貴族の娘として、生まれたアリアには前世の記憶がある。
芸能人の娘として、苦労した記憶だ。
今世は平凡に暮らしたい。そう願っていたのが、突如として市民革命が起きる。
革命の混乱の最中、彼女が出会ったのは革命派の男 クリスであった。
革命。それは様々な国で、幾度も起こり、時代を変えてきた大きな事件である。
私達も歴史の授業や様々な作品で、フランス革命等耳馴染みあるだろう。
この作品では、まさにその激動の始まりを肌で感じられる作品だ。
特に革命の暗黒面、それがありありと書かれている。
革命は時代の始まり、ゴールではない。革命が成功してからが問題なのだ。
平凡なんて程遠い、まさに混沌。
様々な人々のうねりの中、アリアが出会ったクリスという男は、革命のために奔走していた。
アリアがクリスと出会い、どう変わっていくのか。
彼女が選び取る未来を是非、見届けたい作品です。
前世で芸能人の娘として過ごした子爵令嬢アリアの望みは、ただ平凡に暮らすこと。煌びやかな芸能界の裏で巻き起こるスキャンダラスな側面に嫌気がさしていた彼女は、とにかくモブに徹したかった。ファイエール子爵家は田舎貴族で質素な暮らしをしているが、それもまた気に入っている。欲に溺れるほど裕福なわけでもなく、突出して貧しいわけでもない。ようは「ちょうど良い」のだ。
このまま貴族特権で平穏に暮らそうとしていたアリアだったが、成人の儀を受けるため王都へ足を運んだ先で、市民革命に巻き込まれしまう。そこで出会った革命勢力のクリスと心を通わすうちに、平穏を求めていたはずのアリアの気持ちは徐々に変化していく――。
市民革命。教科書などでは見たことがあるが、流行している西洋風異世界の作品だとあまり馴染みがない。貴族たちが煌びやかな生活を送れるのは労働力たる市民がいてこそ。そして市民は貴族と比べて圧倒的に数が多い。降り積もった不平等への不満は、王侯貴族への反乱という名の革命に託された。
第一章では市民革命までの道のり、そして第二章では革命後の混乱が描かれている。貴族特権は失われ、当たり前にあったものがたった一夜で手に入らなくなる苦悩や驚きの連続。そして、数の暴力。階級制度が意味を成さなくなった革命後の王都で、生活苦への不満を暴力で解決しようとする市民を止められるのは権力や武力ではない。革命の混乱の中で平穏を求めていたアリアが何を選ぶのか、どうか見届けて頂きたい。