第58話 エースの矜持 その1

「本当にもう、すっごい痛かったんですよー」と頭のてっぺんに出来たたんこぶを撫でながら私。


「でも、まあ、そのくらいでよかったじゃないですか」とナジームさん。


「だなー、エルウッドの奴が本気で怒ったらそんなもんじゃすまないだろ」とベイルさん。


 すると、「しっ、静かに」と口の前で指を立ててノエルさん。


「どうだ、いけそうか?」とエルウッドさん。


 私達は黙って頷くと、岩場の影に隠れる。


 ノエルさんはハンドサインとともに、『コンパウンドボウ』を1発、2発と立て続けに売っていく。


 防御をする事すらできないままに次々と倒されていくモンスター達。


 そして、「ファイヤーストーム」と呪文を唱え、残りのモンスター達をまとめて屠っていく頼もしい我らがリーダー、レオン・エルウッド。


 一瞬のうちに燃え尽きるモンスター達。その正体すらもよくわからぬままに倒してしまった。


「最近、調子いいですよね、エルウッドさん」と私。


「まあ、このフロアに入ってから相性のいい相手の確率が高くなってきましたからねー」とナジームさん。


「そうそう、今のもおそらく、アイスウルフだろ。エルウッドに取っちゃ、氷系のモンスターなんざ朝飯前だ」とファー付きのジャンパーを着てベイルさん。


「ゴーレムもアイスゴーレムだしスライムだってアイススライムが出て来てるからねー」とノエルさん。


 フロア13に来てからというもの、これまでのヘタレっぷりは何処吹く風と言った感じで、我等がリーダーのエルウッドさんが絶好調。


 ノエルさんのコンパウンドボウとエルウッドさんの火炎系の魔法で、私もナジームさんもそしてベイルさんですら出番無しという状況が続いているのだ。


 この分じゃ、ずいぶんあっさりとこのフロア攻略出来ちゃいそうだなー。


「ところで、他のパーティーの進み具合はどうなんだ?」とノエルさん。


「ちょっと最近、私達もさぼり気味だったので、上の階まで辿り着いたパーティーもいるらしいですよ」とナジームさん。


「おやおや、最近はこっちのお金も換金できるようになって、いまいちハングリー精神って奴が無くなって来たからなー」とベイルさん。


「なにいってんですか、『グランドデポ』でエアコンの味しめちゃって、こっちでもエアコンが無きゃやってらんねーって言いだして、倉庫改装して全面冷暖房入れたりなんかしてたからでしょ。あれのお陰で相当時間、掛かりましたからね」とナジームさん。


「何言ってやがんで、エアコン入れてから、こっちにベッド持ち込んでここで寝泊まりするようになったのは何処のどいつだい」とこちらも負けてないベイルさん。


「ちょっと、うるさい、だまってろ」とエルウッドさん。


 見ると、ノエルさんがスコープを覗き込んで狙いを定めてる。


「あ、すまん」「すいません」と言葉を言い終わる間もなく、ピシュ!ピシュ!と立て続けに矢を射るノエルさん。


 そして、「ふー」っと一息つくと、「これでこのフロアのモンスターほとんど退治できなかな?」と。


「「「おつかれさまでーす」」」と私とナジームさんとベイルさん。


 そんな感じで何時にも増してあっさりとフロア13をクリアしてしまったのでありました。チャンチャン。


------------------------------------------------------------------------------------


どうも、作者の相沢です。久しぶりにこちらの方も更新しました。

あちらの方「フットボールのギフト」もひと段落ついたので、こちらの方の更新にも力を入れていきたいと思いますので、お久しぶりの方もよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る