🎇2-1章 再演もしくは誰ヵ之続編

『ほしがりさん』

 『ほしがりさん』っていう話を知ってる?

 なんでもその『ほしがりさん』っていうのは、欲深な人が死んだあとになった幽霊とか、欲が多く集まってできた集合体とも言われててね。その『ほしがりさん』を呼べば何でも、一つ欲しいものが手に入る。

 でも、『ほしがりさん』を呼ぶ代償として、その『ほしがりさん』にとり憑かれてしまうの。なんでもほしい、なんでも食べたい。どこでも寝たい。何でも殺したい。わたしたちの持つ欲を強くしてしまうの。

 らしいととか、ようなとか断定しないのは、私がその『ほしがりさん』にとり憑かれた元友人を知っているから。


 学生の頃の話になるかな。


 その元友人は、最初は彼女の好きな人が欲しかった。私でもいいなと思うぐらいにいい人だった。友人は最初は諦めようと思っていた。でも、クラスの中で性格が最悪な女子生徒が告白して恋人になった。その女子生徒は私達にも嫌味をぶつけるし、マウントしてくるから嫌われものだ。その元友人が好きな人も嫌っていたのに、恋人になったのはおそらく弱みを握られていたからだと思う。

 そんなとき、恋人なったことを許せなかった元友人は『ほしがりさん』を呼ぼうとした。『ほしがりさん』は当時かなり話題になったていたおまじないだけど、危ないっていう話もあってその危険性は噂程度でしかなかった。

 そしてその『ほしがりさん』の呼び方は憶えている限りでは、『鏡を二つ用意して自分が映るように合せ鏡をする。そこに願いを象徴するものをおいて、欲しいものを三回連呼する』だったはず。

 私は関わりたくなくてやらなかったたけど、『ほしがりさん』のおまじないをした翌日に元友人はその好きな人を手に入れた。けど、嫌味な女子生徒はその翌日から不登校となった。当然何があると疑うし、元友人は好きな人を手に入れて有頂天。しばらく私との交流は減った。寂しかったし、幸せそうな雰囲気に妬みはあったけど、底しれない怖いなにかがあって、私は元友人の関係性は自然消滅してしまっていた。

 別の友人を作って別の大学に行ったころ、元友人の格好は派手になっていた。職場で働いたころにはなんかいい車を持っていた。でも、元友人の恋人はいなかった。

 職場先でいい人を見つけて、結婚して子供が出来た頃だ。

 私の電話に元友人の電話がかかってきていた。電話に出ないようにしたけど、留守電が残っていた。

 なんか嫌だけど、聞いてみたら。


《──ㇹㇱぃな》


 人じゃないような声でびっくりした。


《ㇹㇱぃな。✕✕ちゃんのこどもㇹㇱぃな、✕✕ちゃんの旦那さんㇹㇱぃな。✕✕ちゃんの家ㇹㇱぃな。✕✕ちゃんのお金ㇹㇱぃな。✕✕ちゃんの家族ㇹㇱぃな。✕✕ちゃんのすべてがㇹㇱぃな。わたしほしいものたべちゃったのだから✕✕ちゃんがㇹㇱィなァァァ──》


 私はすぐに留守電を消した。✕✕ちゃんとは私のことだけど……こんな留守電が来るとは思わなかった。

 その後、『ほしがりさん』について思い出して調べて、最初に説明した『ほしがりさん』について載っているサイトを見つけた。その後の末路や『ほしがりさん』をした人の犯罪行為までもが噂として上がっていた……。

 ……だから、『ほしがりさん』をした元友人は欲しいものを全部食べたといった。だから、彼女の恋人は…………此処から先は末路がわかるだろうからやめときます。

 電話がかかってきたあと旦那と相談し、対策をしつつ元友人がやってくるだろうと怯える日々を過ごしていた。──が、その数日後に元友人は警察に捕まった。そして、今まで行ってきた酷さに死刑判決が出された。精神鑑定に異常はないと判断されたのかもしれない。死刑が出されたあとでも「ㇹㇱぃな」と言っていたそうな……。


 これが私が『ほしがりさん』にとり憑かれた元友人の末路。そして、今日。その友人の死刑が執行されたのです──



『ほしがりさん』

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