第5話

純粋無垢であるということは野蛮であること。また、反乱分子であること。国家の構築した電子情報網、“アミガサタケ”を介して無数の遺伝子組換コマンドが生物の脳内に侵入していた。転覆を目論む者を排除する為、秘密裏に行われた国家からのコマンド送信であった。このコマンドは生物の脳内であらゆる場所に作用し、記憶、能力、思考その他に影響を及ぼした。最早、思考や記憶を所持することすら、国家の重鎮レベルでしか許されざる事象になってしまった。

「どれ程の年月がかかるか」

「計算するだけ無駄だ」

「致し方ない。闇雲ではあるが乗り込もう」

実体化された書物を持ち、彼等は自らの身体を電子化し、“アミガサタケ”の内部へ侵入した。膨大なまでの時間と時間に狂わされた感覚とが、彼等を蝕むのを始めた瞬間だった。

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