第5話 魔法少女って二十歳過ぎた人に言ったらだいたい殴られる


 と言うことでお勉強です。

 私が20歳になった時に得られる職業は何なのか。

 友紀兄さんに聞いたら首をかしげられ[佑那は戦闘職のみじゃないの?]と失礼なことを言われた。

 失礼な兄だ。まったく!

 ……ちょっと女性らしい事とか、知識人っぽいことやっておこう。

 友紀兄さんがド直球にそんな事言うなら周りのほぼ全員が脳筋だと思っているレベルなんだろう。

「と言うわけで職業について教えてください!」

 結羽人兄さんに頼み込む!

「まあ、構わんが…お前このままだと友紀の言うようにマジで脳筋職一直線だぞ」

「事務職すらない…と?」

「無いだろうな」

 ヤヴァイ。

 ちょっと血の気が引いた。

「職業についてざっくり説明するぞ」

「あいっ!」

 結羽人兄さんが壁掛け式のホワイトボードを用意して説明を始める。

「まずは職業の分類だが、世界共通の大分類法と日本固有の日本職業分類法がある」

 はい。この時点で馬鹿じゃないのと思いたくなってきた!

「…言いたいことは分かる。日本馬鹿だろと思っているんだろ?」

「うん」

「まあ、そう言いたくもなるだろうな…とりあえず続ける」

 そう言って結羽人兄さんはホワイトボードに『大分類法』と書いた。


「1類、総合職。これは2から4の職業分類範囲に該当せず、かつ汎用的な職業を指す。商人や事務員、警察官、運搬人、農家…様々でこれが全体の60パーセントを占めるらしい」


「おー…6割」

「ただ、今挙げたものの中でも戦闘職はあるが、特化ではないので総合とされる」

 ふむ。戦闘する農家とか良いんじゃない?


「2類、戦闘職。これは軍人や戦士、剣士、武闘家など基本物理戦闘職を指す。佑那の資質と普段の行動から…こちらか5類となる可能性が高い。ここに当てはまる確率は20パーセントだ」


 そう言われるとこれは避けたい!

 でも武闘家とかちょっと憧れる!


「3類、魔法職。これは魔術師、法術師、道士、修験者などの特殊能力職…ファンタジー職を指す。ただし、一部例外がある。ここに当てはまる確率は10パーセントだ」


 兄さんの口からファンタジー職って…

 でも魔法剣士とかもここなのかな?

「兄さん、魔法剣士はここ?」

「ここではないな。次行くぞ」

 そう言って兄さんはホワイトボードに続きを書いた。


「4類、回復職。これは看護師、医者、薬剤師、整体師、調香師などの回復職だ。ここに関してはかなり範囲は狭い。ゲームで言うバフ職等はほぼ含まれず、回復のみもしくはほぼ回復メイン職と考えて欲しい。ここに当てはまる確率は8パーセントだ」


 おかしい。重要なものが入っていないぞ?

「兄さん。聖者職関連は?」

 私の問いに兄さんはニヤリと笑う。

「それは次に入っている。と言うよりも2~4に属さない物全てというレベルだな」

「えええっ?」

 何それ面倒くさい。


「5類、特殊職。これは聖者系、神職系等のエクストラ職と2~4類それぞれの特性を併せ持つ職と中分類まで成されている。佑那の聞いた魔法剣士はここに該当する。そしてここに当てはまる確率は脅威の2%だ」


「聖者職や神職系が優遇されている?」

「ああ。諸外国では破邪、解呪関連ができる聖者職や神職系は有り難がられる。他にもシャーマン系はバッファーとして優秀だったりとかなり扱いは良いし、回復関係職は各国優遇措置として外国語アドバイザーや税制優遇もあったりする」


 日本の神職系や聖者職は全員外国に行けば良いのに…

「因みに、エクストラ職もそうだが、回復職は緊急時であれば何処でも回復スキルを使って良い事になっている。通常時はダンジョン及び各ダンジョン監督敷地内というのは一緒だが、この緊急時の扱いがだいぶ緩い」

「えっ?でも緊急時って」

「中程度の怪我人がいたら緊急だ」

 マジか…

「ただしそれはボランティアだ。そして有事の際は強制的に無償奉仕をさせられることもある。まあ、多少の優遇措置がある分働けってことだな」

「各国政府の医療費支出削減を狙っている感が凄い!」

 でもこれで良く分かった。

 日本のそういった職の人が外国行ったらカモられてタダ働きさせられるんだ…


「さて、ここまでは世界共通の大分類法だ。勿論中分類小分類と続くが専門でも何でもないのでスルーでいいだろう。問題はここからだ」

 兄さんの表情が険しくなる。

「世界の分類法を改悪しオリジナリティを出したのが日本職業分類法だ。ほぼ同じだが、並びとカテゴリーが一部違う。それは…こうだ」

 兄さんが一気に書き込んでいく。


 1.戦闘職

 2.回復職

 3.魔法職

 4.聖者職(神聖職)

 5.その他


「………えっと、これ、日本が先に分類して、世界が後からとかじゃないの?」

「残念ながら日本が後だ。1年くらい後だ」

 明らかに劣化版じゃないの…

「駄目じゃん!」

「駄目なんだよ」

 いや、何がダメって…配慮の欠片もないじゃん!多分総合職が5のその他だと思うんだけどあなた方は外れですよって暗に言っているようなものじゃん!

