間後、『グッドルーザー』にて、
『グッドルーザー』のランチタイムに間に合った私達は、とりあえず、腹ごしらえをしながらこれからの作戦を練る。
「今の装備じゃ無理、無理」と早々に白旗を上げるノエルさん。本日のAランチである酢豚定食の中に入っているパイナップルを食べながら言った。
「いやー、フロア13からどおりで寒いと思ったけど、あれが原因かー」とダンジョンから出て来てしばらく経っているにもかかわらず、ファー付きのジャンバーを脱ごうとはしないベイルさん。
おやおやベイルさんは寒がりですか?
食べてるものも今日のおすすめ麺の担々麺を美味しそうに食べている。
ここの担々麺、美味しいんだけれど私には辛いんですよねー。
「ともかく、今の装備では、モンスターにやられるよりも前に寒さで凍死してしまいます。どうしますか?サファイヤさん。装備はこちらで用意しますか?それともあっちで買いますか?」とマーボー豆腐を食べながらナジームさん。どうやらナジームさんもダンジョンでの寒さにやられたらしい。
すると……「お前ら、大げさすぎなんだよ。あの程度の寒さで、ちょっとくらいガマンすればどうにでもなるだろ」と、『グッドルーザー』のマスター無理いって作ってもらった冷やし担々麺を啜りながらエルウッドさん。
前々から思ってたんですけど、あなたの季節感と皮膚感覚ちょっとおかしいですよね?今、まだ、3月ですよ。
「「「お前と一緒にすんな!!」」」とベイルさんとノエルさんとナジームさん。
んっ?んっ?んっ?
「どういうことですか?ナジームさん」とエビワンタンを食べながら私。実はここのマスターのエビワンタンが絶品なんですよ。薄いヒラヒラの雲吞がまるで本当に雲を飲むようにチュルンとのどを通るのです。
「ほら、前にも話したけれど、エルウッドは炎のマナをもともと体内に宿してるじゃないですか?」といつものように説明係を買ってくれるナジームさん。
「はぁ……」
「ですから、どんなに寒くても、マナが自然に発熱して体温が下がらないんですよ」
「……だから、真冬でも頭悪そうに半袖だったんですか、あの人?」私はそう言ってエルウッドさんを指さした。
「俺は別に頭悪くねーぞ!」とエルウッドさん。
やだやだ、ほんと耳だけはいいんだからこの人。
ともかく、フロア14をクリアするための装備を整えなくてはならない。
「あのー、よかったらこの後、どなたかグランドデポまで買い物を付き合っていただけますか?」
「「「「んっ?」」」」と一斉に私を見るみんな。
「あっ、いや、その、皆さん全員は連れて行けませんが、『コンパニオン』を使えばあと二人までなら一緒に行けますよ。
実はわたくし地道にレベルアップした甲斐がありまして、現在最大MPが184。私以外にもあと二人一緒にグランド デポに行くことができるようになったのです。サファイヤえらい!
「んーっ、俺はいいや、アレだろ、フロア14クリアの為の防寒着買うんだろ。俺、別にいらねーから」とまさかのお断りのエルウッドさん。まぁ、エルウッドさんは先週もグランド デポに行ったばっかだしね。
「とりあえず、ベイルは一緒に行った方がいいですよね。私達に比べて体が大きいですからね」とナジームさん。
「なんか、悪りーな、みんな。じゃあ、サファイヤちゃん、よろしくな」とベイルさん。
「いえいえ、いつも荷物持ってくれて助かってますから」
「なんだ、今回も荷物係か」
ベイルさんはそう言うと「ガッハッハ」と笑った。
「じゃあ、後の一人は……すいません、用事が無かったらノエル、サファイヤさんと一緒に行ってもらえませんか?」
「うん、勿論いいよ。ナジームはいいのかよ?」
「はい、私はちょっと他の仕事が溜まってますので、そうしてくれると助かります。それにノエルと私だったら服のサイズも同じですし」とナジームさん。
そういや、ナジームさんも最近いろいろ事務処理をしてもらってるんだっけ。ちょっと一人じゃ回しきれなくなってるんですよねー。助かります。
「じゃあ、お昼ご飯食べ終わったら、私とベイルさんとノエルさんはグランド デポへ、ナジームさんとエルウッドさんは……」
「俺達は倉庫の方に行ってるから、良かったら夕飯をなんか買っておいてくれよ」とエルウッドさん。
「了解です。ちなみにリクエストは?」
するとエルウッドさんはうーん……と腕を組んてしばらく考えてから、「バーキンのワッパー、オールヘビーのパテ追加で」と。
……めんどくさいなー。人に頼むんだったらカスタマイズはやめて欲しいんだけどなー。
「ナジームさんは?」
「私もエルウッドと同じのをお願いします」とニッコリとナジームさん。
うん、この人はこういうところが気が利くのよねー。ほんと、うちのリーダーにも爪の垢を煎じてもらいたいわ。
「じゃあ、後で倉庫でな」とベイルさん。
「はい、お待ちしてます」とナジームさん。
そんな感じで、『グッドルーザー』で私達は分かれたのだった。
悪役令嬢 チートスキル『ホームセンター』を手に入れて聖女と呼ばれるようになる 相沢孝 @t-aizawa1971
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。悪役令嬢 チートスキル『ホームセンター』を手に入れて聖女と呼ばれるようになるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます