ep4 厄呼びは再演を始める
「そーだ。安吾の兄ちゃんと久世ちゃんに注意しておかないとな」
真剣な表情な三之丞に、一凛は恐る恐る聞く。
「……あの、何かしてしまいましたか?」
「あー、違う違う。わりぃな、言い方悪かった。二人に対しての注意じゃない」
慌てて謝って訂正をして話す。
「不審者情報。妖怪側に出回ってるやつだけど俺も目撃した。……見てもかなりやばいやつだったから、一応な。遭遇したら気を受けろってこと」
話され、安吾は不思議そうに聞く。
「……それはどんな?」
「女だ」
「女?」
「ああ、狩衣を着た女が影から大きな手を生やして静岡市内を徘徊している」
不思議そうに聞く安吾に答え、三之丞は腕を組んであまりいい顔をせずに話した。
「なんでも、欲しいな欲しいなって人じゃない声で言ってたらしい。見た感じ呪いをまとってるようなもんだ。あまりいいと言えない情念のようなものを俺は感じたな」
欲しいな欲しいな。その話を聞いて一凛は虚を突かれて顔色を悪くし、安吾は険しい顔をした。
朝顔の少女は知っている。その欲しいなと言うものが何なのか。女が何を欲しがっているのか。一凛は背景を安吾から聞いて知り、少しでも昔の友人を助けられるために影から支援をしている。今対面して謝る機会ではなく、彼女自身が遠くから支援をすることが今は懸命。
昔の友人の笑顔。花火のような笑顔を思い出し、一凛は昔の友人の名を口にする。
「 ■ちゃん……」
心配そうに口にするも、その名前が音にならなかった。字にすると片方は何もなく、後者だけは塗りつぶされている状態であった。
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