 しかも十中八九「今欲しい職業リスト」だよね?これ。

 即戦力の戦闘職が欲しいです!それに対して回復職も欲しいです!って。

「まあ、一応説明していくが…流石この国独自と悪い意味で褒めたくなるレベルの改悪を挙げていく。ズバリ違う点からだが、総合職に入っている警察官は戦闘職に入る。理由は法律上の問題だ」

「法律上の問題?」

「ダンジョン侵攻が起きた際の民間人避難誘導に関するものがあるんだが、その際には警察官が戦闘職でなければ都合が悪いという事だ。

 余談だが、職業警察官が持つ基礎スキルは戦闘というよりも防衛型スキルなんだが、どうもこれは日本の警察官と海外の警察官でスキル構成に差異があるらしい」

 は?

 ズルくない?

 外国の警察官職は攻撃スキルあるって事だよね!?

 でも総合職って…

「そして回復職と聖者職が分かれている理由だが…策定した際の学者らは4以下をハズレ職扱いし、差b…区別するためだったらしい」

「今差別って言った!今差別って言った!!」

「どうせ俺も聖者だったんだ。どう言っても変わらん」

 うわぁ…

「説明を続けるぞ。外国だと回復職は現職で6割だったが、日本だと当時の現職で差異はあれ8割発現したらしい。医者、名医、医療関係者等々…かなり幅はあったらしいが。そしてスキルにも色々な影響が出た。

 そして同じように回復や解呪、破魔のできる聖者や神職者だが…当初期待していたほどの力が無いと断定され、ハズレ職扱いに至った」

 あー…

「要は期待していた分、裏切られた気分になって悪様な扱いをしたと」

「簡単に言うとそうなる」

 最悪じゃん。

「俺が調査した結果だが、聖者職は鍛えれば回復職に近いレベルの力を発揮し、破邪で妖魔を倒す事ができるなどかなり重要な職だ」

 まあ、それは兄さんを見れば分かるけど…

「じゃあ何でそんなに悪く扱われたの?」

 あ、兄さんがすごい嫌な顔をした。

「…日本の神職者の大半が腐っていたんだよ」

 あー…

「神官や聖職者、巫女、禰宜等色々あるのは確認されたんだが…それ以上に自称神官、実際似非神主とか、生臭坊主とかそれはもう…」

「外来宗教系は?」

「多少腐っていたり、独自解釈教になっていたせいでスキルが何もない俺様教とか似非神官がいたらしいが、神道、仏教よりは少なかったらしい」

 既得権益があれば人は腐る。

 悲しいけどこれ現実なのよね…

「この一斉調査は10〜11年前の内閣が公約の一つとして行なった結果わかったんだがな…その総理は数ヶ月後に亡くなった」

「絶対呪詛じゃん!」

「だろうな。国民からは支持されたものの最後は悲惨なものだった…恐らくは現在も怪しげな宗教がどんどん出てくるだろうな…」

「似非とかついた人はどうなったの?」

「3ヶ月間の猶予期間内に改善されなかった場合はそれぞれの宗教法人の責任で対処だ。もし対処されなかった場合は公表された」

 ずいぶん思い切ったことをしたんだ…そりゃあ殺されるよね。

「それもあって聖者職は扱いが酷いと」

「日本は特にな?」

 でもなぁ…

「ファンタジーとかだと教会権力がーとかだけど、日本だけに寺社関連だったと」

「…しかしどうもこれはおかしいとは思っている」

「どう言うこと?」

「時間をかけれ腐らせたのでは無いかと思っている。と言うのは代々ひたすら信仰しているような所はまともな神職を輩出している確率が極めて高い」

 ああ、そういう事か…

 腐らせたい勢力があると兄さんは言いたいのか。

「まあトンデモ説と言われればそれまでだが、集めた情報を繋げるとどうしてもそういった結論に辿り着く」

「情報の出所を言えないから信憑性が無いと言われちゃうわけかぁ」

 でもどこ情報なんだろう。

「私は聖者系ってのは無いだろうから総合職で!」

「俺ら兄妹は全員特殊職という可能性もあるぞ」

「友紀兄さんは聖女だね!」

「せめて性別を考慮してやれ…ただ、あり得るどころか何かの意思で強制的にそうなりそうで怖いな」

「兄さんを聖女にして女性化!そして私は姉を得る!」

 なんて素晴らしい未来予想図!

「それを友紀に言ったらガチで嫌われるぞ」

 ───前に姉さん呼びを何度もしたら私だけご飯はレトルト三昧だったなぁ…謝っても「僕は佑那さんのお兄さんじゃ無いから、ごめんなさいね?」と一週間言われ続けたなぁ…

 あの時のテストは散々だった…マジでメンタル大事。

 ギリ平均以上だったけど、先生方から心配されたなぁ…結羽人兄さんは「自業自得だ」って助けてくれないし。

「他に職業関連で知りたいことは?」

「あ、魔法使いと魔法少女って何が違うの?」

「何故そっちを…魔法使いは想像通りの火・水・風系の属性魔法というものを使う程度だ。魔法少女は大まかに2パターンある。雷や光魔法を使い飛行できる魔法少女と、変身し超物理もしくは魔力付与をした上での物理攻撃をするタイプがいる」

「え゛っ!?」

 幾つか聞きたかったけど、超物理と言うパワーワードに持っていかれた!

「40代男性が世界初の後者の魔法少女を獲得した。変身と言うと10代前半の女児姿になったが戻れなくなったらしい。更に拳で戦うステゴロタイプの魔法少女になってしまったらしくてな…現在は普通に商社勤務をしているらしい。女児姿で」

 うわぁ…、うわぁぁぁ…

 これ、もしかすると私、最悪そういった男性系特殊職になる可能性も?

 素行には気をつけよう。めっちゃ気をつけよう!


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佑那好奇録〜チートな長兄と無自覚チートな次兄を持った私の記録 御片深奨 @misyou_O

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