第6話

電子情報網“アミガサタケ”内部は、内乱と共に夥しい数のヴィールス、不要なコマンドで満たされていた。彼等はアンチ・ヴィールス・シールドを展開しながら、“アミガサタケ”内部を偵察していた。

「思うところより、ヴィールスばかりだ」

「見ろ」

そこには無数のヴィールスとコマンド蒐集家“コレクターズ”を食らう電子幻獣が暴れていた。

「思考の渦へ集中しろ」

「かつてのエレクトロを懐かしく思う」

「今は昔、だ。しかし、そこに素晴らしいものが存在していたのは事実である」

彼等の脳内から放たれた思考の渦は光となって収束し、電子幻獣を捉えた。程なく、旧式のダイヤルアップ音と共に電子幻獣は霧散した。

「回収せよ」

“コレクターズ”の亡骸に電子的アクセスを施し、彼等は“コレクターズ”の遺志を脳裏に映した。

「ここはかつて、可視化装置によって管理の行き届いた地域であったようだな」

スペクトログラムによる統治は、旧式だが大掛かりなシステムで地域全体が把握できる能力があるようだった。よりリアルでグラフィカルなインターフェイスが登場したのは現地時間で約四世代も後のことになる。

「感謝して、次なる道へ」

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仮初の雁 MutagenicityReactor @MuRe22

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