音宮フウリは拾ったペットの扱いに手を焼いている。

音央とお

1 出逢いとこれから

昔から「フウリはもう少し考えてから行動をしなさい」と言われてきた。考えが足りない、世間知らずだと言うことらしい。

15年間生きてきて、一番の過ちは4歳の時のことだ。


「お母さま、この子を拾ってきたわ!」


侍女に読んで貰った絵本に捨てられた子猫を育てる話があった。立派に育った猫の冒険はとてもわくわくさせられたし、私もペットを飼ってみたくなった。

お母さまにお願いしたら「一生面倒を見てあげるのよ」という約束でブリーダーの元に行く予定だったんだけど……道端に捨てられていた子を見つけたのだ。あの絵本の子猫のような素敵な黒い毛並みに一目惚れした。満面の笑みを浮かべる私に、周囲の大人たちは蒼白になった。

そして、お母さまが今まで聞いたことがないくらいの声量で叫んだのだ。


「人間の男の子はペットに出来ません!!」


※ ※ ※


過去の過ちを久しぶりに夢で見た。

人間もペットに出来ると思っていた私は大人の言うことか理解出来なかったし、駄々を捏ねた。頭は悪いが魔力の才はあったので、癇癪で屋敷を半壊させたところで大人たちは白旗を上げてくれた。つまりだ、


「おはよう、フウリ」


私は拾った男の子の飼い主になってしまった。


「おはよう、コクト」


寝坊けた頭で返事をするが、やけに近くに顔がある。そのことに気付いてベッドから飛び起きる。


「あ、あなた! また人のベッドに潜り込んだわね!?」

「昔は一緒に寝てくれたじゃん」

「いつの話をしているの!」


コクトが可愛い男の子だった頃の話だ。いつの間にか身長を追い越され、体つきも女の子とは違ったものになってきた時に「一緒には寝ない!」と宣言した。

それなのにこうしてベッドに潜り込んでくることを止めない。


「ペットを可愛がってくれないなんて酷い飼い主ですね?」


酷いなんて言ってるけど、その顔は挑発的だ。


「人間はペットじゃありません!」

「えー、フウリさんは10歳くらいまで僕のことペット扱いしてたじゃん」

「……そ、それは……」


思い出されるあれやこれや。よく髪の毛も洗ってあげたっけ……。


「あっ、こんな話をしてる時間はないんでした。準備しないと入学式遅刻しますよ?」

「入学式!」


時計を見れば予定よりもだいぶ遅く起きてしまった。慌ててベルを鳴らして侍女達を呼ぶけれど、コクトはベッドの上から動かない。その顔はにやついている。


「ちょっと! 着替えるんだから出ていってよ!」


こうやって叫ぶのはいつものことで、私が可愛いと思った男の子は生意気に育ってしまった。


ーー音宮フウリは拾ったペットの扱いに手を焼いている。

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