🌅 1.5章

『悪戯猫霊の戯れ』

 猫って可愛いけど、ちゃんと世話を見ないと面倒なことになるよ。家をだめにする火事を起こしたり、部屋をだめにしたり、近所の人に迷惑をかけたり。部屋を駄目にするのは程度によるし飼い主の許容範囲によるけど、ちゃんとしつけや環境づくり。対策をしないと本当にだめ。猫って思うままにやっちゃうから、共存するためにちゃんと猫のことを知ってはしっかりしないと。


 虐待になるんじゃないかって? ううん、うちの猫には家をだめにすると良くないことが起きるって学習させてるし、悪戯させないようにしてる。猫のしつけは犬とちがって、根気がいるから猫可愛いと言う理由で安易に飼うのはおすすめできない。中には大人しい子もいるだろうけど、これは本当に各猫一匹一匹による性格だ。


 ここまで猫のしつけをちゃんとしろというのは、近所の人が飼ってた悪戯猫に由来しているんだ。


 その猫は昔家で飼ってたうちの猫にも悪戯しててね。昔飼ってたうちの猫はとても大人しい子だった。家から出ると大変だから外から出すことはしてなかったんだけど……その猫はいつも窓越しからうちの子にちょっかいを出してた。悪戯猫はようは外猫なんだよね。大人しい野良猫や外猫にも迷惑をかけたり傷つけたり攻撃したり、飼い犬にも怪我をさせたりした。近所にもかなり迷惑をかけてるんだもの、大層な悪猫だったよ。近所の人もあまりしつけしてないらしくて、みんなあまりいい顔をしてなかった。


 お猫様なんだから仕方ないって? 違うよ、猫と人間は対等で一匹の家族だ。


 お猫様なんて言っていいのは一部の人間か猫だけだと思う。私個人の意見かもしれないけど、この意見にいったのはあることを体験したからだ。


 ある日。悪戯猫は道路で車に敷かれた。かわいそうと言うかもしれない。でも、ある種の因果応報でもあった。

 その悪戯猫が死んでから、うちの猫が外から出ていた。まだ私が家にいるときに、窓の施錠をしたはずなのに、猫が勝手にやったわけじゃない。猫が簡単に開けられない鍵じゃない。

 慌てて猫を探しているとうちの猫が道路に飛び出そうとして……その猫の背後に悪戯猫の姿が重なったように見えた。助けようにも間に合わず、うちの猫は跳ねられて死んだ。……最初はあの悪戯猫が見えたのは気の所為もしくは見間違いかと思った。

 けど、気の所為ではなくなったのは、うちの猫を火葬して庭で墓を作った日から数日経ったときの事。

 

 出勤中に私が道路の歩道を通っていたときのこと。ウゥーと猫の威嚇の声が聞こえ、近くから聞こえて驚いて足を止めた。


 一瞬気のせいかと思った。でも、近所の子供が登校中に横を通り過ぎた時、十歩ぐらい歩いて、足を止めた。そのときに一瞬あのときに見た悪戯猫がその子供の隣に沿って、子供と一緒に道路に突っ込んだ。

 子供は車に跳ね飛ばされたけど、死ぬに至らなかったのが幸いだった。あの時は無事でよかったけど、その日から地元の道路で飛び出し事故が多発していく。死人もそれなりに出た。中には猫と一緒になって飛び出したのを見たという話がある。飛び出しは人だけではなく、犬や野良猫なども対象。……親も飛び出しかけて、あの悪戯猫の姿が見えたと聞いた。でも、近くから聞こえたウゥーと猫の攻撃的な威嚇の声で気付いて飛び出すことはなかったと話してた。その猫の声は恐らくうちの猫だ。私達の親類はうちの猫をかわいがっていたので、家族を守ろうとしてくれたのかも。そして、うちの猫を殺したのは悪戯猫だと私は確信した。

 多少のいたずらならいいけど、流石に死人を出して猫や犬を飛び出して殺すのはやりすぎだ。

 それでやめないのは猫だ言う理由だとしても悪意がある。ついには、あの悪戯猫は自分の世話してくれた飼い主も車の前に飛び出させて殺したんだ。対処しないとまずい、そう考えていると猫の嫌いなものを思い出したんだ。

 ハーブ系のアロマのスプレーをかけて、地元の道路を移動する。うちの猫も嫌いだろうからごめんねと声をかけてから出勤した。

 すると、あの悪戯猫の姿が見えなくなり、うちの猫の攻撃的な威嚇の声も聞こえなくなった。幽霊になっても嫌いなものは嫌いなのかもしれないと思った。近所の人に猫の嫌いなもので対処すればいいと教えて以降、事故は起きてない。

 ……けど、それは一時だったらしく、私が出勤していた時にうちの猫がウゥーと攻撃的な威嚇を上げた。気付いたときにはあの悪戯猫が自分の前にいて、自分を狙おうとした。

 うちの猫がどこからか飛び出して、悪戯猫に襲いかかって反撃。悪戯猫はうちの猫に追いかけられて逃げていった。


 ……あれ以来、悪戯猫を見ることはなくなった。うちの猫も見ることはなく、家にうちの猫がいたような気配もなくなった。けど、寝ていたときに聞いた数回の甘えた声した。アレは別れの声だったのかもしれない。それ以来、うちの猫の声は聞いてないから虹の橋わたったのかも。

 

 私はこんな体験をして、猫は飼ってもちゃんと互いに暮らせるようにしてる。今でも、新しい猫さんを迎える時は良くないことは良くないよう学習させて、ストレスを溜めないように遊ばせていたり、家族で遊んでいたりね。

 この猫の性格が悪いだけかもしれないけれど、猫のしつけとか環境は整えておいたほうがいいっていう話。でも、猫を飼うならちゃんと調べてから責任持って飼うこと。猫も一つの命なのだから、天寿を見届けて上げてほしいな。


 ちなみにその悪戯猫がどうなったかはわからない。どこかで猫を見て事故が起きたような話とかはないし……。やらかした経歴こと虹の橋をわたってないかも。

 その悪戯猫が悪いと一概に言えないけど、飼い主の飼う環境や飼い方、あと猫の性格とかもあってああなったのかもしれない。

 飼い主が違ってたら、少しはあの悪戯猫は悪さをしなかったのかな。

 


『悪戯猫霊の戯れ』

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