君のために何処までも

銀河の旅人

世界を、変えようとする少年の物語

 僕は、君のために何度も何度も世界を駆け回りあと少しの所で君を見逃していた。そうどの世界でもそうだった。


 どの世界でも僕たちは変わらなかった。

 僕は、たった1人の勇者の家系の生き残り

 君は、たった1つの国の生き残りの姫。

 あとは数百万人の国民そして…。

 この世界で、たった1人の魔王。


 どの世界でも物語はこうだ。

 始まりは、僕達が産まれるところから。

 そして、十数年経つと必ず1人になる。

 どのような幸せな経験も一瞬で無に還る。

 そこで、同じく総てを失った君と出会うんだ。


 暫く話をしていると、魔王がやってきて自然と姫は攫われる。

 そして僕は勇者として、覚醒し魔王を討伐するために魔王城へ。

 魔王城で、魔王と対峙して…。世界は終わる。


 僕は記憶を保持したまま、だけど君は記憶が消える。


 僕は、君の事をどうしても救いたい…。そう思っているのに。

 常に思い続けているのに、救えない。あと少しで救えると思った瞬間目の前が真っ暗になって、起きたような感覚がすればに戻っている。


 それを、数百回、数千回、数万回繰り返してるんだ。諦めきれない。けど、諦めたくなる…。だって僕は君の事が大好きなんだから…。


 毎回毎回、世界の形が異なれど。僕と君は必ず出会う。

 しかもすべてを失って…。そして、そんな君は常に寂しそうに言うんだ。


「私達、全てんだね」


 と哀しそうな目をしている君を見ていると、どうしても愛してその寂しいものを取り除きたい…。想いは、回数を重ねるごとに強くそして強く。どんどん気持ちが強くなってくる。


 そして、数を数え忘れ…あれから幾らこなしたのだろう。

 僕は、君を救いたい、そう強く願い続けていた。

 その気持ちが誰かに届き始めたのか。ここ最近では、君と出会う時期も少しずつ早くなってきていた。


 ある世界での事…、僕と君は幼馴染として同じ村で生まれた。

 君はたった1つの国の姫ではなく、僕と共に仲良く遊ぶ幼馴染として。遂に始まりから一緒にいる事が出来たのだ。僕は幸せだった。君は記憶はないかもしれないけど僕にとってはかけがえのないものだった。そして十数年経ったある日の事であった。


 悲劇の時期が近付いているなと、警戒している僕と何も知らない君は、ずっと過ごしていた村を一望できる丘で座って話していると。ある少年がやってきた。その少年は、瘦せ細っていて。総てが待遇されている僕達とは反対の感覚だった。僕と君は彼に声をかけようとした。


 すると、彼は僕と君を睨みつける。威圧感を感じる…。

 僥倖と睨みつける彼の手から、禍々しいオーラのものがあった。

 それを君は見た瞬間、君は驚いた状態で固まり…そして、彼にとある名前を叫ぶ。


 とある名前を叫ばれた少年は、はっと目を見開き…。禍々しいオーラの球は消えていった…。君と彼は、とある世界で王様の下で仲良くしていた兄妹だった。兄は暴虐の限りを尽くす王様を倒そうと必死に行動し…王様にばれ王様によって魔王の烙印を押し付けられ魔族へと売り飛ばされた過去があったのだという。


 そういえば、僕もとある世界で王に魔王を討伐しろと言われ知らないといった時に国が亡ぶ過去があった…。どの世界でもというのはおかしいのかもしれない。僕が勇者というものを任命され魔王を討伐しようとし続けたのも…、もしかしたらと思っていると

 

「思い出した…。私達、以前から何百万回もあってるんだね」


 と…、記憶を思い出し僕の事を見つめると。


「僕…、本当に何度も救おうとしてくれてありがと」


 と、そういわれた後…僕達は3人で泣いた。そして痩せ細っていた彼と共に食事を共にし。夜な夜な色々語り合った。そこでわかったのは、悲劇を起こしているのは魔王ではないという衝撃の事実であった。魔王も実は家族がいたのだが、どの世界でも滅んでいたというのだ。彼もまた実は…すべてを失った1人だったのである。そのたびに君を攫い、色々話していたのだと…。


 じゃあ、いったい誰がやっていたのかと考えていると。

 人々の悲鳴が聞こえ僕たちは急いで家の外に出ると。

 そこには、見覚えがある王様であった。


 いや、正確には王様のような何かであった。

 王様の特徴である王冠は被っているがその色は朽ち果て。

 マントのようなものは、深淵より虚無に近い色になっている。


「世界を滅ぼし永遠に繰り返させるまで、わしの劇場は永遠に不滅である。故に…、お前らの出会いを無かったことにしてくれる。悲劇は、演出だ。貴様らを絶望させ魔王へ復讐をさせる。そして魔王と接敵し戦い始めた瞬間、世界を破壊し再創造する。いやはや、とても愉快だなあ」


 と、そこに王様の威厳はなかった。

 王様ではなく、完全な敵としての認識であった。

 王様は右手を上げると、数多のアンデッドを召喚し仕向けて攻撃を仕掛ける。僕達は、近くに落ちていた村の民達の武器をもって応戦した。しかし、攻撃はきかず、防戦一方だ。君は、何かわからないが詠唱を唱えていた。魔方陣の大きさは分からないが軽く村の範囲を超えていることは分かっている。そして君は、何かに語り掛けた。


「総て消えた世界の残滓よ。私のもとに集い、悪しきものを倒す力となってほしいよ…。も悔しいでしょ」


 と…、王様は爆笑し。


「そんな奇跡おこるはずがない。まあいい、君から逝こうか」


 というと王は飛び上がり君を殺そうと動く。君は目を見開き僕と、彼は共に王を止めるため剣で応戦しようとするが…、王の攻撃は剣をたやすく破壊し、俺達を砕いた…。


 砕いたって文字通り、地面にのめり込んだ。


 絶体絶命の大ピンチになったが、危険な感覚はしなかった。とても痛いけど、痛くない。不思議な感覚に陥っていると…、数多の場所から薄っすらと暉世界の残滓が、集まり始め僕と彼そして君をやさしく包み込む。光が大きくなっていき爆発した。その衝撃で王は遠くへ吹き飛ばされた。


 僕は勇者として聖剣を構え聖なる鎧をまとい、彼は魔王のようなマントと魔剣を携える。君は、姫のような服装となり杖は、光輝く杖であった。


「…………」


 王は、跡形もなくなった村のような場所で立ち上がり僕達を睨みつける。

 そして寄生を上げると、王の体は…巨大化し…雲は暗黒となり。

 雷鳴が轟く場所となった。決戦だ。


 長年戦い続け何百万か分からないが世界を股に掛けた僕と魔王として僕に立ちふさがった彼…そして、何百万と僕と彼と記憶を失ったけど付き合っていた君にとって…、ずっと劇を鑑賞していた王だったものに叶わないという状態になるはずもなく王は破れた。そして、奴は世界を道ずれにしようと動いたものの失敗しそれはかなうことはなかったのだという。


 最終的にだが、僕と君は両想いの事から結婚し彼とは同居という形で3人で仲睦まじい生活を送り続けていたのだという。ちなみにあの戦いで村人は全滅することなく何処かに避難しており、叫んだのは、村人のような見た目のアンデッドであったらしい。


 そして、僕と君と彼。勇者と姫と魔王の永遠の循環の物語は総ての元凶である者が消えたことにより、ようやく幕を閉じたのである。この物語は永遠に語り継がれ、いつか伝説にそして最終的に神話になっていくのであろう。

                                   END







 

 

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君のために何処までも 銀河の旅人 @utyuu01

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